ルメール騎手の意図に応え、同一レース3勝目を飾る
文/編集部(T)、写真/川井博
ダイヤモンドSは日本で唯一、芝3400mという距離で行われる長距離重賞。ひと口に長距離重賞と言っても芝3000~3200mなら
阪神大賞典、
菊花賞、
天皇賞・春があって、少々距離不安があっても実力があれば勝ち切れるイメージ。ところが3400mの
ダイヤモンドS、3600mの
ステイヤーズSとなると、途端に
“コッテコテのステイヤー”が狙いすましたように台頭してくるイメージがある。
まあ、
ダイヤモンドSは2月のハンデ戦で、G1を争うような馬は出走しにくいし、
ステイヤーズSは
ジャパンCと
有馬記念に挟まれた年末の開催というのも理由ではあるのだが……。
いずれにしても、今年の
ダイヤモンドSも“狙いすました”1頭が出走してきた。2014年と2015年にこのレースを制し、
3年ぶり3回目の優勝(こう書くと、なんだか別の競技のようだが)を狙う
フェイムゲームだ。
フェイムゲームは今回
ハンデ58.5kgを課されたが、これは一昨年の②着時と同じ。昨年は直線で上手く捌けずに⑥着に敗れたが、このレースで大外枠の時は15年①着、16年②着で結果を出している。久々の
ダイヤモンドS勝利に向けて、障害は多くないように思われた。
とはいえ3分以上の時間を走る長距離重賞、いろいろなことがある。今回の
フェイムゲームの勝利は、
ルメール騎手の手綱捌きが面白いレースでもあった。
序盤、前は
グランアルマダが大逃げを打ったが、
ルメール騎手は慌てず騒がず後方へ。2周目の向正面で上がっていった
フェイムゲームを見た時は、
「このまま前まで進出するのかな?」と思ったが、そこで一旦ストップ。何かあったのかと思いきや、レース後の
ルメール騎手のコメントを聞いて、その意図が分かった。
「(道中は)福永さんの馬をマークした」福永さんの馬とは、
ソールインパクトのこと。映像を見直すと、
ルメール騎手は
ソールインパクトの直後まで押し上げていたのだ。緩急を自在につけられる
フェイムゲームの操縦性の高さも驚きだが、その
ソールインパクトが6番人気ながら③着に入っているのだから、
ルメール騎手の慧眼には恐れ入る。もしかしたら、後方でどの馬に狙いをつけるか探っていたのかも、とさえ思えてくる。
そして直線。
フェイムゲームは先に抜け出しにかかった
ソールインパクトの、文字通り
“直後”で追い出しを開始。このままだと前に乗りかかると思わせたところで、
ルメール騎手が少し
ソールインパクトの外に持ち出すと、勢いよく突き抜けて後続を突き放してみせた。
この動きにも理由があって、レース後、
フェイムゲームを管理する
宗像師が
「ルメール騎手は前に馬がいるとファイトすると言っていた」というコメントを残したとのこと。前に馬を置いて、闘志に火をつけるためのものだったのだろう。
ルメール騎手がレース後に残すコメントは、決して流暢な日本語ではないが、レース映像を見直すと
「なるほどなあ」と思わせることが多い。特に長距離戦は距離が長い分、騎手の意図が見えやすいので、そういった点にも注目すると面白いかもしれない。
レース後のインタビューで、
ルメール騎手は
ドバイゴールドC(G2)挑戦の可能性にも言及した。このレースはドバイ・メイダン芝3200mで行われるが、
昨年の勝ち時計が3分22秒52で決着しているように、
天皇賞・春(昨年は3分12秒5でレコード決着)と比べると時計がかかる分、よりスタミナを問われる条件となっている。
ちなみに、今回のレースで
3200m通過ラップは3分19秒2。単純計算ではあるが、
ドバイゴールドCがこれより速いタイムで決着したのは2015年(3分18秒84)だけで、これくらいのタイムで走れればチャンスも出てきそうだが……。
フェイムゲームの近親
ステイゴールドもドバイの地でG2を勝っているが、それに続けるだろうか?