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今度はぜひとも良馬場のG1で真価発揮を!
文/出川塁、写真/森鷹史


この週末に降り続いた雨の影響で、4年ぶりに不良馬場となった菊花賞。その4年前、エピファネイアの勝ち時計は3分5秒2。ところが今年は、それより13秒以上も遅い3分18秒9の決着となった。

これに近い数字を探すと、あの名牝クリフジが勝った43年の3分19秒6なんてことになるのだから、比較の対象はもはや歴史上の出来事になってしまう。遠からず平成の世も終わろうかという時期に、異次元の馬場が突如として出現したのだった。そんなレースを制したのがキセキという名を持つ馬だったのは、なんだか出来すぎで嘘くさく感じるほどだが、そういうことが得てして起きるが競馬だ。

しかし、ゴール板を駆け抜けた直後のキセキは足取りが乱れて、などはすわ故障かと心配になったほどだった。本稿執筆時点で脚元に関する報道がないのはなによりだが、この馬場で3000mの長丁場を駆け抜けた消耗の大きさは想像に難くない。この秋にはまだビッグレースも残っているとはいえ、まずはしっかりと疲れを癒やして欲しいと思う。

それにしても、ものすごい競馬だった。出走各馬がスタート直後から馬場の荒れたインコースを空けて走るのは、前日からずっと見られた光景。ただし、行った行ったの決着になることもあれば、差しが決まるレースもあり、脚質の有利不利は一概にはいえない。しかも、菊花賞は年間を通じても数少ない3000m戦。どういうレース運びをした馬に展開が向くのか、読み切るのは難しい状況だった。

結果からいえば、先行した馬には圧倒的に不利な展開となった。序盤から前に行った馬は、4コーナーを前に全滅。2周目の2コーナーの通過順が6番手まで馬は、前にいた馬から順番に下の着順に入ることになる。途中からレースを先導したマイスタイルに至っては大差の⑱着に沈んだ。前半でちょっとでも脚を使うと消耗が倍増し、とても3000mは走りきれない。そんな馬場だったのだろう。

そうして撤退した先行勢の外から、中団でジッと脚を溜めていた馬たちが浮上してくる。まず動いたのがダンビュライトで、直後にクリンチャーも押し上げてくる。人気のアルアインミッキースワローが続き、さらに後ろからキセキミルコ・デムーロ騎手の叱咤に応えて追い上げ態勢に入っていく。

4コーナーを回ったところで先頭に立ったのはダンビュライト。これをクリンチャーが競り落として先頭に立つと、さらに外の2頭、ミッキースワローキセキの脚色がよく見える。もっとも、ミッキースワロークリンチャーに並びかけたところでアゴが上がり、むしろ下がっていく。結局、出走馬で唯一「39秒台の脚」を使ったキセキだけが最後までよく伸びて、クラシックホースの仲間入りを果たした。

キセキにこそ差されたものの、クリンチャーの頑張りも見事だった。上位入線馬ではいちばんロスのない競馬をしたポポカテペトルの急襲をハナ差で堪えて②着をキープした。上位入線馬と同じような位置にいながら直線で伸び脚を欠いたのが、⑥着のミッキースワローと⑦着のアルアイン。良馬場なら話は違ってくるのだろうが、この馬場で3000mとなると最後はガス欠になってしまったようだ。

結果論を承知でいえば、⑤着のダンビュライトは仕掛けが早かったか。3コーナーで3番手以内にいた馬ではこの馬だけが掲示板に踏ん張っている。先行勢があそこまで早く壊滅したことが予想外だったのかもしれないが、もうすこし仕掛けを遅らせればルーラーシップ産駒のワンツーも不可能ではなかったかもしれない。

そのルーラーシップは、これが産駒の重賞初制覇。また、母の父としてのディープインパクトにとっても重賞初制覇となった。関係者にとって嬉しくないわけはないだろうが、複雑な面もあるかもしれない。長距離G1を勝っても繁殖としての価値は上がらないのが最近の定説で、しかもこの特殊な馬場。再現性があるかといえば、微妙といわざるをえない。

もちろん、2走前の2000m戦を1分56秒9の高速タイムと32秒9の高速上がりで制しているのだから、キセキは決してスピードのない馬ではない。この力を授けてくれた父や母の父のためにも、今度は良馬場のG1で真価を見せたいところだろう。