厄介な敵を克服できれば産駒初の1200mG1勝ちも視野に!?
文/出川塁、写真/森鷹史
かつて一口出資していた馬が屈腱炎を患ったあと、復帰を果たして勝利を飾ったことがある。なかなか進展が見られないクラブのレポートに毎週やきもきしながら2年あまりが経ち、久しぶりにパドックを周回している姿を見たときは、それだけでウルッときたものだった。まして
シャイニングレイのように重賞を勝ったとなると、嬉しさはどれほどのものだろうか。
重賞昇格初年度の
ホープフルSを勝ち、クラシックの有力馬と目されたのは2年半前のこと。しかし、3歳初戦の
弥生賞で⑦着に敗れると、その後は長らく雌伏のときを過ごすことを強いられる。春のクラシックは二冠とも回避を余儀なくされ、秋の復帰戦を目前に屈腱炎を発症。結局、休養期間は2年にも及ぶこととなった。
ようやく実戦に帰ってきたのが今年3月の
オープン特別・仁川S。脚元を考慮してダート戦での再起となった。結果は⑥着も、初ダートだったことや道中で行きたがったこと、さらには落鉄もあったことを思えば悲観するような内容ではなかった。
ところが、復帰2戦目の
福島民報杯は思わぬレースになってしまう。スタートで後手を踏んで後方からの競馬になるかと思いきや、馬群に入れてもまったく折り合わず、外に持ち出されるとグングン加速し、2コーナーではハナへ。さすがにこれは暴走で、3コーナー過ぎで早くも失速。⑭着の大敗を喫した。
母の
シェルズレイは
チューチップ賞と
ローズSで②着に入った活躍馬だが、この馬も相当に引っ掛かる馬だった。その気性を受け継いだ
シャイニングレイも故障前から引っ掛かる面を見せていたはいたが、年齢を重ねて血が目覚めたのかむしろ悪化してしまったようだ。
とはいえ、悪いことばかりではない。引っ掛かるのは脚力があることの裏返しではあるし、なにより長い休養を経ても
闘志を失っていないことの証明でもあるからだ。そこで
陣営は距離短縮を決断。復帰3戦目となる1400mの安土城Sでも行きたがる様子を見せてはいたものの、3番手から押し切って久しぶりの勝利を収めた。
次走はさらに200m短縮して
CBC賞。ここは伸び上がるようなスタートになって、道中は後ろから2、3頭目につける。スペシャリストが揃う1200m重賞ではさすがに厳しいのかとも思ったのだが、よく見ると追走に苦労するどころか、鞍上の
北村友一騎手は手綱を引っ張って懸命になだめているぐらいだ。
3コーナーで外に持ち出して、直線では大外へ。逃げ込みを図る
アクティブミノルや2番手からかわしにかかる
セカンドテーブルまでの差はまだまだ残っていたが、急坂を駆け上がってから猛追。
ディープインパクト産駒らしい末脚を炸裂させて、ゴール板でピッタリ差し切った。
はじめての1200m重賞で結果を出した
シャイニングレイ。能力の高さは間違いのないところだが、今後も自分との戦いが待ち受けている。決して緩くはない前半33秒2のペースでも行きたがってしまう気性。脚元には屈腱炎という爆弾を抱えている。どちらも
厄介な敵ではあるが、克服できれば
ディープインパクト産駒初の
1200mG1勝ちも視野に入ってくるだろう。
ラップもなかなか興味深い。最後の1ハロンが12秒6とガクッと落ちたことは、追い込む
シャイニングレイにとって追い風になったはず。一方で、このラップを生み出した張本人の
アクティブミノルは③着に逃げ粘り、2番手で追いかけた
セカンドテーブルもハナ差の②着に食い下がった。④着の
ティーハーフは4角11番手、⑤着の
スノードラゴンも15番手で、ほどほどの位置につけた馬は1頭も掲示板に載れなかった。玉砕覚悟で行ききってしまうか、思い切って後ろに下げなければ好走できない、ジョッキーにとっては判断が難しいレースになったようだ。
その意味では、1番人気の
メラグラーナが道中12~13番手を進んだのは間違いではなかったのだろう。
不運だったのは、第10レースが終わったあとから降り出した雨。昨年の
京阪杯は重で
⑭着、前走の
高松宮記念も稍重で
⑩着と、明らかに濡れた馬場を苦手としている。また、
過去の全7勝は8番枠から外に入ったときに挙げており、今回は2枠3番の枠も厳しかった。これで通算[7.1.0.9]と、勝つか、さもなくば④着以下というタイプ。ここは1番人気を裏切ってしまったが、良馬場で真ん中より外の枠という条件さえ揃えば、すぐにでも巻き返してくるだろう。