カシアスも短距離~マイル路線で大きく育っていってほしい
文/浅田知広、写真/川井博
今年の
函館2歳Sは、出走15頭中9頭(+取消の
モルトアレグロ)が
牝馬というメンバー構成。近年では一昨年に
牝馬12頭(①~③着独占)という例もあったが、それに次ぐ多さである。
また、過去10年ではその
牝馬が
[6.6.4.52]連対率17.6%、
牡馬が
[4.4.6.65]連対率10.1%と牝馬優勢だ。ただ、数が多くて率も良ければ
牝馬狙い、とも言えないのが団体戦ではなく個人戦(個馬戦?)の競馬。長期的な視点ではなく、今日、目の前のレースを当てたいと思えば、
牝馬狙いが正解とも限らない。
人気面では
牡馬、
カシアスと
ナンヨープランタンが1、2番人気。この2頭、函館開幕週・6月18日の
新馬戦では
ナンヨープランタンが優勝して②着に
カシアス、さらに③着の
リンガラポップス(7番人気)も次走で勝ち上がって駒を進めてきており、各馬はもちろん、その
新馬戦自体も評価されたという形だった。
その一方で、気になるペアがもうひと組。6月24日の牝馬限定・
新馬戦に出走していた
アリア(4番人気)と
ダンツクレイオー(6番人気)だ。一口やPOGを長くやっていると、
「牝馬戦で確勝を狙ったつもりが、同じような馬が何頭もいて結局ハイレベル」というレースに遭遇することも一度や二度ではない。これだけ
牝馬が多く出てきた年なら、この牝馬限定戦のレベルが高かった、というパターンも十分にあり得るだろう。
そんな上位人気馬を含む2組に注目してみた今年の
函館2歳S。先手を奪ったのは、福島からの転戦組
パッセ(5番人気)で、2番手には函館組でも中1週の
ウインジェルベーラ(12番人気)。続いて牝馬戦組
ダンツクレイオーだが、こちらも初戦で負けたがために中1週続き。
「函館1200mを勝ち、ある程度間隔を取った馬」が良さそうな中で、ちょっと傾向的には
不利っぽい馬が前を占める展開だ。
人気どころでは、
カシアスが5番手の外につけ、これを見るように中団馬群に
アリア。
ナンヨープランタンはスタートひと息で後方からの競馬を強いられた。
前はやや縦長になったものの、前半3ハロン通過は34秒5。前日道悪の影響がどの程度残っているか判断は難しいが、このレースとしては決して速くはない流れ。4コーナーで外から先頭に立った
ウインジェルベーラが抜群の手応えで、外から進出した
カシアスと
アリアが追いつくかどうか。後方から大外を回した
ナンヨープランタンは、よっぽどの鬼脚を繰り出さねば間に合わない。注目レースを勝った
カシアスと
アリア、そして粘る
ウインジェルベーラの3頭の勝負となった。
ここから直線半ばでは、
アリアが大外から差し切る勢いを一瞬は見せた場面もあったが、残り150mでやや失速気味。そのタイミングですぐ内から
カシアスが伸びていき、最後はゴール前できっちりアタマ差、
ウインジェルベーラを捕らえて勝利を飾ったのだった。
結果としては、少数精鋭(?)
牡馬の中から1番人気に推された
カシアスが優勝し、
牝馬の中ではノーマークに近かった
ウインジェルベーラが②着に激走と、
牡牝両極端の結果。ただ、
アリアも③着は確保と、まず悪くはない内容だ。ペースもあっただろうが、
ウインジェルベーラの健闘をたたえた方がいいだろう。
また、その
ウインジェルベーラは母の父が
フジキセキ、そして
カシアスは父が
キンシャサノキセキで、
フジキセキの孫によるワンツー決着。
キンシャサノキセキ産駒は昨年、モンドキャンノが②着惜敗を喫したが、その後、
京王杯2歳Sを鮮やかに差し切って重賞タイトルを獲得、続く
朝日杯FSでも②着と活躍を見せた。
カシアスは
新馬戦こそ逃げて②着だったが、前走はラスト1ハロン11秒4の脚で一気に3馬身半突き抜け、今回もちょっと苦しいかという態勢から差し切っての連勝と、小回り函館だけにとどまらない活躍も期待できそうな脚を繰り出している。牝系からは、
フジキセキ産駒で
高松宮記念を制し、
NHKマイルCでも②着だったファイングレインも出ているだけに、
カシアスも
短距離~マイル路線で大きく育っていってくれることを期待したい。