1年4ヵ月前の出来事を東京コースで払拭してみせた
文/編集部(M)、写真/森鷹史
1番人気に推された
アストラエンブレムについて「メインレースの考え方」では、
『馬券的には惜敗のケースも頭に入れて臨んだ方が良い印象がある』と記した。そのように書いたのは、
アストラエンブレムが
ダイワメジャー産駒だったからだ。
ダイワメジャー産駒は
メジャーエンブレム、
レーヌミノル、
コパノリチャードといった活躍馬がいるが、重賞勝利のほとんどは
1600m以下で、1800m以上になると途端に勝ち鞍が減る傾向にある。芝ダート合わせて1800m以上のJRA重賞は[2.6.7.123]という成績で、勝ったのは
12年毎日王冠と
15年小倉大賞典で、どちらも
カレンブラックヒルによるものだ。
アストラエンブレムは一連の成績を見ても重賞級であることは疑う余地がないし、スピードで押し切るだけのタイプでもないから、乗り方ひとつで距離の融通性があるように感じていた。それだけに、本命までは打ち切れないものの、能力上位で
対抗「○」という評価をして、冒頭で記したような
注釈を付けたわけだが、まさか本当に惜敗の形となるとは……。
血統データというのは恐ろしいな、と改めて思った次第です。
僅差の③着となった
マイネルハニーを
「◎」としていたので、②着と③着が「対抗」と「本命」だったわけだが、勝った
ダッシングブレイズには印を回さなかった。実はこれも、
血統データに拠るところがあった。
父
サドラーズウェルズ系の馬は、00年以降の東京芝1800mの重賞で[0.3.1.32]という成績だった。
ダッシングブレイズは3代父が
サドラーズウェルズなのでこのデータを記したのだが、
“系統”というのでは弱い部分があったか。それよりも何よりも、今回は
浜中騎手に乗り替わり、人馬ともに
期する面が強く、それが他馬や血統データを凌駕したと言えるのかもしれない。
昨年2月の
東京新聞杯は、東京競馬場で観戦していたこともあって、強く印象に残っている。3連勝中で1番人気に推された
ダッシングブレイズ&
浜中騎手は直線で最内を突いたが、バランスを崩して内ラチにぶつかり、
浜中騎手がラチを飛び越えて芝に叩きつけられるという惨事になった。
スマートレイアーが勝利したことよりも、
ダッシングブレイズの競走中止の方が強く印象に残っているレースだ。
浜中騎手は3ヵ月の療養を余儀なくされ、
ダッシングブレイズは約2ヵ月後の
ダービー卿CTで復帰したものの⑥着に敗れ、その後もそれまでの伸び脚が見られずに連敗が続いた。今回のレース後、
浜中騎手は
東京新聞杯での落馬について触れ、
「馬に申し訳ないことをした」と話していたが、
ダッシングブレイズ自身も何か後遺症のようなものを負っていたのではないだろうか。
「また一緒に勝つことができれば、お互いに頑張っていけるのではないかと思っていた」と
浜中騎手は話していたが、季節やコースこそ違えど、落馬をしたその
東京コースで
復活の勝利を挙げることができたのは本当に良かったと思う。
逃げる
マイネルハニーを見る位置に付けた
ダッシングブレイズと
アストラエンブレムは、直線に入り、
マイネルハニーを挟んで
内(
ダッシングブレイズ)と
外(
アストラエンブレム)に分かれる形になった。
マイネルハニーは馬場の中央に進路を採ったので、内と言っても
ダッシングブレイズの前は大きく広がっていたが、直線で内を回って差し切ったこともあの
東京新聞杯のことを払拭するのに十分な内容だったと思う。
ダッシングブレイズという名前を聞くと、どうしてもあの落馬のことを思い出してしまっていたが、これからはこの
エプソムCのことが記憶の上位となりそうだ。近年の
エプソムCは
エイシンヒカリなど、ここをステップに飛躍する馬も多いので、
ダッシングブレイズの代名詞がこの先の大レースになる可能性もあるだろう。期待して、これからのレースを見守りたい。
最後に、少しだけ
馬場のことについても触れておこう。今年の
エプソムCは先行決着となったが、決してスローペースだったわけではなく、超ハイペースというわけでもなかった。
1000m通過は
59秒7で、これは昨年(60秒5)よりも速いが、2年前(59秒2)よりは遅い。決着タイムは2年前(
エイシンヒカリ)が
1分45秒4、昨年(
ルージュバック)が
1分46秒2、今年が
1分45秒9。上がりの800mを比較すると、2年前が46秒2、昨年が45秒7、今年が46秒2だ。
エプソムCに限らず、今週末の東京競馬の芝レースは、逃げ馬が進路を馬場の中央に採り、内側を空けて走るケースが多くなったが、そんな荒れ馬場でも先行勢はあまり止まらず、それなりに
時計の速い決着が継続されている。
今春の東京競馬は残り2週だが、
荒れ馬場でも差しが利くとは限らないので、その用心はして臨むと良いだろう。