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「必然」と思わされる差し切りには様々な思いも…
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/森鷹史


アポロケンタッキーが出走を取り消したものの出走馬すべてが重賞ウイナー(統一重賞を含む)で、そのうち7頭がG1馬という豪華メンバーで行われたチャンピオンズC。単勝オッズは上位5頭が10倍を切り、これまでG1を10勝しているコパノリッキーですら9番人気13.2倍という大混戦になった。

レースはそのコパノリッキーが1番枠を活かして1コーナーで先頭に立つ。10勝で並んでいるホッコータルマエを抜いて統一G1最多勝利記録を更新することに意欲を燃やしていた陣営は、これまで⑫⑦⑬着と成績が出ていなかった4度目のチャンピオンズC挑戦へ向けてローテーションを変えてきた。

過去3回はJBCクラシックからだったが、今回はJBCスプリントを前哨戦に選び、年齢的にややズブさが出てきていた同馬にスピード意識を植え付けた。その作戦は見事に成功し、2ハロン目に10秒9と11秒を切るラップになったものの、その後3ハロンは12秒5~12秒7と落ち着いたマイペースでの逃げに持ち込んだ。

このコパノリッキーの逃げを2番手で徹底的にマークしたのが1番人気に推されたテイエムジンソク。重賞勝ちは前走のみやこSが初勝利だったが、この5戦で4勝②着1回と勢いがある。実績ではコパノリッキーアウォーディーサウンドトゥルーの7歳馬3頭に見劣るものの、チャンピオンズCは過去17回で1度も7歳以上馬が優勝したことがないというデータも人気を後押しした。騎乗する古川吉洋騎手にとっては、アインブライドで制した97年阪神3歳牝馬S以来、20年ぶりG1制覇の絶好機だった。

1000m通過は61秒6の平均ペースで、他馬に絡まれることなく楽に逃げ・先行に持ち込んだコパノリッキーテイエムジンソクにとっては絶好の展開。直線を向いても2頭の脚は衰えることなく、ゴール50m手前でコパノリッキーを競り落としたテイエムジンソクのG1初制覇は目の前だった。だが大外から突然飛んできたゴールドドリームが、ゴール直前で2頭を一気に交わしてゴールに飛び込んだ。完全な前残りのレース展開の中、後方から1頭だけ別次元の脚だった。

4歳馬ゴールドドリームは今年のフェブラリーS覇者。その後はドバイ遠征の疲れなどから成績不振に陥っていたが、復調すればこのような脚を使っても不思議ではないのだが、レースを見ていたファンからすれば「飛んできた」のはゴールドドリームではなく、ライアン・ムーア騎手だったという印象ばかりが残ったかもしれない。

直線を向いた時点ではまだ後方の内寄りに位置していたゴールドドリームを、何のロスもなく大外まで持ち出して、その豪快なアクションで追うと一完歩ごとに前との差を詰めていく。そしてゴール直前にきっちりと差し切ってしまうだから、同馬にはテン乗りながらムーアの計算し尽くされた騎乗ぶりが目立ってしまったのも仕方がないことだろう。飛んできたのは「突然」ではなく「必然」だったと思わされる。

ムーアの実績についてはいまさら振り返るまでもないが、先週土曜の東京では1日6勝。ジャパンCのアイダホは⑤着だったが、今週も前日のステイヤーズSをアルバートで3連覇するなど2勝、この日も中京で2勝と勝ちまくっている。

勝ちまくっているのはムーアだけではない。今年のJRA平地G1はチャンピオンズCが20戦目だったが、外国人騎手は12勝。秋シーズンのG1に限れば8戦7勝という圧倒的な成績となっている。今年G1・6勝を挙げているM.デムーロは珍しくチャンピオンズCに騎乗馬がいなかったが、この日は阪神で4勝②着1回

G1・4勝のルメールは今年すでにJRA183勝でリーディングを独走しており、200勝にも手が届く勢い。「外国人騎手は良い馬ばかりに騎乗している」という意見もあるが、G1・12勝のうち1番人気だったのは3頭だけだった。大相撲界の「モンゴル旋風」を凌ぐような外国人騎手の嵐が吹き荒れている。

そのことを考えれば、ムーアが騎乗した春のダート王者ゴールドドリームが単勝13.0倍の8番人気というのは、あまりにも人気が低すぎたのかもしれない。一昨年からJRA所属となったM.デムーロルメールに加えて、短期免許などでムーアボウマンC.デムーロら世界的な名ジョッキーの騎乗を日本競馬で見られることは嬉しいが、C.デムーロも今後はJRA所属を検討していると聞くだけに、今後のJRA騎手界はどうなってしまうのか心配になるし、騎手育成方法の大改革が必要なのではないかなど、様々なことを考えされられたジャパン・オータムインターナショナルの最終戦だった。