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4歳で素質が開花、得意のカテゴリーでビッグタイトル奪取
文/吉田竜作(大阪スポーツ)、写真/川井博


古馬牝馬の重賞路線が整備されて久しい。秋はエリザベス女王杯、春はこのヴィクトリアマイルとそれぞれ距離に変化をつけることで、様々な適性の馬にビッグタイトルのチャンスが与えられることになった。ただ、これが馬券や予想をする上では盲点となりがち。「牝馬同士なら」という曖昧なオブラートに包むことでそれぞれの適性に「目をつぶる」こともしばしば。今年のヴィクトリアマイルはその最たるものとなったのではないか。

圧倒的な1番人気に推されたのは前哨戦の阪神牝馬Sを勝ったミッキークイーン。昨年の阪神牝馬Sヴィクトリアマイルといずれも②着と敗れたが、1年ごしのチャレンジが実り、「克服した」と誰もが思ったことだろう。しかし、これまでのG1タイトルが示すとり、本来の適性は中距離という可能性が高い。それでいて当日のオッズは単勝1.9倍という一本かぶり。鞍上の浜中にもプレッシャーがかかったことだろう。

ミッキークイーンにとってやや距離が短いとなれば、本来ならもう少し積極的に動いていってもよかったような前半35秒6というペース。しかし、馬群の中団で落ち着いてしまうと、そのまま直線までポジションを上げられないまま。この日のペースで、直線に入ってのヨーイドンという展開はこの馬にとって不向きな流れにというしかない。上がり3ハロン33秒8という、この馬にとってはいつもの末脚を使っての⑦着。マイルというカテゴリーで、上がりの速い決着となってしまうと対応できない…そうした適性の差を感じさせる敗戦となった。

対して大波乱の立役者となったのは②着デンコウアンジュ。こちらは2歳時のアルテミスSで東京のマイル戦を勝った“隠れマイル巧者”。「夏になれば1000万下まで降級するので。それしか考えていなかった」佐藤助手は言うが、馬もかつての成功体験を覚えていたのだろう。馬場の真ん中を通ってあわやというシーンを演出。牝馬のマイル戦線では今後も注目の1頭となりそうだ。

そして、勝ったのは小兵アドマイヤリード「すごい根性をしているし、前走で(道悪の)馬場を苦にしていなかったので。きょうの馬場状態になった時点で自信があった」ルメールが振り返ったように、小柄な馬体のわりに道悪を上手にこなすのがこの馬の特徴。これは偉大な父ステイゴールドの長所をそのまま受け継いだと言っていいだろう。

やや力の要る馬場状態となった中で、どの馬も早めにスピードに乗せようと早くに仕掛けたが、アドマイヤリードルメールは直線半ばまで持ったまま。これこそ馬場への適性があるからこその余裕だったに違いない。

「少ししかいい脚を使わないので。ラスト100mにかけた」という言葉どおり、ソルヴェイグスマートレイアーの間の隙間をスルリと抜けてスパートすると、1馬身1/4差をつけて悲願のG1制覇を果たした。

この馬もマイルは[2.1.0.3](着外のうちひとつは桜花賞⑤着)という高いマイル適性を示していた1頭。「餅は餅屋」という言葉ではないが、やはりカテゴリーの壁を破ってビッグタイトルを勝ち切るというのは難しい…そうしたことを改めて証明したのが今年のヴィクトリアマイルというレースだったに違いない。

最後に「元担当」として思い出話を。アドマイヤリードという馬はご存知のとおり400キロに満たない馬体重でデビューをし、その新馬戦では素質馬シルバーステートを破って勝ったほど。「小柄だが体幹がしっかりしているし、走りがいい」と素質の高さは元の管理者・松田博資元調教師も認めていたのだ。

しかし、「気性が悪かった」と振り返ったように、テンションが高く、馬体を増やすどころか維持するのが精一杯…それが3歳の時期だった。しかし、それでも「マツパク流」というWコース2周の調教メニューにへこたれずについてきていた。鍛えてきた基礎体力は「時期がくれば勝手に走るさ」という言葉どおり、4歳となって花開く。

馬体が完成すると、調教を積んでも馬体減りすることがなくなり、今回のような長距離輸送さえもクリアしてしまった。電話口できく「よかったなあ」という元の名伯楽の声に万感の思いが感じられた。須貝調教師とて、プレッシャーの大きい中で、こうした難しいタイプの馬を仕上げて結果を残したのは大きな自信につながるはず。今後の須貝厩舎アドマイヤリードの飛躍に注目したい。