大外枠を克服した“出世レース”の価値は大きい
文/編集部(T)、写真/森鷹史
例年のことではあるが、今年の
みやこSは
JBC3レースの2日後に行われた。
JBCスプリント(
エスポワールシチーや
コパノリッキーの例はあるが)はともかく、
JBCレディスクラシック、
JBCクラシックは
みやこSと路線的に被る面が大きく、メンバーの
“食い合い”が起こる……かと思いきや、実はそうでもない。
というのも、過去7回の
みやこSを振り返ると、勝ち馬7頭のうち6頭が4歳馬(例外は6歳で制した11年
エスポワールシチー)。10年
トランセンド、12年
ローマンレジェンド、昨年の
アポロケンタッキーと、
4歳でここを勝って後にG1(Jpn1)を制した馬が多く出ている、いわゆる
“出世レース”となっているから。
実績のあるベテラン勢は
JBCへ、ここから伸びていこうとする若手は
みやこSへ。見事に
棲み分けができている。レース創設当初は存在意義を疑問にさえ思っていたが、今考えてみると番組編成の上手さに脱帽するしかないだろう。
そういう性格のレースではあるが、
今年は4歳馬の出走がゼロ。そうなると、レースの性格上、さらに若い3歳の
エピカリスが1番人気、2番人気に5歳ながら今年に入って急速に力を付けた
テイエムジンソクが推されたのは、流れとしては正しいものだったはずだ。
そして、レースを制したのは
テイエムジンソクの方だった。重賞初挑戦となった前走の
エルムSは仕掛けを直線まで待った感じで
ロンドンタウンの差し切りを許したが、今回は
早めの競馬で4コーナーから一気に先頭に立ち、そのまま後続を突き放して2馬身半差の快勝。前走の敗戦を
古川騎手が糧にした、見事な騎乗ぶりだった。
今回、
テイエムジンソクはあるひとつの傾向を突き崩しての勝利となった。それは
8枠16番という大外枠。というのも、京都でダート重賞が行われるようになった95年以降、
これまで大外枠の馬は[0.0.3.46]だったのだ。
これが10回程度しかない例であれば、
「たまたまでは?」という説も成り立つかもしれないが、50回近くのサンプルがあってこの傾向ということは、やはり
大外枠は不利ということだろう。それでも勝ったということは、それ相応の力の証明にもなるはずだ。
クロフネ産駒は、これがJRAのダート重賞で2勝目となった。ダートであれだけの強さを示した馬の産駒としては意外だが、もう1勝は今回も出走していた
マイネルクロップ(
15年マーチS)で、その時も
8枠16番だった。それを含め、クロフネ産駒はJRAのダート重賞で馬番16番だと[2.0.0.2]。
「クロフネ産駒はダートで大外枠だと買い!?」……これは単なる仮説ですね。
テイエムジンソクはこれで
準OPを勝った5走前以降が①①①②①着で、一気に重賞まで獲った。先行してなかなか勝ちきれないレースが続いていた馬としては、見違えるような大出世だ。
今年は
みやこSに出走したが、来年の今ごろは
JBCに……と思ったら、来年は
JBCが京都開催のため、
みやこSが休止でした(笑)。いずれにしても、ここまで見せてきた先行力を考えると、地方交流重賞では堂々たる主役を演じることができそうだ。
テイエムジンソクがここからどこに向かうかはまだ不透明だが、
チャンピオンズCだとしたら、
サウンドトゥルー、
アウォーディー、
コパノリッキーなどの
JBC組との争いになりそう。未経験の左回り、しかも近5走がすべて直線平坦コースで、坂のあるコースでの実績に乏しい
テイエムジンソクは、そんな中に入ると少し評価を下げる形になるだろうか。
ただ、第1回
みやこS勝ち馬は、ここと
ジャパンCダート(当時)を逃げ切りで連勝した
トランセンド。
テイエムジンソクも、簡単に軽視すると痛い目に遭うかもしれない。
一方、1番人気に推されながら⑧着に敗れたのが
エピカリス。勝負所でマクリ気味に進出し、直線で一旦3番手に上がったが、そこから伸び切れなかった。
ベルモントSを出走取消になってからリズムを崩している感があるが、ここから再び軌道に乗れるか、ひとつの正念場を迎えているのがこの馬だろう。とはいえまだ3歳。挽回のチャンスはまだまだあるはずだ。