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降級を契機に一気に飛躍、G1馬3頭を従えて逃げ切り勝ち
文/浅田知広、写真/稲葉訓也


牡馬に比べ引退が早い牝馬とはいえ、特別登録の段階から17頭すべて5歳以下だった今年の府中牝馬S。調べてみると、6歳以上不在はどうやら、現在のレース名になった92年以来のようだ。この年は、ジャニス(4歳)→メジロカンムリ(3歳)→スプライトパッサー(5歳)と、各年齢から1頭ずつが馬券に絡み(当時③着の馬券対象は複勝だけ)、3→2→1番人気の順だった。

今年は92年と違って若い3歳馬の出走こそなかったが、その分、充実期を迎えた馬がずらりと揃った形だ。そんな中で1番人気に推されたのは、昨年のこの時期に秋華賞を制したヴィブロス。その後ドバイターフで世界に名を轟かせることになったが、今回はそれ以来のレースで1番人気でも3.2倍の評価にとどまった。

これに続くのが、同馬不在のヴィクトリアマイルを制したアドマイヤリードで3.6倍と、4歳勢が少し抜けて1~2番人気。続いてひと世代上から、昨年の優勝馬、そしてエリザベス女王杯まで制したクイーンズリングが6.1倍で3番人気と、G1馬3頭が上位人気。実績通りなら92年と同じく、1~3番人気決着もありそうな様相だ。

ただ、G1を勝っているがゆえに3頭揃って56キロを課せられる。牡馬相手の1600万を連勝してきたワンブレスアウェイ、マイペースで逃げられるとやっかいなクロコスミアなど、4番人気以下の各馬との斤量差は2キロ。この差が響く可能性もまた考えられた。

レースはやはりクロコスミアがハナを切る展開で、前半の800m通過は49秒5。回復途上の稍重で良好な馬場状態だけに、これはクロコスミアにとって願ってもない展開のようでもあり、あまりスローに落としすぎると実力馬に瞬発力負けする可能性もあり。その実力馬たちはヴィブロスが6番手、アドマイヤリードは後方待機、そしてクイーンズリングは少々の出遅れもあり、後方から3角過ぎに大外を回して動いていく形になった。

もちろん、この流れなら直線に向いてもクロコスミアの手応えは楽。残り400mを切って追い出されると、少しずつ後続との差を開いていった。一方の人気どころ、もっとも前にいたヴィブロスはラチ沿いで詰まり、外に出せたのは残り200mあたり。しかしこれはまだマシで、アドマイヤリードは後方集団で前が壁。こちらも大外に持ち出せたのは残り200m手前あたりだった。そして出遅れたクイーンズリングは、湿った馬場がそもそも得意ではないのも響いたか、どうにもじりっぽい脚しか繰り出せない。

最初の2キロ差に加え、G1馬がそれぞれ実力を出し切れない状況まで加われば、もうクロコスミアにはどうぞ逃げ切ってください、というおいしい競馬だ。最後はヴィブロスが意地を見せクビ差まで迫ってきたものの、余力を残して直線を迎えられた分、一気に交わされるような脚色でもなし。そのままヴィブロスアドマイヤリード、そしてクイーンズリングと、G1馬3頭を②~④着に従えて、鮮やかな逃げ切り勝ちとなった。

昨年のローズSでシンハライトとハナ差の②着など、重賞好走歴も多いクロコスミアだが、オープン・重賞はこれが初制覇。特にこの夏、1000万に降級してからは4戦3勝と、函館でのレコード勝ちを足がかりに一気に飛躍してきた印象だ。

これまで2000mを超える距離への出走はないが、2000mなら昨年の秋華賞では見せ場たっぷりの⑥着、そして前走の1600万は快勝している。さすがに中1週で牡馬相手の天皇賞(秋)という選択はないだろうが、エリザベス女王杯でも、マイペースの逃げから直線入口で貯金を作るような展開を作れれば、もちろんチャンスはあるだろう。道悪も苦にしないタイプだけに、雨が降れば可能性は高まってくる。

一方、敗れたG1馬3頭は、先にも触れたように、それぞれ敗因があっての②~④着。特にヴィブロスアドマイヤリードは、前が開いてからはしっかりとした脚を繰り出しており、ステップレースとしては悪くない。クイーンズリングも良馬場でゲートを互角に出られれば、こんなものでは終わらないはず。いずれにしても、この敗戦で評価を下げる必要はなさそうな3頭だ。