暑さとダンチヒの有無には関係性が!?
文/編集部(M)、写真/森鷹史
現在発売中の
『サラブレ』8月号には、
「佐藤哲三元騎手&藤田伸二元騎手のスペシャル対談」が掲載されていて、その中でお二人が
津村騎手について言及している箇所がある。
トップジョッキーだったお二人の対談は、さすがに奥が深い内容で面白く、お二人揃って
津村騎手の技術を高く評価されていた。今年の
中京記念は、その
津村騎手が騎乗した
ウインガニオンが2馬身半という差を付けて重賞初制覇を飾った。
ウインガニオンは、
谷川岳S、
パラダイスSと連勝を飾っていて、その2戦を含めて、古馬になってからの5勝を
逃げ切りで挙げていた。ただ、今回は、短距離戦でも先行力を見せていた
トウショウピストがいたので、近2走ほど展開面で恵まれないのでは?と思われた。案の定、ハンデ54kgの
トウショウピストにハナを奪われ、2番手を追走する形になった。
レース後のコメントを聞くと、
津村騎手はハナに立つことを考えていたようだが、離れた位置でも落ち着いて走らせ、内ラチ沿いを進んで先頭に躍り出た。直線半ばで早めに後続との差を拡げると、残り200mでは後続との差が3~4馬身ほどあったか。そのまま
道中でのロスをまったく感じさせない騎乗で、まさに完勝という内容で初タイトル獲得をもたらした。
今年の
中京記念は、1~5番人気に推された5頭の5歳馬が①~⑤着に入る堅い決着になったが、④着
アスカビレンと⑤着
ダノンリバティは休み明けだった。①~③着の3頭(
ウインガニオン、
グランシルク、
ブラックムーン)は中3~4週の臨戦で、重ハンデでも順調に使われていた5歳馬が実力を見せる結果になった。
ウインガニオン、
グランシルク、
ブラックムーンの3頭はいずれも重賞未勝利で、初タイトルを狙っての参戦だったが、
グランシルクや
ブラックムーンには無くて、
ウインガニオンにはあった要素が存在した。
夏季実績だ。
グランシルクと
ブラックムーンは7~8月の出走歴がなかったが、
ウインガニオンは7~8月に3勝([3.0.0.1])を挙げていた。
ウインガニオンは3歳時に2勝、4歳時に3勝、そして5歳の今年に3勝をマークしているが、3歳時の2勝は
6~7月で、4歳時の3勝は
6~8月。今年の3連勝は
4~7月に記録していて、まさに気温の上昇とともに実績も上昇カーブを描いている。
サマーマイルシリーズの第2戦は8月13日の
関屋記念が予定されていて、
ウインガニオンは同コースの
谷川岳Sを逃げ切っているのだから、夏季実績とコース実績を加味されて、当然、有力視されるのだろう。
昨年の
関屋記念は
スニッツェル産駒(
ダンチヒ系)の
ヤングマンパワーが制していて、
関屋記念は
ダンチヒを持つ馬の好走が多い印象がある。01~02年には
ダンチヒ産駒の
マグナーテンが連覇しているし、11~12年は母父が
ダンチヒ系の2頭(
レインボーペガサス、
ドナウブルー)が連勝している。
夏季の暑さと
ダンチヒの血は、何か関係があるんじゃないかと思っている。
古い話で恐縮だが、それを感じさせられたのは、09年6月の
福島テレビオープンだった。そのレースは
トーホウレーサーが10番人気(単勝45.5倍)で逃げ切ったのだが、同馬は前年1月以来の出走で、
約1年5ヵ月ぶりの長期休養明けだった。穴ぐさ💨指名を見送って激走され、驚きとともに振り返ったら、
トーホウレーサーは父
ダンチヒ系の
チーフベアハート産駒だった。暑いとか長期休養明けとか、普通なら
へばりそうな条件の時こそ、
ダンチヒの力が発揮される。そんな認識がある。
グランシルクや
ブラックムーンは
ニジンスキーの血を持っているものの
ダンチヒは持っておらず、
ウインガニオンは父
ステイゴールド×母父
ダンチヒ系(
ポリッシュネイビー)×母母父
ニジンスキー系(
マルゼンスキー)という配合だ。
グランシルクや
ブラックムーンが持っていなくて
ウインガニオンが持っていたのは、
夏季実績というより、
ダンチヒの血、と言えたのかもしれない。
来週からは舞台が
新潟、
小倉、
札幌の3場に替わるが、暑さは一段と厳しさを増すのではないだろうか。
暑くてへばりそうな時こそダンチヒ系。そんなことを思いながら、夏競馬に臨むようにしましょう。
最後に余談になるが、『サラブレモバイル』内の
「一口クラブを楽しもう!」のコーナーでは、編集部員が現2歳馬に出資していて、その馬(
オルボンディール)が父
ステイゴールド×母父
キングカメハメハ×母母父
ダンチヒ系(
Boundary)という配合だったりする。
ダンチヒ系を持つ
ステイゴールド産駒で、しかも所属厩舎が
西園厩舎だったりして、
ウインガニオンと似ている(
オルボンディールは
牝馬だが)。
オルボンディールのレポートには、
「ステイゴールド産駒の牝馬にしては特に気難しいところは見せていません」との記述が散見される。今後も気難しさを見せず、
ウインガニオンのように
暑さに負けない馬に育ってほしいが……。