大幅馬体増でも2馬身差の快勝、G1タイトル獲得に向けて前進
文/浅田知広、写真/稲葉訓也
朝から一日馬券を買っていれば、
難解なレース、
予想に自信を持てないレースのひとつやふたつはあるもの。しかし、いざ馬券を買う段になれば
「なんとか当たってくれるんじゃないか」、くらいの気持ちにはなっているものである。
ところが。今年の
シルクロードSは、まず当たる気がしなかった。そもそも月曜に競馬週刊誌を見て
「なにが人気になるかわからない」と思った時点ですでに
マイナス思考に陥っているわけだが、まあ当日オッズを見ても、オッズ相応の確率で走りそうな馬がピンと来ない状態だ。
本来なら昨年の②着馬、そして次走で
高松宮記念を制した
セイウンコウセイが一枚上のメンバー構成。しかし、その後の
不振に加えて、昨年から3キロ増のハンデ58キロとあれば1番人気はなさそうだ(5番人気)。
じゃあなにが人気になるのかと考えると、近走オープン特別とはいえ安定している
ナックビーナス(6番人気)か、前々走まで4連勝の
ダイアナヘイロー(1番人気)、あるいはこの距離で新味が期待できる
カラクレナイ(3番人気)という牝馬勢。そして牡馬なら、前々走で
セントウルSを制した
ファインニードル(4番人気)あたりかと目星はつけていた。
しかし、そんな予想を覆して前売りから長く1番人気をキープしていたのが、1600万を勝ったばかりの
アレスバローズ。鞍上
M.デムーロである。最近こんなレースあったような……、と振り返れば
愛知杯のタニノアーバンシーで、最終的には2番人気に落ちて⑰着に敗退。
今回の
アレスバローズも、いくら
デムーロでも当日の馬体重まではコントロールできないぞ、というプラス14キロが嫌われたか、最後は2番人気に落ち着いた。かといって押し出された
ダイアナヘイローが信頼できるというものでもなく、レース直前になっても、どれもこれも怪しいなあ、という印象には変わりなかった。
さて、そんなレースを制する馬は。まずは
ナックビーナスが好スタートを切ったが、これを制して押して先手を奪ったのが、実績ナンバーワンの
セイウンコウセイ。他の人気どころは、まず2番手に
ダイアナヘイローで、これは少々掛かり気味。そして
ナックビーナスと
ファインニードルが3番手に続き、離れて中団に
カラクレナイと
アレスバローズ。人気上位6頭中4頭が、そのまま前から4番手以内という展開だ。
こういう形になるとそうはペースも上がらない、というのはよくあるもので、
セイウンコウセイの3ハロン通過は34秒0。決して遅くはないものの、先行各馬の力を考えれば十分に残れる流れとなった。
そんな余力を持って3コーナーを通過した分、
セイウンコウセイは早めのスパート。ここで2番手の
ダイアナヘイローは少し離れて脚を溜めたのかと思いきや、そのまま後続に飲み込まれてずるずる後退。結局、
セイウンコウセイを追いかけられたのは
ファインニードル1頭だけだった。
後続からは
カラクレナイや
フミノムーンも差を詰めたものの、肝心の
アレスバローズは内からじりじり伸びたところで前が詰まって万事休す。直線半ばで先頭に立った
ファインニードルがそのまま楽に抜け出し、2馬身差の快勝。
セイウンコウセイもそのまま②着に粘り込んだ。
同じ前の組でも序盤掛かった
ダイアナヘイローは⑯着大敗を喫したが、終わってみればG2馬→G1馬、ハンデ57キロ→58キロと、実績のある馬が前からそのまま①②着を占める結果となった。そして③着には人気薄・15番人気の
フミノムーン。
アドマイヤムーン産駒3頭をボックスで買うだけで3連単23万馬券……、むーん。
しかし、2番人気で⑪着に敗れた
アレスバローズもプラス14キロだったが、勝った
ファインニードルは、これをさらに上回るプラス18キロ。馬体重まで見極めて
アレスバローズを蹴っ飛ばした人も、ちょっと乗り換え先には選びづらい馬に勝たれてしまった、というところだろうか。
その
ファインニードルは昨秋、
セントウルSを快勝したものの、
スプリンターズSでは出遅れを喫した上に、その後掛かって3番手まで上がり、さらに外枠からそのまま外々を回る距離損もあって⑫着と、肝心の本番は
ちぐはぐな走りで終わってしまった。しかし今回は、ゲートを互角に出ると、最内枠も味方したか、まずまず落ち着いて勝負どころへ。
セイウンコウセイの早めの仕掛けも見逃さずに追撃し、
堂々たる勝利と言ってもいいだろう。
これで
①⑤①⑫①着と、なにやら次が
不安になる着順推移だが、4走前の
北九州記念⑤着は
不利があってのものだけに参考外。ここから
①①着でG1・
高松宮記念制覇となるのか。
力通りの走りさえ見せられれば、タイトルに大きく近づけるはずだ。