今年は実績が勢いを凌駕する結果になった
文/編集部(T)、写真/森鷹史
京阪杯が11月末の京都芝1200mという条件になって今年で12年目。
スプリンターズSから2ヵ月後、翌年の
高松宮記念は4ヵ月後という時期で、トップクラスのスプリンターは12月の
香港スプリントに回ることが多く、いわゆる
“谷間のG3”ではある。
ただ、
京阪杯の価値は別のところにもある。というのも、昨年の
ネロから遡っていくと、2010年以降の勝ち馬7頭はいずれも
京阪杯で重賞初制覇を飾った馬。
ロードカナロア(11年)、
ハクサンムーン(12年)という、後のG1戦線でも活躍した馬もここで初めて重賞制覇を飾っていた。別定重賞だが、このレースで
“実績”が“勢い”を上回ることはそれだけ難しいのだろう。
そこで今回の出走メンバーを見渡すと、重賞未勝利なのは
ラインスピリット、
アルマワイオリ、
ヒルノデイバロー、
ビップライブリー、
ナリタスターワン、
フィドゥーシア、
ダイシンサンダー、
タマモブリリアン、
イッテツ、
アットザシーサイドだった。
一方、今年の
高松宮記念を制した
セイウンコウセイが実績最右翼だが、同馬は近2走で⑪⑭着と崩れており、今回は5番人気にとどまった。昨年の覇者
ネロに至ってはそれ以降が⑪⑩⑧⑯④着という成績で、
今回は斤量58kg(昨年は57kg)もあって9番人気の評価となった。
ところが。今回
ネロに騎乗した
吉原寛人騎手は、
何が何でもという感じで押して先頭へ。直線手前では外から来た
フィドゥーシアに比べると手応えが見劣る感じで、早くもムチが入ったが、そこから粘り腰を発揮して重賞未勝利馬の②着
ビップライブリー、③着
イッテツ以下の追撃を振り切って連覇を達成した。
VTRを見直すと、
吉原寛人騎手の騎乗は
これがJRA重賞初制覇とは思えないほどの見事なものだった。スタート直後の
ネロは1番人気の
ソルヴェイグなどに比べると出脚が鈍かったが、そこから
気迫でハナヘ。それだけ押して行ったことで共倒れを懸念した他馬が控え、結果的にこの逃げ切りに繋がった印象を受ける。さらに58kgを考えてか、早め早めの競馬をした騎乗ぶりも見事だった。
ネロにとってみても、4コーナーで早めに来られ、展開面も決して楽ではなかったはずだが、そんな中を押し切ったのだから、クビ差でも完勝と言っていい内容だろう。②着から⑥着までを重賞未勝利馬が占め、そのあたりは
京阪杯らしい結果となったが、
ネロの強さはそういった傾向を凌駕するものだったといえそうだ。
ところで、昨年の
「レースインプレッション」で書いたように、
ネロは祖母が
デュプリシトで、
ニシノフラワーの近親にあたる。
ニシノフラワーは芝1200mが[2.0.1.0]で、3歳時に
ヤマニンゼファー、
ダイタクヘリオス、
サクラバクシンオーなどを下して
スプリンターズSを制している。
昨年の時点では芝1200mの実績のみに目を向けていたが、考えてみると、当時の
スプリンターズSは
有馬記念の前週で、12月開催。そこで
ネロの成績を振り返ってみると、
11~12月の芝が[5.0.1.2]で、15年以降は4連勝中。
ニシノフラワーは11~12月が[3.0.2.1]だったから、
今の時期を得意にしている面でもよく似ていた。
2年続けて
「血は争えないなあ……」という感想を抱くことになるとは思ってもいなかったが(笑)、
ネロにとって、
スプリンターズSの開催時期が移ったことは非常に残念なことなのかもしれない。昨年は
京阪杯の次走が翌年2月の
シルクロードSだったが、12月中の出走となれば……注目してみる価値があるかも!?