時計面ではないアルバートの素晴らしさ
文/編集部(M)、写真/森鷹史
ステイヤーズSとしては2003年以来となる10頭立てで、レースとしては
アルバートの3連覇が達成されるかどうかが注目されたわけだが、馬券的には
3番目の評価、つまり③着に何が来るか?を考えることがポイントだったように思う。実績的には
アルバートと
フェイムゲームが抜け過ぎていて、印を打つ人の9割以上が◎と○がこの2頭だったのではないだろうか。
3番目の評価は、実績的には、昨年のステイヤーズSで④着となった
プレストウィックだったのだろうが(実際にこの馬が3番人気だった)、同馬は
ダイワメジャー産駒で、
JRA平地最長距離のレースには相応しくないように感じられた。そこで、芝2400~2600mの近3走で②⑥②着と頑張っていた
シルクドリーマーを▲にしたのだが、結果は⑦着に敗れてしまった……。
シルクドリーマーは今回が約4ヵ月ぶりで16kg増(490kg)だったので、体調がもうひとつだったのかもしれず、それに加えて序盤からやや行きたがる感じになり、スタミナをロスしていた。
ご存知のように
ステイヤーズSは1800mコースを2周するレースで、コーナーを8回まわる。コーナーを回る度に行きたがっていた
シルクドリーマーを見て、かつては芝1400mや芝1600mを主に走っていた馬で、
「コーナーを2回まわったらゴールがやってくる!」と思っても仕方ないよなあ……と思ってしまった。
それを考えると、
ステイヤーズS3連覇という偉業を成し遂げた
アルバートは、本当に
よく訓練されているのだと思う。スタートしてから隊列を崩さず走り、騎手からゴーサインが出るまでは他馬の後ろで周回を重ね、気持ちを切らさずに走って、ゴーサインが出たら全速力で他馬を抜き去るのだから、
肉体面のスタミナももちろんだが、
精神面のスタミナも素晴らしいのだろう。
アルバートは昨年も一昨年も1番人気に推されていたが、一昨年の2番人気はメイショウカドマツ、3番人気はファタモルガーナで、昨年も2番人気がモンドインテロ、3番人気がファタモルガーナで、いずれも
重賞未勝利馬だった。それらと比べれば、今年の2番人気・
フェイムゲームは長距離実績が十分で、相手にとって不足ない存在だったろう。
しかも、
内枠に入ったのは
フェイムゲーム(2枠2番)の方で、
アルバートは8枠9番だった。過去2年の
アルバートは1枠2番と3枠3番だったので、近2年とは少々違うかと思われたが、まったく問題にしなかった。
グランアルマダと
シルクドリーマーが前2年よりも速いペースで引っ張り、隊列が縦長になって、
アルバートは距離ロスなく走れたことも良かったのだろう。
今年の勝ち時計は3分43秒0で、これは昨年(3分47秒4)や一昨年(3分45秒9)よりも2秒以上速かったが、長距離戦のタイムは
ペースによるところが大きいので、これは実力を示す物差しにはなり得ないだろう。それよりも、長距離馬は
どんなペースであっても崩れず走れることを称賛すべきだろう。3600mというレースの中で、きちんとONとOFFを使い分けて走れているところが素晴らしい。
アルバートはこれで芝3000m以上のレースが6戦4勝となった。4勝の内訳は、
ステイヤーズS3連覇と
ダイヤモンドSで、敗れた2戦はどちらも
天皇賞・春だ(16年⑥着、17年⑤着)。
来年(2018年)の目標は決まったも同然だろう。
過去2回の
天皇賞・春の勝ち馬は
キタサンブラックで、ご存知の通り、今年は3分12秒5というレコード決着になった。さすがにあのような時計だと
アルバートは厳しくなるのだろうが、
キタサンブラックは年内での現役引退が発表されていて、来年の
天皇賞・春には出走しない。今年のようなスタミナとスピードの極限値を競うようなレースではなく、精神面のスタミナを問われるようなレースになれば
アルバートに出番があっても良さそうで、そのような展開を望みたいところだろう。
ちなみに、今年の天皇賞・春での
アルバートはダイヤモンドS以来、2ヵ月ぶり(中9週)で、一昨年は休み明け2戦目(中4週)だったが、今回の
ステイヤーズSを含めて重賞は
中2~7週時に挙げている。来年の天皇賞・春にはどのようなローテーションで臨んでくるか、ということについても注目を集めそうだ。