伸びシロは十分、この路線で順調にレースを重ねていってほしい
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
G3ながらも、
宝塚記念へ向けたステップレースという位置づけになる
鳴尾記念。一昨年にここから
宝塚記念を連勝したラブリーデイをはじめ、現在の時期に戻った12年から
4年連続で
宝塚記念好走馬を送り出した。昨年こそステファノス(このレース②着)の⑤着が最高だったが、基本的には相性が良い前哨戦だ。ただ、あくまで「ステップ」として相性が良いだけで、必ずしもこのレースの最先着馬が良いわけではないことは要注意。負けた馬も含め、しっかりと見ておきたい。
そんな視点で今年のメンバーを見ると、まず目につくのはすでに15年の
宝塚記念②着がある
デニムアンドルビーに、同年の
ジャパンC②着
ラストインパクト。そして今回1番人気に推された13年の
秋華賞②着馬
スマートレイアーというG1連対実績馬たち。いやあ、みなさん7歳馬、しかも2頭は牝馬でここまで走っているのだから頭が下がる。加えて1頭、
ダービー③着の
マイネルフロストは6歳馬というベテラン揃いだ。
これに対する、2番人気の
バンドワゴン、3番人気の
ステイインシアトルは、それぞれ前走、前々走で1600万を勝ったばかりというフレッシュな……と言いたいところだが、この2頭、キャリアこそ8、9戦と浅いものの、ともに1年半以上の休養があった6歳馬。4歳馬不在で5歳馬3頭は下位人気と、G1の前哨戦らしいとも、G3らしいとも言い難い、なんとも
不思議なメンバー構成となった。
そんなメンバーでハナを切ったのは、一応「フレッシュ」組の
ステイインシアトル。前走・オープン初挑戦の
福島民報杯はハイペースの2番手から前を追う形になってしまい⑥着だったが、今回はまったく競る馬がおらず、800m49秒4、1000m61秒6のマイペースだ。他の人気どころは
バンドワゴンが3番手の外、その直後に
スマートレイアーと、しっかり前を射程圏に入れる展開となった。
そして4コーナー、外から
バンドワゴンが前に並びかけにいったものの、残り400mから
ステイインシアトルが刻んだ11秒0のラップに食らいつけず後退。直線ではかわって外から
スマートレイアーが脚を伸ばし、坂下での差は1馬身半。なにせスローだっただけに、前で構える
ステイインシアトルもそう簡単には止まらない。しかしゴール寸前、その脚が衰えかけたところで
スマートレイアーが強襲。その差が1馬身、半馬身と一気に詰まったが、クビまで迫ったところでゴール板を通過。
ステイインシアトルが鮮やかな逃げ切りで、見事に
初の重賞タイトルを獲得した。
前述の通り、長期休養もあった
ステイインシアトルは、6歳ながらこれで10戦5勝という、まるで3歳馬かという成績。
宝塚記念で5勝を挙げる
ステイゴールド産駒だけに期待したくもなるが、復帰後も休みを挟みつつの出走だっただけに、ここで無理はせず、次走は
サマー2000シリーズのどこかになるようだ。
今後は、
福島民報杯のような厳しい流れへの対応がカギになる。とはいえ、なにせまだキャリア10戦。ここから
もうひと伸び、ふた伸びあるに違いない。まずは大事に大事に、この路線で順調にレースを重ねてくれることを期待したい。
一方、
スマートレイアーは展開的には致し方ない敗戦で、最後によく勝ち馬を追い詰めた、と言ってもいいだろう。昨年末から2400mの
香港ヴァーズ、そして2200mの
京都記念というレース(距離)選択は少し意外な感もあったが、その
京都記念はマカヒキに先着する②着と、その距離にもしっかり対応していた。また、今回こそ敗れたが、阪神は
全8勝中6勝を挙げる好相性のコース。
宝塚記念に進むようなら、ちょっと穴っぽい存在になる。
そして、前2頭から少し離されたが、好位の内から渋太く伸びて③着に食い込んだのが7番人気
マイネルフロスト。前走の
新潟大賞典②着に続く好走で、2戦連続の馬券圏内は、なんと13年の
新馬→
コスモス賞連勝以来だ。前走からのブリンカー装着で、
ムラ馬から一変してきた可能性もあり、次走もあまり人気にならないならぜひ狙いたい馬だ。