2ヵ月先のレースも楽しみに…まずは順調にその日を迎えてほしい
文/浅田知広、写真/森鷹史
登録馬を最初に見たときに思ったのは
「1.2倍かな」、もちろん
レイデオロの単勝オッズの話である。そこから
「次は間隔を開けてジャパンCらしいし、余裕残しの分もあるか」くらいには思ったが、それでも1.5倍程度かと思っていた。
ところがふたを開けてみれば、前日夜の段階で2.2倍というのだから驚きだ。これが当日も前後するあたりで推移し、最終オッズもその2.2倍。思ったよりも信頼されてないな、という印象を強く受けた。
もっとも、春はトライアルを使えなかったとはいえ
皐月賞で
⑤着に敗退。そして
ダービーも、この馬自身は鞍上の要求によく応えて強い勝ち方こそしたものの、着差だけを見れば4分の3馬身。歴代ダービー馬の中で、特に目立つ着差だったわけでもない。
加えて言えば、終いの3ハロンはその
ダービーでの33秒8が最速。上がりを要した中山での差し切りはあっても、後方から
爆発的な脚を繰り出して勝ったレースはないだけに、たとえば10年ローズキングダム
33秒3や、11年オルフェーヴル
32秒8(②着ウインバリアシオン
33秒2)くらいが要求されたらどうなのか、という
不安も残る。
レイデオロの
父キングカメハメハが勝った04年や、
母の父シンボリクリスエスの02年は現在の内回り2000mで行われていた時代。外回りで
サンデーの血を持たない馬が勝った例はないだけに、実績ではまったく見劣る
キセキや
サトノアーサーに、票が少なからず流れるのもわかる話だ。果たして、そのあたりの適性が結果に出るのか、それとも
レイデオロが
圧倒的な力の差を見せるのか。
ファンの目線は、ちょっと前者に寄ったかな、というオッズの出方になった。
そしてもうひとつ、
ダービーであの派手な動きを見せただけに、
レイデオロがどんな位置取りになるのか、というのもまた注目どころだった。ゲートが開くと好ダッシュで
アダムバローズが飛び出し、
ダンビュライトや
マイスタイルあたりが続いたのは、春の内容からも大方の予想通りだ。
しかし、その直後に
レイデオロ。
ダービーはハロン13秒3のあたりで上がっていったが、今回、後から見れば、もっとも遅かったのは最初の1ハロンで12秒9。まあ、断然人気の
レイデオロ自身が前にいたからそうなった面もあろうが、自在な競馬ができるのであれば、それがどこであろうと遅いところで前に出るのが正解だ。
対して、同じ「前」でも苦労したのが
サトノアーサーで、落ち着いた走りを見せる
レイデオロの後ろで終始掛かり加減。向正面半ばには落ち着かせたものの、その分、ここで
レイデオロ直後のポジションを失い、勝負どころでは4馬身ほどの差をつけられた。そしてもう1頭の人気馬
キセキは、ここ2戦と同じく後方追走となった。
レースが動いたのは3コーナー。普通なら「後ろから」というところだが、ここでレースを動かしたのは、これがまた最初から前にいた
レイデオロである。一気に前を捕らえに出るほどではなかったものの、軽く突っついておいた上、後続にも楽には差を詰めさせない、という形。その結果、4コーナーで再び
サトノアーサーが直後に迫ったときには
「いらっしゃい」とばかりに待ち構える態勢ができあがっていた。
こうなると、早めにレースを動かしていた分、極端な上がり勝負になることもなく、休み明けでよっぽど内面に問題でもないかぎりは
レイデオロの
確勝態勢だ。直線、早々にムチが入った
サトノアーサーに対し、
レイデオロは抜け出すタイミングをはかりつつの追い出しである。先に先頭に立った
ダンビュライトには
皐月賞で先着を許しているのだから、あまり余裕を持ちすぎるのもどうかと思ったが、難なくこれを交わして堂々先頭。そのまま押し切っての
完勝となった。
②着には、4コーナーから直線にかけて内で詰まり、スムーズな競馬ができなかった
キセキ。そして、直線入口の脚色のわりには渋太く伸びた
サトノアーサーが③着に入り、ここまでが
菊花賞の
優先出走権を獲得した。
ただ、その
菊花賞はパスして、
ジャパンCが秋の最大目標という、勝った
レイデオロ。今回の競馬を見ると、キタサンブラックの直後につけて真っ向勝負、などというかなり楽しみなレース展開も十分に想像できる。まだまだ2ヵ月も先の話だけに、まずは
レイデオロも古馬勢も、順調にその日を迎えてほしいものだ。
一方、
菊花賞へ向けてはやはり②着の
キセキが注目馬になるだろう。序盤やや掛かっていたのは気になるが、持っていかれるほどではなく後方待機。ただ、前に壁を作って内を進んだことが、逆に勝負所ではあだとなり、直線で一気に
レイデオロに襲いかかるような態勢を作れなかった。
菊花賞では、バテて下がってきた馬に引っかかることなくさばき切れれば、直線で優勝争いに加わってくるはずだ。