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馬はクラシック出走権を手中に、鞍上の手綱さばきにも注目
文/浅田知広、写真/稲葉訓也


松若風馬M.デムーロ松山弘平古川吉洋きさらぎ賞の単勝人気順だが、なにも知らずにこの名前を見たら、いったいなんの順番なんだ、と思う人もいるだろう。もっとも松若騎手は昨年の優勝騎手(アメリカズカップ)、松山騎手はG1・皐月賞をアルアインで制し、古川騎手はここ半年ほどで重賞3勝。昨年の勝ち鞍でいえば、最少の古川騎手でも36勝で32位なのだから、別におかしい話ではない。

ただ、以前にも増して一部のジョッキーに注目が集まることの多い昨今、人気馬がこのメンバーだとローカル重賞っぽいというか、表開催ならダートっぽいというか。勝てば皐月賞直行というこの時期の重賞としては、ちょっと雰囲気が違うかな、という感もある。

それだけに、各騎手ともここを勝って、そのまま一気にクラシックへと繋げたいに違いない。そして、そんなレースをあっさり持って行くのが、重賞にも1800m戦にも強いM.デムーロ、という話になるのかどうか。なにせ人気4頭すべてキャリア1~2戦。そんな若馬をどう導くのか、それぞれの鞍上に、いつも以上に注目したい一戦となった。

ハナを切ったのは、古川騎手サトノフェイバー。2000mの新馬戦はスローの逃げだったが出脚自体は良く、今回も内からすんなり先手を奪っていった。他の人気どころでは、休み明けでプラス14キロだったカツジ(松山騎手)が5番手。その後ろでダノンマジェスティ(松若騎手)は口を割っての追走。折り合いを欠いたようにも見えたが、レース後のコメントでは左へ張ってしまったとのこと。新馬戦の直線と同じことが、今回は向正面で起きてしまったようだ。

そして、M.デムーロ騎手グローリーヴェイズはほぼ最後方につけていた。JRA発表の「コーナー」通過順は2-2だが、前半400m地点では後方におり、そこからの400mで一気に位置取りを上げ、3コーナー手前でいったん先頭。特に掛かったわけではなく、鞍上の判断で位置取りを上げたようだ。

ここでサトノフェイバーもあっさりとは譲らず、再び内から先手を奪い返したが、そんなやり取りがあっても、極端にペースは上がらず1ハロン12秒台前半の連続。少々馬場が悪かった影響もあるだろうが、11秒台突入は最後の2ハロンという上がりの勝負になった。

先頭のサトノフェイバーを追ってグローリーヴェイズ、そしてカツジも続いて4コーナーを通過。1番人気のダノンマジェスティはここでも外にふくれてしまい、この時点で早くも圏外。また、カツジもいったんは前に並びかけたが、馬体増の影響か距離なのか、徐々に前2頭からは離されていったのだった。

残ったのは結局、3コーナー手前の時点で前にいたサトノフェイバーグローリーヴェイズ。こうなると、やはりここは(ここも)デムーロが持って行くのか。サトノフェイバーとの追い比べに持ち込むと、残り100mあたりからぐいぐいと伸び、ゴール寸前ではほぼ捕らえたかという態勢だ。最後はきっちりハナかアタマ差交わして優勝……という何度も見たようなシーンになると多くのファンが思ったに違いない。

ところが、今回のサトノフェイバー古川騎手は実に渋太かった。カメラの角度の問題もあるかもしれないが、じわじわと詰まっていた2頭の差が、ゴール前の2完歩だけほとんど詰まらなかったのだ。そしてクビの上げ下げで順番が変わることもなく、最後はグローリーヴェイズの追撃をハナ差しのいで逃げ切り勝ち。これでサトノフェイバーは新馬、重賞と2連勝で、ほぼクラシックの出走権は手中にしたと言っていいだろう。一方、同じく1勝馬のグローリーヴェイズにとっては、このハナ差が後々響く可能性もありそうな、痛い敗戦となった。

そして、今年デビュー23年目となる古川騎手は、これがJRA重賞8勝目。2年目の97年には阪神3歳牝馬S(アインブライド)でG1勝ちを飾ったが、その後はなかなかタイトルを獲れない時期もあり、昨夏までは重賞4勝にとどまっていた。しかし、この半年で一気に倍増(ほかに地方では名古屋GPも制覇)。サトノフェイバーと同じ南井厩舎のメイショウスミトモでシリウスSを制し、そこから流れを掴んだと言えるだろう。

南井師といえば騎手時代、タマモクロスで天皇賞(春)を制したのは18年目だった苦労人。一方、古川騎手は初G1こそ早かったが、それからもう20年以上が経過した。今後、ダート路線ではテイエムジンソクで多くのチャンスがありそうだが、そこにサトノフェイバーも加わって、いよいよ勝負どころという雰囲気だ。タマモクロス以降、大レースを勝ちまくった南井師のような道を、古川騎手も歩んでいけるのか。この春は、その手綱さばきに注目していきたい。