G1馬を撃破して成長&コンビ成熟を証明、今春の大舞台では!?
文/編集部(W)、写真/稲葉訓也
現4歳世代は牝馬が高い評価を受け、
モズカッチャンが
エリザベス女王杯を制し、リスグラシューが今年初戦の
東京新聞杯で快勝するなどしているが、昨秋(10月)以降は上の世代相手のJRA重賞で
[3.0.0.23]。大将格のソウルスターリングが昨秋、
⑧⑥⑦着と古馬の壁にぶち当たったように、思うような結果を残せていない馬もいる。
一方、牡馬は評価の面で牝馬に押され気味だったものの、昨秋以降、上の世代相手のJRA重賞で
[8.6.6.32]。ペルシアンナイト、サングレーザーが
マイルCSで①③着、
レイデオロが
ジャパンCで②着、スワーヴリチャードが
有馬記念で④着と、大舞台でも健闘し、今年に入って
中山金杯(①着セダブリランテス、②着ウインブライト)や
AJCC(①着ダンビュライト、②着ミッキースワロー)でワンツーするなど、ここへきて
存在感を増している。
そんな流れの中で迎えた
京都記念には、4歳牡馬から
ダービー馬レイデオロ(1番人気)、
皐月賞馬アルアイン(3番人気)、
菊花賞②着馬
クリンチャー(4番人気)、4歳牝馬から
エリザベス女王杯の勝ち馬
モズカッチャン(2番人気)、
秋華賞馬ディアドラ(6番人気)と、それぞれのトップクラスが参戦してきた。
いずれも昨秋のG1以来の休み明けにして今年初戦。先の大目標を見据えた仕上げ、戦いが展開されることは承知しながらも、今後の日本競馬を牽引するであろう
現4歳世代のG1馬&G1級の対戦という見逃せないカードとなった。
レースは昨年の
エリザベス女王杯で2番手から②着に粘った
クロコスミアが逃げ、1000m通過は63秒0。重馬場と言えどもスローペースの部類で、
レイデオロは出遅れながらも中団に付けたが、向正面で掛かり気味に前へと上がっていく。これをマークするように
アルアイン、
モズカッチャンが続き、
クリンチャーは好位の内で身をひそめる。
ディアドラは後方から。
直線に入り、逃げる
クロコスミアに
ミッキーロケットが競りかけ、
レイデオロは外に持ち出して抜け出しを図る。その間にできたスペースを突いたのが
クリンチャー、
モズカッチャンはこのレース3連覇が懸かる
M.デムーロ騎手に導かれて最内に進路を取り、
アルアインは外から
レイデオロを目標にするように脚を伸ばす。
残り1Fを切ったところで脚色の鈍った
クロコスミア、
ミッキーロケットが優勝争いから脱落。外目から
レイデオロが一瞬、先頭を窺うが、道中で掛かり気味だったせいか、それとも重馬場のせいか、ジリジリとした伸び脚で突き放せず。
そうこうしているうちに内ラチ沿いから
モズカッチャンが抜け出し、
クリンチャー、
アルアインも渋太く伸びる。横に大きく広がっての激しい追い比べとなったが、最後に力強くグイッと伸びた
クリンチャーが抜け出し、G1馬を従えて重賞初制覇のゴールに飛び込んだ。
クリンチャーは今回、斤量55kgで臨めたアドバンテージがあり、レース上がりが35~36秒台で
①①②①着、33~34秒台で
⑫④⑬⑨着という成績からも、重馬場でレース上がり(36秒3)を要する展開となったのも幸いしたはず。とはいえ、直前の坂路で
自己ベスト(52秒7)をマークし、ハナに固執せずに脚質に幅を見せるなど、馬自身が成長しているのも確かだろう。
2戦目以降、7戦連続で
クリンチャーの手綱を取っている
藤岡佑騎手とのコンビも成熟してきた印象がある。
菊花賞はあと一歩のところで涙を飲んだ人馬だが、G1初制覇に向けて好発進を決めたと見ていいだろう。ちなみに、今春の目標とされる
天皇賞・春は過去10年中8年でレース上がり35~36秒台となっている。
②着
アルアイン、③着
レイデオロはテン乗り騎手が騎乗して道悪で斤量57kgを背負った今年の始動戦とすれば、④着
モズカッチャンは道悪で休み明けとすれば、いずれもG1馬として格好はつけた形かもしれないが、1番人気の連敗記録が
「7」に伸び、単勝1倍台の
ダービー馬が2年連続で③着に終わったことは物足りなさも漂う。
この後、
アルアインは
大阪杯に進む予定で、
レイデオロの
ドバイシーマクラシック参戦は保留となっている模様だが、どこに向かうにせよ、引退したキタサンブラックの穴を埋めるような活躍を期待せずにはいられない。