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厳しい流れでキャリアや実績を問われるレースに変質した
文/出川塁、写真/川井博


今年からG1に昇格したホープフルSだが、出走馬の半数以上を1勝馬が占めるのは昨年までと同じ。G1になったといっても、G2の頃とあまりレースの質に変わりはないのかなと、レース前は思っていた。

結果からいえば、この見立ては大外れだったといわざるをえない。勝ったタイムフライヤーは、オープン勝ちや重賞②着を含む4戦を経験してきたキャリア豊富な馬。②着のジャンダルムも出走馬で唯一の重賞勝ち馬と、実績上位の2頭がワンツーを決めたのだ。新馬勝ち直後のシャイニングレイやハートレーが制したG2時代とは明らかに様相が違う。これがG1の重みなのか。レース直後はそんなことを思い巡らせていた。

そのことは数字にもしっかりと表れている。前半1000m通過の59秒6は、前身となったラジオNIKKEI杯2歳S(04年まではラジオたんぱ杯2歳S)時代を含めても最速。当然ではあるが、G1となれば誰もが勝ちに行く。そのため予想以上に厳しい流れとなり、キャリアや実績を問われるレースになったと考えてもいいだろう。

ちなみに、これまで前半1000m通過が59秒9で最速だった08年は、①着がロジユニヴァースで②着がリーチザクラウン。この2頭はのちにダービーでもワンツーを決めるぐらいだから、レベルの高いレースだった。この08年より厳しい流れになった今年の上位馬も、来年のクラシック路線で活躍が期待できそうだ。

ここからはレースを振り返っていこう。最初のホームストレッチで先行争いを演じたのは、内からトラインサンリヴァルジュンヴァルロ。この3頭の雁行状態は、ジュンヴァルロが引っ掛かったこともあって向こう正面に入るあたりまで続いた。ペースが流れたのはこの影響が大きい。

人気どころは揃って中団から後ろに構えた。そのなかで前のほうにいたのは2番人気のルーカスで、3コーナーを回ったあたりでは4番手まで進出。この馬をマークするように4番人気のジャンダルムもポジションを上げていく。最後方に近い位置にいた1番人気のタイムフライヤーも徐々に進出を開始。しかし、3番人気のフラットレーは早くもムチが飛ぶほど手応えが悪く、この時点で脱落が濃厚となった。

馬群は4コーナーを回って最後の直線へ。まずは早めに動いたルーカスが先頭を伺うものの、伸び脚はいまひとつ。外にいたジャンダルムのほうがハッキリと手応えがよく、こちらが伸びてくるのかと思わせた、その刹那。後ろにいたはずのタイムフライヤーが一気の脚で交わし去って、そのまま先頭でゴール。ジャンダルムステイフーリッシュの追い上げを凌ぎきり、②着は確保した。

2歳G1を初めて制したハーツクライ産駒となったタイムフライヤーは、今年の8月にデビュー。2戦目の未勝利戦で勝ち上がると、重馬場となった萩Sも4馬身差で圧勝し、京都2歳S②着を経ての出走となった。

近年、社台グループ生産の良血馬が2歳時に5戦を消化するのはレアケースといえるが、それ以上に珍しいのが6月に松田国英厩舎に入厩して以来、一度も放牧に出されていないこと。2000年代の半ばに比べると目立たくなった松田国厩舎ではあるが、半年以上も在厩調整を続けてG1制覇に結びつけるあたりはさすがの名伯楽である。

また、2011年6月にフルオープンした追分ファームリリーバレーで育成された馬としては、先月のマイルCSを勝ったペルシアンナイトに続くG1制覇となった。開場当初はその豪華な施設が評判になったものの、なかなか結果に結びつかない時期も続いた。それがここにきて、3歳のペルシアンナイト、2歳のタイムフライヤーと若い世代が2カ月連続でG1勝利。ついにノウハウをつかんだ印象で、来年のPOGなどでも追分ファームリリーバレーの育成馬を狙う作戦が効果的になりそうだ。

②着のジャンダルムは血統背景から距離の不安があり、最後は一杯になったようにも見えたものの、一応は2000mにメドをつけた。結果論ではあるが、ルーカスを意識するような競馬にならなければ、もっと僅差だったかもしれない。③着のステイフーリッシュは、新馬勝ちから19日後のG1で0秒2差の③着というのは実に立派。ステイゴールド産駒らしいタフさを備え、今後の成長が楽しみになった。