短距離路線にニュースター誕生の予感!?
文/編集部(T)、写真/川井博
今週から函館開催が始まり、
函館スプリントSは
サマースプリントシリーズ第1戦に位置づけられる。サマーといってもこの日の東京は雨模様ということもあって涼しささえ感じられる天気で、そこまで
“夏感”はなかったのだが……。
それはともかく、この週の函館の芝は
超がつくほどの高速決着続きで、
芝1200m、
芝1800m、
芝2600mのレコードが塗り替えられることになった。
このうち、
函館スプリントSが行われた芝1200mに注目すると、土曜の開催が始まる時点でのレコードは昨年の
函館スプリントSで
ソルヴェイグが記録した
1分7秒8だった。
そのタイムを最初に更新したのは土曜の1000万特別・
HTB杯の
タマモブリリアンで、その走破タイムは
1分7秒6。さらに日曜の平場500万で
エリシェヴァが
1分7秒5で上書きし、このレースで
1分6秒8を計時した
ジューヌエコールが塗り替えた。
このように
芝1200mひとつとってみても、実に
1週間で3頭の“レコード勝ち馬”が誕生し、最終的に昨年からちょうど1秒更新される形になった。
その原因として考えられるのは、まず馬場状態。そして、このレースについては1番人気
セイウンコウセイ、2番人気
シュウジという2頭の人気馬が前に行ったこともあったような気がする。
函館は小回りコースということもあって、12年
函館スプリントSの
ロードカナロア(②着)などの例にもあるように、
人気馬が包まれてフルに力を発揮できないケースが多い。さらに、前述したレコードを記録した2頭(
タマモブリリアン、
エリシェヴァ)は4角2番手以内の競馬をしていた。
シュウジの
武豊騎手、
セイウンコウセイの
幸騎手という両ベテランが包まれることを嫌い、そして少々速いペースでも前に行けば粘れると見て、先行力があるこの2頭が行ったのは自然な流れだったのかもしれない。
ところが、ここが
展開のアヤか。力のある2頭が前に行ったことで当然ながらペースが上がり、今回の
600m通過は32秒2で、これは昨年の33秒4より
1秒2も速くなった。そんな中、このレースが初めての芝1200mとなった
ジューヌエコールが好位直後で流れに乗り、直線で突き抜けてみせたのである。
この結果には納得できた部分もある。それは、
ジューヌエコールが
安田厩舎所属、そして
クロフネ牝馬だからだ。
安田厩舎&
クロフネ牝馬というプロフィールは、2011年にこのレースを制し、そこから
キーンランドC、
スプリンターズSと連勝街道を進んだ
カレンチャンと同じとなる。同厩舎の馬は、芝1200m重賞で[14.16.6.60](複勝率37.5%)と好成績だ。
また、
クロフネ牝馬のスプリンターといえば
スリープレスナイトもいるが、同馬は初の芝1200mとなった一戦(08年
CBC賞)で勝利を収め、そのまま連勝を続けて
スプリンターズSを制している。
今年の
NHKマイルCを制した
アエロリットもそうだが、
クロフネ牝馬は先行力を活かして好成績を収めるタイプが多い。今回の
ジューヌエコールは斤量50kgも味方しただろうが、初距離でも流れに難なく対応した
レースセンスの良さも見逃せないはず。
ジューヌエコールはまだ3歳、しかも牝馬ということで、50kgではないにしても他馬に比べれば斤量面での恩恵を受けられることも好材料。安田厩舎所属の
カレンチャン、
ロードカナロアに続き、短距離路線で大成する可能性を示したことは間違いないだろう。
ちなみに、この日の12R
北斗特別(函館芝1800m)でもレコードタイムが更新された。それまでのレコードホルダーは1分46秒0の
ボールドノースマンだが、そのレースが行われたのは
1988年(昭和63年)8月7日で、レース名は
青函トンネル開通記念。懐かしさを感じる言葉が並んだが(笑)、それ以来29年ぶりの更新となった。
各競馬場でも、3歳以上の芝のレコードタイムは平成時代に更新されたものがほとんどとなった。現在も開催が行われている3歳以上の芝コースで残っている昭和時代のレコードタイムは、前述の
青函トンネル開通記念と同年に行われた
函館記念で
サッカーボーイが記録した、
函館芝2000mの1分57秒8くらいだろうか。
函館の今の馬場が維持されれば、これが更新されるのも時間の問題なのだろう。とはいえ、
サッカーボーイのタイムが更新されたら寂しさを覚える方は、自分以外にも多いのではないだろうか? その最大のチャンス(?)になりそうな今年の
函館記念は、連続開催5週目となる7月16日に開催予定だ。