今後の活躍は約束されたようなものといっても過言ではない
文/出川塁、写真/佐々木光
今年の
カペラSで血統的な観点から興味深かったのが、人気馬3頭の父だ。最終的に単勝オッズが10倍を切った4頭のうち、1番人気の
ブルミラコロが
父キンシャサノキセキ、3番人気の
サイタスリーレッドが
父ダノンシャンティ、4番人気の
ディオスコリダーが
父カネヒキリと、2番人気の
ブルドッグボスを除く3頭は、いずれも
フジキセキの後継種牡馬を父に持っていたのだ。
代理戦争の様相を呈したこのレースを制したのは
ディオスコリダー。2014年の産駒デビュー以来、中央の芝でいまだに勝ち鞍がない
カネヒキリを父に持つこの馬が、重賞初制覇を飾った。一方、芝もダートもこなす
キンシャサノキセキ産駒の
ブルミラコロは
⑩着、芝寄りの傾向がある
ダノンシャンティ産駒の
サイタスリーレッドは
⑮着に大敗した。ダート専門の
カネヒキリにとっては負けられない舞台ではあり、まさに
餅は餅屋という結果となった。
大外16番枠から好スタートを決めた
ディオスコリダーは一旦控えて、道中は枠なりで中団の外につける。4コーナーの手応えは十分で、馬群の外をスーッと上がって直線を向く。残り200mで2番手の
ナンチンノン、そして逃げ粘る
ドラゴンゲートを捕まえ、最後は古豪
スノードラゴンの追い上げも抑えて、先頭ゴール。2008年の新設以来、
カペラSを制した初めての3歳馬となった。
この
ディオスコリダーは
ダート1200mのスペシャリストといえる存在で、昨年6月の
新馬戦以来、国内のダート1200mで
[5.0.2.0]と馬券圏内を外したことがない。今年の春にはドバイ遠征を敢行し、
マハブ・アル・シマール(G3)と
ドバイゴールデンシャヒーン(G1)に出走。3歳3月という早い時期の海外遠征、日本とは異なる質のダート、しかも古馬相手のレースという条件はさすがに厳しく、結果は出せなかった。それでも、この果敢な挑戦が地力アップにつながったのは間違いないところだろう。
また、古豪が幅を利かせるダート路線では、3歳馬による重賞勝利そのものが快挙といえる。中央競馬では
15年武蔵野Sのノンコノユメ以来のこと。
JCダートを制した
クロフネや父の
カネヒキリは別格としても、3歳で中央のダート重賞を制した馬には、のちにG1を勝つワンダーアキュートやサンライズバッカスなど錚々たる顔ぶれが並ぶ。
今後の活躍は約束されたようなものといっても過言ではない。
惜しむらくは、現在でもダートの短距離路線はあまり整備が進んでいないことだ。地方交流重賞を含めても7レースしかなく、うちひとつは2歳牝馬限定の
エーデルワイス賞。また、古馬が出走できる6レースのうち、G1の
JBCスプリントとG2の
東京盃を除く4レースはG3だから、すこし活躍するとすぐに斤量との戦いが待ち受けている。
ダート1200mのスペシャリストである
ディオスコリダーにとっては、今後はローテーションの組み方も重要になってきそうだ。
勝ち馬だけでなく、
スノードラゴンの頑張りにも触れておかなければならない。3年前の
スプリンターズSを6歳で制したあと、7歳のシーズンを脚部不安によって丸々棒に振りながら、8歳でカムバック。9歳となった今年も
スプリンターズSで④着に入り、
カペラSでは58キロを背負いながら②着に食い込んだ。買い目からは外して悔しい思いをした方も、真っ白になった馬体を踊らせて追い込んでくる姿を見て、なんだか嬉しくなったのではないだろうか。
③着には浦和の
小久保智厩舎に所属する
ブルドッグボスが入った。といっても、この馬は今年の春まで中央のオープンでバリバリに走っていた。転厩後も、8月の
クラスターCを勝ち、先月の
JBCスプリントでも③着に入っており、このレースでも単勝2番人気、複勝1番人気の支持を集めている。並の地方馬ではなく、むしろ力を出しきれなかったといったほうが正しいぐらいの実力馬だ。
小久保調教師といえば昨年まで
5年連続で南関東リーディングに輝き、年間最多勝記録も持つ名伯楽。鞍上の
内田博幸騎手も大井出身で、地方競馬の年間最多勝記録を持っている。いわば南関東が生んだダート最強コンビで、来年こそは中央の重賞制覇を目指したい。