今後、スプリント路線を牽引していくような存在になる可能性も十分
文/浅田知広、写真/川井博
この前、お隣、小江戸・川越の街をちょっと散策しにいったら、平日にも関わらず
若いねぇちゃんが多く(それも浴衣を着た!)、おっさん1人では
場違い感がひどかった。いつからこんな街になっていたんだ川越は……。というのとは逆の話。
セントウルSの出走馬を見て
「あれ、なんか若いヤツいなくね?」、そう思った人も多いだろう。過去10年の
セントウルS出走馬150頭のうち、3歳馬は19頭、4歳馬が28頭。ざっと3分の1は3~4歳馬が占めていたのだが、今年は3歳馬不在で4歳馬は
ファインニードル1頭だけ。老若男女混在していると思ったら、自分以外に若者がいなかった、というパターン。まあこっちのほうが、まだ居心地は悪くなさそうではある。
ともあれ、その
ファインニードルが3.1倍で1番人気。今春のオープン入り後は
④⑦着、降級した1600万を勝ち、前走の
北九州記念は
⑤着敗退。オープンでは居心地が悪そうな成績に見受けられるが、その
北九州記念では包まれて満足に追えない
不利があり、最後にちょろっと盛り返しての⑤着。さらに、今回のメンバーでは同レース最先着、そして引き続き
M.デムーロ鞍上となれば、人気になるのも納得だ。
2~3番人気はひとつ年上のお姉さん、
フィドゥーシアと
メラグラーナ。5歳牝馬というとレースによっては厳しくもなるが、このレースは
[3.2.3.13](複勝率38.1%)の好成績。
フィドゥーシアは
アイビスSD②着から連続好走を狙い、一方の
メラグラーナは2戦連続ふた桁着順から待望の
「晴・良」で巻き返しを期す一戦だ。そして続く4番人気はベテラン7歳
ダンスディレクター。
シルクロードS2連覇から軽い骨折でひと息入り、ここが再始動の一戦になる。
スタートはばらついて、人気の
ファインニードルも少々遅れ気味。しかし二の脚が非常に速く一気に先頭に立ち、そこから外の
フィドゥーシア、
ラヴァーズポイントの2頭を先に行かせるという、序盤から出入りのある展開になった。
メラグラーナや
ダンスディレクターは、中団~後方からの末脚勝負だ。
スタート直後の1ハロンこそ12秒2だったが、2~3ハロンが10秒8、その後は11秒1の2連続。開幕週の絶好馬場で前半33秒8なら速いということもなく、先頭の
フィドゥーシア、そして内の3番手につけた
ファインニードルも楽な手応えで4コーナーを通過した。
そのまま2頭の一騎打ちになるかと思いきや、
フィドゥーシアは新潟の直線1000m戦を続けて使った影響もあったか、直線坂下でムチが入って失速。対して
ファインニードルは、
フィドゥーシアが止まった分もあろうが、そこから
鋭い脚を発揮して一気に突き抜けていった。
その
ファインニードルが抜けた後を追って
ラインミーティア、そして外からは
ダンスディレクターと、ちょっと恐ろしい(?)7歳牡馬2頭や、間から
メラグラーナあたりも追いかけてきたものの、
ファインニードルがそのまま1馬身4分の1差で押し切って優勝。唯一の4歳馬が中堅~ベテラン勢を抑え、
初の重賞タイトルを獲得したのだった。
ファインニードルの
父アドマイヤムーンは
ジャパンCなど2000m前後を中心に活躍したが、その
父エンドスウィープということもあってか、代表産駒は13年の
セントウルS優勝馬ハクサンムーンや、今年の
高松宮記念を制したセイウンコウセイと短距離型。そして比較的息の長い活躍を期待できるタイプでもある。
ファインニードル自身もこれまで条件戦での戦いが多く、前走が
シンザン記念以来となる約1年半ぶりの重賞挑戦で、ここで重賞初制覇と、じわじわ力をつけてきた印象だ。ハクサンムーンは惜しくもG1には手が届かなかったが、同じ4歳のセイウンコウセイともども、
今後しばらくはスプリント路線を引っ張っていくような存在になる可能性も十分。まずはそこへ向け、
スプリンターズSでの走りが楽しみだ。
一方、②着の
ラインミーティアは前走・
アイビスSDが7歳にして重賞初制覇、そして今回も②着。79年の
皐月賞馬ビンゴガルーや、88年の
桜花賞馬アラホウトクの近親で、母の母の父は
オグリキャップ。つい最近まで新潟千直専門のような条件馬だったが、また渋い活躍をし始めたものだ。この歳になってコーナーのあるコースにも活躍の場を広げ、さらに大きな舞台へと進んでいくのか、こちらの活躍にも期待したい。