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前走で負けていても、駿馬は駿馬だった
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


日本には『腐っても鯛』という言葉がある。本来優れたものは、少し悪くなってもその価値を失わない、というような意味だが、似たような言葉は英語にはあって、それが“A good horse becomes never a jade.”。すなわち、駿馬は駄馬にはならない、となるそうだ。

オールカマーは中山芝2200mという舞台設定で、同じ「右回り」「直線の急坂」「芝2200m」という点で共通する宝塚記念との関係性が深い。事実、中山で行われたオールカマーを振り返ると、前走で宝塚記念を使われていた馬が09年以降7回連続で馬券圏内に入っていた。

それは宝塚記念で好走した馬だけでなく、たとえば昨年のこのレースで②着に好走したサトノノブレスは前走の宝塚記念で10番人気⑧着。重賞4勝馬に失礼かもしれないが、宝塚記念で敗れたくらいで駿馬が駄馬になるわけではないということは、冒頭の言葉に繋がるような気がする。

そんな性格を持つレースだが、今年は宝塚記念を使われてきた馬が1頭もいない。最終的に1番人気ステファノスのオッズは3.8倍となったが、これはオールカマーがG2となった95年以降の1番人気馬のオッズとしては06年のエアシェイディ(4.0倍)に次いで高いものとなった。

これだけ人気が割れたということは、要するに予想する側も“さあ困ったぞ”となったわけだ。そして、“これは何かが起こりそう”と思った穴党の方も多かったのではないだろうか。

そして、“何かが起こりそう”という予感は、レースが始まっても続く。ハナに行くと思われたグランアルマダが押してもまったく行けず、代わってハナに立ったマイネルミラノが作ったペースは前半1000m通過が63秒1。台風一過の馬場となった先週のセントライト記念のそれが61秒8だから、いかに遅かったかが分かる。

直線を向くところでマイネルミラノが大きくリードをとったところでは、もう“何かが起こりそう”が確信に変わり、諦めるような期待するような、複雑な感情でレースを見ていたが、そこから様相が一変する。

内を突いたルージュバック、外を通ってきたステファノスが並ぶように差を詰めてきて、ルージュバックが先んじて抜け出し、迫るステファノスタンタアレグリアを抑えてゴール。結果的に5番人気以内の馬が馬券圏内を占める、ある程度順当な結果に落ち着いた。

ルージュバックはこれで重賞4勝目、ステファノスはG1で②着が3回、タンタアレグリアは2走前が昨年の天皇賞・春④着で、前走がこのコースのAJCCを制している馬だ。

今回のメンバー中、前走でG1を使われていた馬は3頭しかおらず、ルージュバックは前走のヴィクトリアマイルで2番人気ながら⑩着、ステファノス安田記念で4番人気⑦着。いずれも適性内かどうかは微妙なマイル戦ではあるが、前走でG1を使われていた馬が馬券圏内に入る結果に。この傾向は来年以降にも覚えておきたい。

それにしても、今回のルージュバックのレース内容には驚いた。これまでは揉まれ弱い馬というイメージで、「おトクな出馬表」にも示したように、12頭立て以上でひと桁馬番だと[0.0.0.6]という成績。それが17頭立てでの最内をこじ開けて差し切るとは……。

今回ルージュバックとコンビを組んだ北村宏騎手は、今回がテン乗りでの騎乗。以前ある騎手に聞いたことがあるが、テン乗りのメリットはその馬のことをあまり知らず、思い切ったレースをすることができることにもあるそうだ。今回、これまでにないレースぶりを見せたことは、先入観なく乗れたこともあるのだろう。一口クラブ所属ということで来年春に引退を控えているが、最後に大仕事ができるだろうか。

②着ステファノスは言わずとしれた叩き良化型だし、③着タンタアレグリアも順調に使えず、今回は直線でゴチャつく場面があっての好走。それぞれ別の路線に進む可能性もありそうだが、この3頭がG1タイトルに届く日が来てももはや驚きではなく、“駿馬がそれにふさわしい結果を残した”ということになりそうですね。