雨降って地固まり、意義ある勝利になった
文/編集部(M)、写真/森鷹史
今春の
安田記念で1~2番人気に推されながら直線で前が詰まり、⑤着(
エアスピネル)と⑧着(
イスラボニータ)に敗れた2頭が巻き返して連対圏を確保した。
富士Sが
道悪馬場で行われたのは2011年(不良)以来2度目で、力を発揮しづらい馬場(不良)となったが、実力馬が
能力の高さを見せる結果になった。
今年の
富士Sは出走馬15頭中10頭が休み明け(中9週以上)で、中8週以内だったのは5頭。そのうち上位人気に推されたのは、
エアスピネル(中8週、1番人気)と
グランシルク(中5週、3番人気)の2頭だった。
富士Sは
マイルCSの前哨戦として復帰初戦にする馬が多いレースだが、①~③着を休み明け(中9週以上)の馬が独占したことは過去19回で一度もなく、そのうち17回では
中8週以内で1~5番人気に推された馬が馬券に絡んでいた。
それを考えれば
エアスピネルか
グランシルクを馬券の軸にするのが良かったのだろうが、ともに
左回りの芝1600mでは勝ったことがなく、
グランシルクは道悪芝が未勝利([0.2.2.1])で、
エアスピネルは斤量57kg以上で未勝利([0.0.2.4])でもあった。
結果はご存知の通り、
エアスピネルが2馬身差で快勝し、
グランシルクは⑨着に敗れたので、順調さに加えて
極悪馬場の巧拙の差が出た面もあるのだろうが、それでも
エアスピネルにとって
この勝利は大きいのではないかと思う。
本当に斤量泣きするタイプなのかどうかは分からないが、今回のレースで、ひとまず
斤量57kgを背負っての勝ち鞍をひとつ加えることになった。
左回りも不得手ではなかったのだろうが、4戦目にして初めて勝利を収めることになった(これまで左回りでは④③⑤着だった)。
もちろん
安田記念は左回りの東京競馬場で行われるし、
マイルCSでは古牡馬は斤量57kgを背負うので、実績面でふたつの項目をクリアした意義はあるだろう(安田記念では斤量58kgを背負うが)。
イスラボニータは今回が
安田記念以来、4ヶ月半ぶりの実戦だったが、
エアスピネルは8月20日の
札幌記念で一足早く復帰した。そこでは⑤着に敗れたものの、いろんな意味でこれが
ひとつのきっかけになったのではないだろうか。
札幌記念は大外枠(8枠13番)で、差し決着にもなったので、外から先行した
エアスピネルにとっては厳しい展開だったが、それでも敗れたことで
「やはりこの馬はマイル」と決断しやすくなっただろう。当然、夏に一度使われたことで、
富士Sまで間隔が大きく開くこともなくなった。鞍上も
札幌記念ではルメール騎手だったが、今回は2戦ぶりに
武豊騎手に戻り、そこできっちりと勝利を収めるのだから、さすがだった。
エアスピネルは道中で行きたがる面が見られた馬だが、そのようなタイプは
道悪馬場で下が緩いと慎重に走ることで折り合いが付きやすくなる。
エアスピネルは2歳時に雨で稍重馬場となった
デイリー杯2歳Sを3馬身半差で圧勝していて、今回も快勝したことで
道悪芝は2戦2勝となった。前述したように左回りや斤量57kgでの勝利実績も加えたから、まさに
「雨降って地固まる」となるのではないか。
今回は
札幌記念を挟んで中8週となっていた
エアスピネルだが、
マイルCSへ向けては他馬と似たような出走間隔となり、
イスラボニータのように休み明け2戦目で挑んでくる馬も複数いるから、
G1タイトルを手にするためには、この馬自身も調子を上げていく必要があるのだろう。
冒頭で、
富士Sが
道悪馬場で行われたのは2011年以来2度目であることを書いたが、その時の勝ち馬
エイシンアポロンは休み明けで
毎日王冠を走り、④着に敗れた後に距離短縮の臨戦で
富士Sを勝ち、そこから
マイルCSへ向かって連勝で
G1制覇を果たしている。
エイシンアポロンは
富士Sがマイナス体重(4kg減の500kg)だったが、
マイルCSは6kg増の506kgだった。
今回の
エアスピネルは4kg減の476kgで、実は
470kg台で連対圏に入ったのは初めてだった。以前の5連対は480~484kgで、
マイルCSでは体は戻っている方が良いのかもしれない。
ちなみに付け加えれば、
エイシンアポロンが
富士S、
マイルCSと連勝した2011年は、両レースがともに
道悪馬場だった(富士Sが不良、マイルCSが稍重)。
エアスピネルも道悪が鬼であることは明白となったので、レース本番で
降雨となれば恵みの雨となりそうだが……。
②着に敗れた
イスラボニータは大外枠(8枠15番)で、唯一斤量58kgを背負っていたから、今回は
負けて強しの内容だった。この馬は58kgでの勝利実績がないので、
マイルCSが57kgで戦えるのは好材料だろう。
2~3歳時に6勝を挙げながら、古馬になってからは勝ち星に恵まれていなかったが、今春に久々の勝利を飾ったのが
京都芝外1600mの
マイラーズCだった。
過去2度の
マイルCSでは、0秒2差③着(2015年)、0秒0差②着(2016年)と惜敗が続いていて、
3度目の正直となるだろうか。
イスラボニータは過去7勝を良馬場で挙げていて、こちらは
きれいな馬場で走りたいところだろう。