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諦めさえしなければ何かが起きる、タツゴウゲキが身をもって証明
文/出川塁、写真/稲葉訓也


ハービンジャーにとって「冬の祭典」京成杯だとすれば、「夏の祭典」にあたるのがこの小倉記念だ。

過去に小倉記念に出走した産駒はベルーフしかいないが、同馬は15年、16年と連続②着。ハービンジャーが得意とする「コーナー4つの芝2000m」でも小倉は特に相性がよく、産駒デビューから先週まで[12.9.6.55]、勝率14.6%、複勝率32.9%、単勝回収率95%、複勝回収率101%と抜群の成績を残している。今週も土曜の都井岬特別(500万)をエッジースタイルが制しており、完全に機は熟していた。

まあ、そのように見えたのはを含むハービンジャー・マニアだけではあったか。とはいえ、購入する馬券は出馬登録の時点で決まっていた。3年連続でエントリーしてきたベルーフと、去勢して以降は6戦4勝と絶好調のサンマルティン。この2頭の馬連ワイド1点、これしかない。

自信満々のわりに、ワイドを押さえなくてはならないのが情けないところではある。切れ味不足で、どうにも詰めが甘いハービンジャーの特性を熟知するマニアならではの悲哀とでも思っていだければ幸いだ。

レースでは、ハービンジャー2騎は後方2、3番手と後ろからの競馬となった。これは想定の範囲内。ヨーロッパ血統のハービンジャー産駒を序盤から急がせては持ち味が出ない。位置取りは前でも後ろでもいいが、前半はマイペースで走らせるのが鉄則だ。テンのダッシュ力には欠けるものの、最後までバテない持続力こそが最大の武器だから、勝負どころでマクッていけばいい。

果たして、サンマルティンは目論見どおりに外からマクッていく。楽な手応えのまま、4コーナーで早くも先頭に並びかける勢いだ。もう1頭のベルーフも、先行グループを視野に収める位置まで押し上げている。

ここまでがハービンジャーなら、このあとも実にハービンジャーだった。2頭とも着実に伸びてはいるのだが、ピリッとした脚も使えない。一旦は抜け出したかに見えたサンマルティンは内からタツゴウゲキの猛追を受け、ベルーフフェルメッツァに手を焼いている。最後はどちらも叩き合いとなって、2頭ともが敗れてしまった。サンマルティン②着。ベルーフ④着。馬連はおろかワイドも霧散したにできるのは「はぁ……ビンジャー……」と独りごちることだけだった。

そんなことよりも、称えるべきは勝ったタツゴウゲキだ。3歳6月の遅いデビューから5戦目までは掲示板にも載れなかった馬が、そこから2年あまりで重賞を勝つまでに至った。この馬も過去の3勝がすべてコーナー4つの芝2000mだったから、いかにもコース適性が高そうな馬ではあった。

前走の七夕賞では、4コーナーで行き場を失って最後方まで下がる大きな不利があった。それでも集中力を切らすことなく⑥着まで盛り返しており、着順以上に内容のある走りを見せていた。そのうえでミルコ・デムーロ騎手を起用してきたのだから(実際には当日の落馬負傷で騎乗できなかったものの)、ここは勝負がかりの一戦だと気づくべきだった。にもかかわらず、「ハービンジャー夏の祭典」などと浮かれていた敗北は、その時点で決まっていたようなものだった。

急遽の乗り替わりとなった秋山真一郎騎手の好騎乗も光った。2番枠からすんなり先行して、終始内ラチ沿いを進み、他馬が仕掛けた3、4コーナーでも追い出しを最後まで我慢。このまったくロスのないレース運びが、ゴール板でのハナ差として表れたのである。

無理なく先行したのは、1番人気に推されたストロングタイタンも同様だった。しかし、こちらは4コーナーで早くも手応えが怪しくなり、そのまま⑧着に沈んでしまう。芝の条件戦に限れば6戦5勝②着1回と凡走なしなのだが、オープンに入ると4戦して小倉大賞典の⑤着が最高。ここに大きな壁がある。前走のマレーシアCレコード勝ちした勢いをもってしても、この壁を破ることはできなかった。

とはいえ諦める必要はまったくないし、諦めさえしなければ何かが起きる。それは、今回勝ったタツゴウゲキが身をもって示してくれている。3年連続②着となったハービンジャーも諦めずに、来年こそ目指すは①着である。