ロマン輝くダイアナヘイロー、今後は調子の維持がカギに!?
文/出川塁、写真/森鷹史
ここ2年は
サクラバクシンオー産駒がワンツーを決めていた
北九州記念。しかし、今年は
バクシンテイオーのみの出走となり、結果も⑰着に終わった。昨年の覇者ではあるものの、ここ4走続けて掲示板に載れなかった8歳馬には、
サクラバクシンオーの明かりを灯し続けることはできなかった。
この名種牡馬は2011年に亡くなった。今年の5歳世代がラストクロップで、産駒はだいぶ減っている。だから仕方ないことではあるのだが、このレースには産駒が3、4頭出てくるのが当たり前だっただけに
時代の移ろいを感じざるをえない。
そんな寂しさを慰めてくれたのが、14番人気の低評価を覆して②着に突っ込んだ
ナリタスターワンの力走だ。同馬の
父ショウナンカンプは、
サクラバクシンオーが最初に送り出したスプリントG1馬。種牡馬としては種付け頭数が減少する苦しい時期もあったものの、決して多くはない産駒がなかなかの走りを見せている。受精率の問題も克服しつつあるようだ。
惜しむらくは、
ショウナンカンプ自身も19歳とすでに高齢に差し掛かっていること。それでも、来年には
グランプリボスの初年度産駒がデビューし、現役のビッグアーサーも遠からず種牡馬となるはず。今後も
北九州記念で好走した馬の血統表には、
サクラバクシンオーの名前を見続けることができるだろう。
早くも文章を締めるような感じになってしまったが、勝ち馬に触れることもなく終わるわけにはいかない。今年の
北九州記念を勝ったのは4歳牝馬の
ダイアナヘイロー。この馬の血統表もまた、長年の
ファンには感涙ものだ。
父キングヘイローと
母の父グラスワンダーは、いずれも1998年のクラシック世代。同い年には
スペシャルウィークや
セイウンスカイ、そして
エルコンドルパサーがいる最強世代のひとつだ。当時のクラシックは外国産馬に開放されておらず、
グラスワンダーが故障のため3歳の春を棒にふったこともあり、直接のライバルとして激突したイメージはそれほどないとしても(実際には
グラスワンダーの5戦5勝)、20年近い時を超えて重賞勝ち馬の血統表に同世代2頭が同居しているのは胸に迫るものがある。
さらによく見ると、4代母には
ゴールデンサッシュの名前もある。いわずとしれた
ステイゴールドの母だ。この
ステイゴールドは1歳上の世代になるが、
グラスワンダーや
キングヘイローとは何度も戦っている。こういう血統表に触れるにつけ、競馬を見てきてよかったなとしみじみ思うのである。
そんなロマン輝く
ダイアナヘイローは、今年6月に500万下に降級したあと、一気の4連勝で重賞勝ち馬にまで上り詰めた。1000万下で7戦も足踏みしていたのが嘘のような
破竹の勢いだ。
とにかくスタートがいい。ポンと出てすんなり好位をとれるのが大きなアドバンテージとなっている。
北九州記念でも、外から
ラインスピリット、内から
アクティブミノルが押して押して前に行こうとするところを、馬なりのまま楽々と2番手を確保した。しっかりと折り合いもつき、前半で作った大きな貯金を直線に向いてから吐き出すだけ。非の打ち所のない安定したレース運びで
初重賞制覇を飾った。
今年はこれで8戦目。1、2月に3戦して3ヵ月休んだあと、5月27日に復帰してから3ヵ月足らずの短い期間にさらに5戦を消化したことになる。次走は、
セントウルSで
サマースプリントシリーズのチャンピオンを狙うのか、それとも
スプリンターズSでG1獲りに挑むのか。いずれにしても、今の調子をどこまでキープできるかがカギになってくるだろう。
ダイアナヘイローを管理する
福島信晴調教師は来年2月一杯で定年を迎える。
武豊騎手とのコンビでは、ちょうど20年前にもダンディコマンドで
北九州記念(※当時は1800m)を制している。この馬も素晴らしいスピードを持っていたのだが、快速馬の宿命なのか故障に泣かされ、ビッグタイトルには手が届かなかった。そんなコンビがこうしてまた、1頭の快速馬の下で巡り合った。「20年前」とか「20年ぶり」とか、懐古主義のようなフレーズを繰り返してしまったが、そんなレースもたまには悪くない。