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名手が見せた、絶妙の仕掛けが光った好レース
文/編集部(T)、写真/稲葉訓也


年始を飾る名物重賞・京都金杯有馬記念だけは毎年買う」というライトなファンはけっこう(かなり?)多いと思うが、金杯も毎年買う」という方は、立派な競馬ファンだと自信を持って言っていいだろう。

自分の知人にもそういう人間がいるが、彼に言わせると、どうやらおみくじ代わりということのようだ。設定が緩い(らしい)初詣のおみくじに比べると分が悪いが、その分当たった時は“今年はいいことありそう”感に浸れるらしい。外れた時は?“これから運気が上がりそう”と考えるそうだ(笑)。

そんな今年の京都金杯、出走メンバーを見て、どこか違和感があった。出走予定馬が13頭しかいなかったからだ。

京都金杯ハンデG3という条件だが、古馬の牡セン馬が出走できるマイル重賞としては、前年11月のマイルCS以来の舞台設定となる(牝馬限定重賞は12月にターコイズSがある)。

それだけに牡セン馬のマイラーにとっては、「待ちに待った」条件で、例年G1を狙う有力馬の出走も多い。過去10年を振り返っても、昨年のエアスピネル、13年ダノンシャーク、08年エイシンデピュティなど、勝ち馬の中から後にG1で好走した馬も複数出ている。

実際、レース名が京都金杯となり、マイル戦となった00年以降、もっとも少頭数だったのが15頭立てだった02年。それ以外は16頭立て以上で行われてきたのだから、どれだけ異例のことか分かるだろう。

そんな“異例の”京都金杯ではあるが、メンバーレベルは決して低くない印象を受けた。重賞勝ち実績があったのは6頭で、これは18頭立てだった昨年(5頭)より多く、17頭立てだった一昨年と同じである。

中でも5頭いた4歳馬のうち、4頭が重賞勝ち馬で、残るレッドアンシェルも前走のリゲルSを制し、アーリントンC②着の実績がある馬。まだまだ先があり、ここの結果次第ではG1で好勝負できる可能性も十分、といった感じの1頭である。

さらに伏線として、「今年の明け4歳勢は強い」というイメージが固まりつつあった。直前に行われた中山金杯でも4歳馬がワンツーしたこともあり、レース前には「どの4歳馬が勝つんだろうなあ」くらいの気持ちで見ていた。

ところが、そんなイメージを打ち砕いたのは同じ重賞未勝利馬でも、明け6歳となったブラックムーンの方だった。過去7回重賞に挑戦し、昨年の中京記念③着が最高着順だった馬が、ここで見事な差し切り勝ちを決めてみせたのだから、少なからず驚いたのである。

これまでのブラックムーンは前走のリゲルS(⑤着)に見られるように、鋭い末脚はあるものの、脚質的にも展開に左右されるような印象で、仕掛けどころに難しさを感じさせるイメージだった。

そんなブラックムーンが、テン乗りとなる武豊騎手を鞍上に迎えた今回、シンガリ追走はいつも通りだが、3コーナーの下り坂で早めに仕掛けられると、そのままの勢いで4コーナーを回る時には先団に取り付き、直線で一気に突き抜けたのだ。

逃げたウインガニオンが大差のシンガリ負けを喫しており、展開が向いたようにも見えるが、以下に示した今回のラップを見ると簡単ではなかったのでは、と思えてくる。

12.2-10.6-11.4-12.6-12.4-12.1-11.4-11.6
※黄地が12秒台

序盤は前が競り合っていたこともあって速く入り、4ハロン目から一気に落ちる変則的なペース。先行した馬は序盤で脚を使った分厳しくなったが、その後ろに控えていた馬にとってはおあつらえ向きの展開だっただろう。それをシンガリ追走から他馬より少し早く仕掛けることで対応した、武豊騎手の妙技が光る騎乗ぶりだったといえるのではないだろうか。

②着クルーガーもハンデ57.5kgとしては健闘で、明け6歳馬がここでは強さを発揮する形となった。4歳勢の中では最先着となった③着のレッドアンシェルは正攻法で勝ちに行った分粘り切れなかったが、これも展開が合えば重賞制覇も近そう。例年に比べて少頭数ではあったが、十分に濃い内容の京都金杯だったといえそうだ。

この勝利で、武豊騎手デビュー以来32年連続での重賞制覇を早々と決めた。今年の3月で49歳を迎え、もはや大ベテランの域となってきたが、まだまだ名手の技を見ていたい、そう思わせる今回のレースだった。