来年のフェブラリーSまで、この圧勝劇をお忘れなく
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
G1馬が加増ナシの56キロで出られるのかよっ! という声が北のほうから聞こえてきたが(
函館スプリントS・セイウンコウセイ)、こちら
ユニコーンSもまた似たような話で、
リエノテソーロが加増ナシかつ牝馬2キロ減。昨年は芝1200mでデビュー2連勝を飾ると、ダートに転じ門別の
エーデルワイス賞、そして川崎の
全日本2歳優駿をともに圧勝。これだけでも相当なものだが、芝でも前走の
NHKマイルCで②着というのだから、ほかに重賞勝ち馬不在のこのメンバーでは、まったく
格上という存在だ。
ちなみに、このレースは「グレード別定」でG1馬は2キロ増だが、
「2歳時の成績除く」。3歳のこの時期なら、2歳G1勝ち馬には1キロくらい背負わせても良さそうな感もある。ともあれ、他の牝馬と同じ54キロ、牡馬より2キロ軽い
リエノテソーロが1番人気で単勝2.5倍。オープン特別組の
サンライズノヴァ、
サンライズソアが5倍前後で続いた。
ただ。その
リエノテソーロに騎乗予定だった
大野拓弥騎手が負傷のため乗り替わり(
内田博幸騎手)。さらに、同様に負担重量断然有利と思われた函館のセイウンコウセイが、前半32秒2のハイペースについていってしまって④着敗退。どうにも梅雨時の空模様のごとく、
リエノテソーロにも
微妙な雰囲気が漂い始めていた。
そんな中でのスタートは、テソーロ違いの5番人気
ハルクンノテソーロが出遅れて後方から。その他も含め、内全体が遅れ気味だったが、4番
リエノテソーロは互角に出て
テイエムヒッタマゲの2番手で落ち着こうかという態勢になった。その瞬間、内からスプリント戦かのような勢いで交わしていったのが
シゲルコングで、前2頭は一転して競り合いに。400mほども走れば、馬群はかなり縦長になっていた。
前半の600m通過は34秒1、800mは46秒4と速いペース。他の人気どころは、
サンライズソアが
リエノテソーロを前に見て5~6番手。
サンライズノヴァと、4番人気
アンティノウスは中団で併走。見た目からは中団以降のほうが良さそうで、それに加えて
函館スプリントSの結果もあっただけに、
リエノテソーロは微妙どころか相当怪しげ。
不利な展開を力で克服できるかどうか、という道中になった。
そして4コーナー。外から
サンライズソアが併せにかかると、
リエノテソーロの手応えがあまり芳しくない。すぐに馬群に飲まれるほどでもないものの、そこから突き放すような勢いも欠いていた。ただ、
サンライズソアも先行していただけに、一気に交わすほどの脚色はなし。出負けしたはずの
ハルクンノテソーロがいつの間にやら2頭の外から接近。そして大外からは、
サンライズノヴァが一気に脚を伸ばしてきた。
少々ペースが速くても前残り、という展開だっていくらでもあるものだが、さすがにこの形にまでなると前の組は苦しく、
リエノテソーロとて例外ではなかった。残り300mあたりで前の争いからは後退。ちょうどそのタイミングで大外の
サンライズノヴァが先頭に替わり、そのまま他馬を一気に突き放し、最後は
4馬身差での快勝劇となった。
と、書いてしまうと展開にかなり恵まれたようだが、その
サンライズノヴァが抜け出してからのラスト1ハロンは、12秒を割って11秒9。もちろん展開も向いたが、それ以上に、最後までしっかりとした末脚を繰り出したからこその4馬身差だ。
ここまで
サンライズノヴァはダート戦で
[2.1.1.1]。前走の
鳳雛Sは4角先頭から押し切り失敗の僅差④着など大崩れはなかったが、ここで圧勝するまでのイメージもなかなか浮かびづらかった。昨年11月の
新馬戦以来となる1600m戦(と
戸崎圭太騎手)、そして速い流れで近走よりも後ろの位置取りになり、
違った面が引き出されたということだろう。
そして仮に距離短縮が効いたとなると、大井2000mの
ジャパンダートダービーなど中距離戦へ向けては多少の
不安も残す。
ゴールドアリュール産駒なら守備範囲内だろうが、他馬に逆転の余地もあるかもしれない。一方、これで東京1600mは
2戦2勝。仮に次走以降で
距離の壁が明らかになったとしても、秋の
武蔵野Sはもちろん、来年の
フェブラリーSまで、この圧勝劇を忘れないようにしたい。
リエノテソーロは展開も響いたほか、これが中央のダートは初参戦。地方での交流重賞ならまた違う可能性もあり、牝馬同士でもまた同様。いや、前走・
NHKマイルC②着が
本来の姿で、実はダートは能力でこなしていた、という結論もあり得るだろう。いずれにしてもまだ3歳6月。勝ったものも、敗れたものも、これからどんな姿に成長していくのか、じっくりと見守りたい。