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これからも牝馬戦線のトップを張り続けるはず
文/鈴木正(スポーツニッポン)、写真/森鷹史


モズカッチャンって、何でか分からないですけどアタマで買いにくいんですよ。もしかすると馬名かなあ。カッチャンって、タッチ(漫画)の双子の弟か、勝俣州和かって感じ(芸能界のカッチャン、失礼!)でしょ? なかなか牝馬のレースでモズカッチャンからって、人に言いにくいんですよ」

我が社の競馬大好き内勤後輩のセリフである。多分におかしな思い込みが混じり(苦笑)、オーナーサイドには申し訳ないのだが、実はこのモズカッチャン、これほどの馬なのにデビューから1番人気になったことがないのだ。馬名に幻惑されてオッズがお買い得になる? そう思うとエリザベス女王杯の5番人気、単勝7.7倍がやけにおいしく見えてきた。後輩君のセリフが今さら頭をよぎっても後の祭りだ。

いきなり脱線したので立て直す。クロコスミアが行こうとしたが最内枠からクインズミラーグロが主張しての逃げ。ただ、1000m通過は62秒0。この時点で勝ち馬候補はある程度ふるいにかけられた。出遅れて後方から2番手のディアドラは相当に苦しくなった。ルージュバックはこの時点で12番手。これも厳しい。

直線を向いた。先頭に立つクロコスミア。勢いがいい。勝つのか。外からヴィブロス。だが前脚がグッと前に出てこない。脚色が同じになってしまった。大外から凄い勢いで伸びたのはミッキークイーンだ。そういえばパドックは素晴らしかった。特に毛ヅヤと腹回り。宝塚記念の時よりトモの筋肉がほんのわずかに落ちた程度。その分の6キロ減だろうが、それでも牝馬限定なら勝てるかも…。そんなことを思っていたミッキークイーン。だが、その勢いは残り100まで。代わってグッとひと押しあったのは…。モズカッチャンだった。

モズカッチャンのパドックはミッキークイーンの上を行っていた。黒光りしつつ、いかにも柔らかそうな馬体。この肌に頬を寄せて眠ったら気持ち良さそうだとまで想像した。トモには丸々と筋肉がついている。しかも、人間でいえばジムで短時間にて鍛え上げたそれでなく、じっくりと負荷をかけて、いい食事もして、いい睡眠を取って、その末に熟成させたような筋肉だ。この表現で果たして伝わっているのかまったく自信がないが、とにかくよだれが出そうなボディーだったのだ。

その熟成パワーが最後に爆発する。クロコスミアヴィブロスも、ミッキークイーンですらきつくなった、G1のラスト100mでこれだけ噴き上がったのはパーフェクトボディーのなせる業。クビ差先着。モズカッチャンがついにG1を手にした。

さて、その後輩君はどうだったかといえば…。これが「取りました!」と言うではないか。「だってミルコクイーンズリングでなくモズカッチャンを選んだんですから。評価しているんだと思いましたよ。馬名が買いにくい? そんなこと言いましたっけ? 僕」

あのなあ…。そして、誰がどの馬に乗るかは、もっと深いいろいろな、あーやこーやあってさあ…と説明したかったが、彼の笑顔を見たら野暮な業界の解説などいらないと思った。彼は彼なりの理論で馬券を仕留め、自らが唱えていたオトボケ理論を捨て去ったのだ。お見事である。

さて、そのモズカッチャン。これだけのボディーを擁してナンバーワン決定戦を制した以上、本物である。③着に終わった秋華賞。勝負どころでいち早く動いたことは決して無駄にはならなかった。以前にも書いたが、努力は次回につながるのが競馬である。これからも牝馬戦線のトップを張り続けることは間違いないはず。

②着クロコスミア。前述の通り、一瞬勝ったかと思わせた。ペースが向いた(引き寄せた)ことは確かだが、ついにG1好勝負ゾーンへと足を踏み入れた。代打の和田騎手、見事だ。最近は菊花賞③着のポポカテペトルやローズSのラビットランなど要所でのいい働きが目立つ。日頃から相当に鍛えているようだし、若手にとってこれ以上のお手本はないように思う。

ミッキークイーンの末脚もさすがだった。惜しむらくは道中のゆったりした流れ。あれがせめて平均ペースなら残り100mも伸び切ったのだろう。これも競馬だ。