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充実ぶりを示す3連勝、この秋に一気にタイトルを増やす可能性も!?
文/吉田竜作(大阪スポーツ)、写真/森鷹史


樫の女王ソウルスターリングが早々に古馬中距離路線への転向を宣言。桜花賞馬レーヌミノルは秋初戦のローズSで⑨着と大敗。春とはまったく異なる情勢で牝馬3冠レースの最後の1冠・秋華賞を迎えることになった。

1番人気に推されたように、もっとも注目を集めたのはアエロリット。前走のクイーンSでは古馬相手に完封勝利。小回りコースでの逃げ切り勝ちは、本番の秋華賞の舞台にリンクする…そう評価されたのだろう。それまでのレースぶりを見ても「絶対にハナに行かないと」というタイプではないのだが、そこは機械ではない、生身のサラブレッドが走るレース。なかなか簡単にはいかないところがある。

第22回を迎えた秋華賞を引っ張ったのはアエロリットではなく、前哨戦のローズSで5ハロン通過58秒6という驚異的なハイペースで逃げたカワキタエンカアエロリットはやや折り合いを欠きながら2番手を追走することになった。競馬に「もし」は禁物というが、もしアエロリットがハナを切っていたら…勝つ馬がどれかは別として、また違うレースになっていたはずだ。

興味深いのはカワキタエンカ「逃げ」の味をしめさせたのが、アエロリットに騎乗した横山典だった、ということだろう。もともとスピードにあふれ、逃げるスタイルを取っていた同馬だったが、このローズSの走りはストレスなく…というよりは馬自身が気分よく走れたということなのだろう。

実際に「ペースとかは関係なく、この馬のリズムで走らせた」ローズSの後に語っていた名手。あの、ハイペースの逃げでそれまで眠っていたカワキタエンカのポテンシャルを最大限に引き出すと同時に、馬自身に逃げることでの“成功体験”を植えつけたのだった。

もちろん、この“成功体験”アエロリットクイーンSで感じていたはず。しかし、本番で先手を取られることで、微妙にその歯車が狂ってしまったのだろう。皮肉な表現になるが、横山典は騎乗した2頭に対して、分け隔てなく真摯に向き合い、それぞれの個性を引き出してきた。それも並大抵のものではない。それこそ、少女たちにとっては“初恋の人”を思わせる体験だったに違いない。忘れられない“逃げ”の味を覚えてしまった2頭の修羅場が、今年の秋華賞を染め上げたことは覚えておいてもらいたい。

そんな、乙女の修羅場を鮮やかに駆け抜けたのがディアドラ。スタートで後手を踏んで、後方からの追走。しかし、アツい乙女のせめぎ合いは5ハロン通過59秒1というハイペースを生み出した。

良馬場ならいざ知らず、この日は前日からたっぷりと雨を含んだ重馬場。「スタートをミスして自分自身に腹がたった」というルメールだったが、雨のおかげもあってすぐに冷静になれたのだろう。勝負どころの3コーナーで縦長の馬群のインに突っ込むと、躊躇なく加速。出遅れの分を“ショートカット”でカバーすると、直線半ばでは外へと進路を切り返す。あとは消耗戦で脚の上がりかけた2頭を交わすだけ。力強い末脚で先頭へと躍り出ると、念願の初G1のタイトルを手中に収めた。

ルメールの手綱さばきも冴え渡ったが、それよりも注目したいのがディアドラ自身の成長力だろう。オークスの後に3ヵ月の休みを挟み、8月の札幌で復帰。そこから3連勝で栄冠をつかんだわけだが、夏に466キロでスタートした馬体重は、この日のプラス12キロで490キロにまで増加。やや腹回りは立派に映ったが、春の詰めの甘さを完全に克服。増えた馬体はすべて競走能力に注がれたと見ていいだろう。このあたりはダービーを勝ちながら、古馬になってもさらにタイトル数を伸ばした母の父・スペシャルウィークの面影が感じられる。

「状態次第ですが、順調なら」(橋田調教師)の条件はつくが、次走はエリザベス女王杯を予定とのこと。今年はヴィブロスなど骨っぽい年長馬が相手となるが、充実ぶりだけなら間違いなくこちらが上。この秋に一気にタイトルを増やすことになっても不思議ではないだろう。同世代のライバル・ソウルスターリングの結果いかんでは、JRA賞さえ見えてくるのではないか。