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競馬界でも大一番での「復活」が大きなキーワードとなる一戦だった
文/山本武志(スポーツ報知)、写真/川井博


今、日本中が平昌五輪に注目している。スノーボードにスピードスケートなど前半から大いに盛り上がっているが、やはり男子フィギュアスケートで66年ぶりに連覇を達成した羽生選手への注目度はものすごい。

今日はどのスポーツ紙も1面と最終面で羽生選手の偉業を称える記事が並んでいる。私の住んでいる関西でG1のレース当日に、競馬を1面や最終面で取り扱っている新聞が1紙もないというのは非常に珍しいことだ。

とはいえ、それも仕方ない。前回のソチで頂点を極めた後、故障に苦しみ、今回も直前で右足を負傷。絶体絶命の状況から再びはい上がった、鮮やかな復活劇はドラマ性に満ちあふれている。

そこで、今回のフェブラリーSである。羽生選手のように、競馬界でもノンコノユメが鮮やかに復活した。6度目の挑戦にして、ついに悲願のJRA・G1初制覇。3歳時から古馬相手のチャンピオンズCで②着に入るなど、早い時期から将来を嘱望されていた素質馬が6歳となってようやく頂点に立った。

4歳夏に帝王賞で②着に入った後、去勢手術をしたと聞いた時は本当に驚いた。成績が頭打ちになったわけでもなく、むしろ一線級でバリバリ走っている馬が去勢を行うなんて、あまり記憶になかったからだ。

しかも、その後から長いトンネルに迷い込んだ。常に堅実に走っていた馬が③着以内にも入らない日々が続く。一度、手術をしてしまった以上、もう後戻りはできない。陣営の悩み、苦労は我々の想像をはるかに超えるものだったはずだ。

そんな「どん底」の状態から根岸S、このレースで勝利へ導いた内田博Jにとっても「復活」といえる走りだったと思う。実はレース直後、内田博JのJRA・G1勝利はいつ以来かなと思い出そうとしたが、なかなか出てこない。調べてみると、14年のヴィクトリアマイル以来。実に約3年9か月もJRAのG1タイトルから遠ざかっていた。

大外に持ち出された直線で全身を使い、豪腕でグイグイと追いまくるフォームは全盛期と何ら変わらない。「コツコツ頑張っていれば、大きなレースをまた勝てる日が来るということを証明できた」。強い思いを手綱に乗せて大仕事を成し遂げた後、満足そうな表情から口を突いた言葉には「重み」が感じられた。

さて、レースを冷静に振り返ってみたい。今回は先行勢が少なく、ペースが落ち着くのではないかという見立てが多かったが、ニシケンモノノフの引っ張るペースは前半4ハロンが45秒8。予想もしていないハイペースで、タフな競馬になった。

昨春以降、どんな競馬でも崩れることのなかったテイエムジンソクがまったく見せ場もなく、長い直線で馬群に沈んでいく姿からも、先行勢にどれほどきつい流れだったかが想像できる。

その中で連覇を狙ったゴールドドリームは②着。この結果をどう捉えるかだが、個人的には「負けて強し」の競馬だったと感じている。4角から大外を回り、進出を開始した時、すぐ内にいたサンライズノヴァも手綱を動かし、抵抗したため、そこで併せるように加速した。最後の直線では想像以上に早い段階で、トップギアに入ったのではないだろうか。

その中でラスト300mでは早々と先頭に立ったが、結果的に完全な差し競馬。後方で自分の競馬に徹していたノンコノユメ、中団でジッと脚をためていたインカンテーションの格好の目標になったと言える。普通なら③着やむなしのレース。しかし、外のノンコノユメに最後まで抵抗し、インカンテーションには抜かせなかった。素直によく踏ん張ったなと思えるレースだった。

実績馬が息の長い活躍を続ける路線で、昨年は4歳馬ながら最優秀ダート馬に選出されたが、JRAのG1・2勝以外は勝ち鞍なし。高い能力は認めつつ、この路線の絶対的な核になり得るのかという気持ちを少しだけ持っていた。ただ、この日の走りは正直、昨年のG1・2走よりも「強さ」を見た気がした。もう、疑う気持ちは微塵もない。日本のダート界は当面、この馬を中心に回っていくことになるだろう。

振り返ってみれば、③着も昨年のマーチSから本来の走りを取り戻し、大舞台に戻ってきた8歳馬のインカンテーション。競馬は世相を反映するとよく言われるが、今年初戦のG1は競馬界でも大一番での「復活」が大きなキーワードとなる一戦だった。