新星は誕生、さてG1の穴馬は!?
文/出川塁、写真/森鷹史
朝日杯FSが阪神に移設された14年以降、
デイリー杯2歳Sは11月開催となり、
牡牝の2歳G1へのプレップレースとしての色合いがさらに濃くなった。
もっとも、過去3年の勝ち馬では15年のエアスピネルの
朝日杯FS②着が最高で、現行の日程となってからは2歳王者や女王を送り出していない。むしろ、14年④着のアルマワイオリが
朝日杯FSで14番人気②着、16年②着のボンセルヴィーソも
朝日杯FSで12番人気③着と、
デイリー杯組が過去3年で2回も穴をあけた事実に目を奪われる。
新星の誕生を心待ちにしつつも、
G1の穴馬を見つけられないかというスケベ根性も秘めながら、レースの成り行きを見つめていた。
1番人気に推されたのは、
新潟2歳SでG3のタイトルを獲得済みの
フロンティア。最近の
新潟2歳S勝ち馬は暮れのG1に直行することが多くなっているが、この馬は貪欲にG2のタイトルも狙いに来た。所属する
中内田充正厩舎は、この馬で
新潟2歳Sを勝ったほか、
サウジアラビアRC(ダノンプレミアム)、
ファンタジーS(ベルーガ)と、今年の2歳重賞で
3戦3勝という驚異的な成績を残しており、これも人気を後押しする材料のひとつとなったかもしれない。
次いで単勝オッズが10倍以下に収まった2~5番人気の4頭は、いずれも1勝馬。このなかでは2番人気の
メガリージョンのみが
未勝利戦を勝ち上がっており、
ケイアイノーテック、
カツジ、
ジャンダルムの3頭は新馬戦を勝ったばかり。6番人気の
ロードイヒラニになると単勝36.2倍までオッズが離れるので、事実上の5強体制といっていい構図となった。
ゲートが開いてまず先行したのは
カクリョウ。その外から
メガリージョンが並びかけ、2頭でレースを引っ張るかたちになるかと思いきや、
メガリージョンに異変が起こる。首を上げるような仕草を見せてズルズルと後退してしまい、3コーナーで競走を中止。レース後、右第1趾骨粉砕骨折により予後不良となったことが明らかになった。目をそらしてはならない競馬の一面ではあるが、わずか3戦の蹄跡は無念に違いない。ただただ冥福を祈りたい。
単騎の逃げとなった
カクリョウの600m通過は35秒7。離れた2番手に
カツジがつける。3番手に
フロンティアと
ケイアイノーテックが並走し、その後ろのインの5番手に
ジャンダルムが続く。人気どころの4頭があまり離れずに4コーナーを回り、レースは最後の直線勝負となった。
逃げた
カクリョウを、残り300mほどで捕まえにかかったのが
カツジ。ただし、本格的に追い出されても弾けるといったわけでもなく、手応えのわりに伸び脚はジリジリとしている。それは外の
フロンティアも同様だ。そうこうしているうちにインコースを抜けてきた
ジャンダルムが一気に加速し、カツジをかわして先頭でゴールイン。2戦2勝の重賞勝ち馬となった。
ジャンダルムにかわされたあと、
カツジは外に逃げる若さを見せて
松山弘平騎手が追いづらそうにしていたものの、②着は確保。最後に脚を伸ばした
ケイアイノーテックが③着に上がり、1番人気の
フロンティアは④着に終わった。
勝った
ジャンダルムは、騎乗予定だった
武豊騎手が調教中に負傷し、急遽
アンドレア・アッゼニ騎手に乗り替わることになったのだが、それを物ともせずに勝利した。キャリア1戦ながら直線でインコースを抜けてきたあたりを見ても、精神的にしっかりとした馬なのだろう。
その後、次走では
武豊騎手に手綱が戻り、今年からG1に昇格した
ホープフルSを目指すことが
池江泰寿調教師から発表された。名スプリンターの
ビリーヴを母に持つ血統を考えても、同距離の
朝日杯FSを目指すものかと思ったのだが、来年のクラシック戦線を見据えて2000mの距離を経験させておこうということか。
そして、冒頭に述べた
2歳G1に向けての穴馬という意味では、
フロンティアに注目してみたい。昨年のボンセルヴィーソと同じ
ダイワメジャー産駒で、道中3番手から④着という結果は14年のアルマワイオリと重なる。道中、
メガリージョンが下がってきた場面で多少の
不利もあったようで、このことが最後の伸び脚にも影響したかもしれない。
朝日杯FSでは人気も落ちそうだが、巻き返しに期待する価値はあると思う。