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ダート路線にも最新の才能が現る!
文/出川塁、写真/稲葉訓也


ニュースターの誕生を目の当たりにすれば、いつだって晴れやかな気持ちになる。

と、いきなりで恐縮ながら、の趣味のひとつである将棋では今、新しい天才の出現に沸き返っている。昨年、史上最年少でプロ棋士となった藤井聡太四段が、今月18日の対局でデビュー以来の連勝を18にまで伸ばしたことはご存知の通りだ。たまたま結果が出ているだけではなく、あの羽生善治三冠も絶賛するほど将棋の内容も素晴らしい。

将棋という世界では、若い頃の才能が将来へと直結する。それはもう残酷なほどで、藤井四段以前に中学生プロになった4人の棋士は、その全員が名人もしくは竜王となっている。5人目の藤井四段も遠からずビッグタイトルを獲得し、第一人者として長く棋界に君臨することになるだろう。寝て起きるたびに強くなるこの14歳がどこまで強くなるのか、それを現在進行系で見届けられるのは将棋ファンにとっての幸福といえる。

血統が根幹をなす競馬もまた、天与の資質がその将来をかなりの部分まで規定する点で似ているところがある。そして、このたびダート路線に現れた最新の才能グレイトパールだ。父は名種牡馬のキングカメハメハ。それ以上に血統表で目がいくのは、「幻の三冠牝馬」といわれたビクトリアクラウンを3代母に持ち、明治期に輸入されて100年以上も伝わる在来の名門ビューチフルドリーマーの子孫という牝系である。

昨年1月の新馬戦は芝で勝ち上がり。しかし、その後の2戦をいずれも大敗すると、すかさずダートに切り替えた。この采配が見事に的中して転向初戦を0秒6差で圧勝すると、続く1000万下は0秒8差とさらにタイム差を広げた。今年に入ってからも準OPの初夢S、OP特別の仁川Sを連勝し、重賞初挑戦となった平安Sで才気をほとばしらせた。

今回もスタートダッシュはひと息。条件戦では二の脚を使って先行することも可能だったが、重賞になるとさすがに他馬も速い。無理はせずに中団の9番手を追走し、向こう正面の半ばを過ぎてからは馬群の外を通って気分よくポジションを押し上げていく。3コーナーでは気がつけば3番手につけ、4コーナーを2番手で回って最後の直線へ。

早め先頭策から逃げ込みを狙うケイティブレイブが抵抗する素振りを見せたのも一瞬のことだった。残り300mを切ったあたりで競り落としてからは独走態勢に入り、ゴール前では手綱を抑える余裕を見せながらも後続を4馬身、タイムにして0秒7もちぎっていた。

鞍上の川田将雅騎手にいわせれば「トップスピードは高くない」そうだが、その代わりに「スピードが出てからは止まらずに走れる」のが長所だという。道中は追っつけながらの追走でも最後まで脚色が衰えなかったレースぶりを見れば、その言葉には素直に頷ける。

今後の課題を挙げるとすれば、内枠に入った場合だろう。ダート転向初戦で1枠1番から圧勝してはいるが、500万下では力が違いすぎて参考外。スタートダッシュがつかないところを見ても、馬群をササッと捌くような機動力には恵まれてはいない。どこまでもワンペースで走れることが長所となっているだけに、平安Sのようにスムーズに走れば持ち味を最大限に発揮できる。反面、一旦リズムを崩すと立ち直れないままにレースが終わってしまいそうだ。

その意味では、中央に比べてフルゲートの頭数が少なく、馬群もバラけやすい地方交流重賞のほうが競馬をしやすいのかもしれない。そこで懸念されるのが収得賞金。これまでにたっぷりと稼いできたダートの古豪たちに比べて、賞金面ではどうしても劣勢になる。競走馬として大成するためには「持っている」ことも大事なこと。次走に予定する帝王賞の出走枠にすんなり入ることができるようなら、グレイトパールはその資格を持つ馬といえるのではないか。

だとすれば、東海Sを勝って出走できたはずのフェブラリーSを回避したことが、グレンツェントの流れを悪くする契機になってしまったのだろうか。もちろん、回避するだけの事情はあったのだろう。しかし、関西への輸送が続き、斤量58キロを背負う厳しい条件だったとはいえ、アンタレスS着、平安S着というここ2戦の結果は不本意としかいいようがない。能力に疑いはないだけに、どうにか立て直して本来の走りを見せてほしいところだ。