カンパニーやタップダンスシチーに並ぶ末脚だった
文/編集部(M)、写真/稲葉訓也
1番人気に推された
ヴォルシェーブにとっては、今回は
与しやすしという印象を受けていた。
ヴォルシェーブはこれまでに
東京芝では5戦して[3.1.1.0]という成績を残していて、昨秋の
アルゼンチン共和国杯は0秒1差③着だった。その時は休み明けだったし、勝った
シュヴァルグランは次走の
ジャパンCで③着に入り、②着は
アルバートだった。実力馬が揃った一戦だった。
その時に比べれば今回の方が戦いやすかったはずで、ハンデが56.5kgだったとはいえ、
休み明け2戦目(中2週)という臨戦過程も申し分なかったように思う。馬番も、馬主の
佐々木主浩氏のラッキーナンバーである
「2」になったので、初タイトル獲得かと思っていたが……最後に交わされて②着に敗れてしまった。
ヴォルシェーブは
ネオユニヴァース産駒で、同産駒は東京芝の重賞で3頭が勝ち鞍を挙げていたが、それはいずれも
道悪馬場だった。良馬場だと多少の不安は感じていたけれど、
東京芝2500mはスタミナを問われやすく、上がりがかかるケースがよくある。
決め手よりも
持続力を求められれば問題ないと思っていたのだが、実際には
驚きの末脚を使う馬が現れた。しかも、
ヴォルシェーブよりも年上で、重い斤量を背負っている馬に
33秒台の上がりを使われた!
馬場の中央から差し切った
フェイムゲームは今回が3ヵ月の休み明けで、トップハンデの
58kgを背負っていた。前走の
ダイヤモンドSでは、流れが向かず、直線でのスムーズさも欠きながら上がり34秒1を計時していたので、
7歳でも大きな衰えは感じていなかったが、この距離でも同じような末脚を披露するとは驚いた。
東京芝2500mの重賞は4歳秋に
アルゼンチン共和国杯で優勝しているが、その時はハンデ57kgで、
上がり34秒0(メンバー中最速)を計時して
2分30秒5というタイムだった。今回は7歳でのハンデ58kgで、
上がり33秒9(メンバー中最速)を計時して
2分30秒9。自己ベスト(33秒7)に迫るほどの末脚を見せたのだから恐れ入った。
フェイムゲームがセン馬となったのは昨秋で、それからは4戦連続で馬体重が
454kgとなっている。所属するクラブ(サンデーレーシング)によると、調教や競馬にいって騎乗者に反抗する面を見せていて、その軽減を期待しての去勢だったようだが、体質強化や体調の安定にもつながっているのかもしれない。
7歳=高齢馬と短絡的に判断するのではなく、
フェイムゲームはセン馬であることと、兄の
バランスオブゲームが7歳でも重賞2勝(
中山記念、
オールカマー)を挙げたことを思い出すべきだった。
調べてみると、芝2000m以上の重賞を
上がり32~33秒台で勝った
7歳以上の馬は6頭いた。せっかくなので列記すると、次の通り。
【芝2000m以上の重賞を上がり32~33秒台で制した7歳以上の馬】
レース |
馬名 |
年齢 |
斤量 |
上がり3F |
2015年新潟大賞典 |
ダコール |
牡7 |
57 |
32秒9 |
2012年新潟記念 |
トランスワープ |
セン7 |
56 |
32秒3 |
2009年天皇賞・秋 |
カンパニー |
牡8 |
58 |
32秒9 |
2009年新潟記念 |
ホッコーパドゥシャ |
牡7 |
56.5 |
33秒0 |
2005年金鯱賞 |
タップダンスシチー |
牡8 |
59 |
33秒8 |
2003年目黒記念 |
トシザブイ |
牡7 |
57 |
33秒5 |
32秒台の上がりで重賞を制する
7歳以上の馬というのも凄いが、
斤量58kg以上で33秒台の上がりで重賞勝ちをする
7歳以上の馬も珍しく、2000m以上の距離だと
カンパニーと
タップダンスシチーの2頭しかいなかった。加えて言えば、上記の6頭のうち
休み明けだったのは05年金鯱賞の
タップダンスシチーだけで、今回の
フェイムゲームの走りがいかに
特別だったかが分かる。
フェイムゲームは5歳時に
天皇賞・春で惜しい②着(クビ差)があり、その後は
メルボルンCなどにも挑戦したが、
G1タイトルには手が届いていない。
カンパニーや
タップダンスシチーのように、7歳以上でのG1勝利を飾ることができるだろうか。今回はその可能性を感じさせる末脚だった。