今年は中山実績馬のレースになった
文/編集部(M)、写真/川井博
先頭でゴールした
ウインブライトは2番人気で、「メインレースの考え方」では
本命(◎)に推した馬だったが、同馬が勝利した瞬間、
来年の予想に向けてはちょっと困ったなあ…という感想を抱いていた。
中山記念は、かつては
ローエングリン(03年、07年)や
バランスオブゲーム(05年、06年)、
カンパニー(08年、09年)らが2度制覇するなど、
リピーターの多いレースで、その名称が表す通り、
中山に実績がある馬がよく活躍していた。
ところが、その傾向に変化が見られるようになったのが4年前(2014年)で、優勝したのは中山で[0.0.1.0](中山金杯③着だけ)の
ジャスタウェイだった。中山で勝ち鞍がなかった馬が中山記念を制したのは04年の
サクラプレジデント以来で、中山で連対歴がない馬の優勝は、実に98年の
サイレンススズカ以来だった。
まあ、それでも、2014年の
ジャスタウェイは中山での複勝率が100%だったし、
たまにはそんなこともあるか、と思っていたのだが、翌年(2015年)に優勝したのは中山が初出走だった
ヌーヴォレコルトで、2016年こそ皐月賞馬の
ドゥラメンテが勝利したものの、昨年(2017年)は中山で[0.1.0.2]だった
ネオリアリズムが制した。
近年の中山記念は、全然
「中山実績馬のためのレース」ではなく、むしろ近4年中3年は
G1馬が制し、昨年の
ネオリアリズムもマイルCS③着があったから、
G1実績馬が
中山実績馬たちを駆逐するような結果が続いていた。
近10年の
中山記念の勝ち馬をそれまでの
G1実績と
中山実績で分けて並べると、次のようになる。
【近10年の中山記念勝ち馬】
年 |
勝ち馬 |
G1実績 |
中山実績 |
2017年 |
ネオリアリズム |
[0.0.1.1] |
[0.1.0.2] |
2016年 |
ドゥラメンテ |
[2.0.0.0] |
[1.0.0.0] |
2015年 |
ヌーヴォレコルト |
[1.2.1.0] |
[0.0.0.0] |
2014年 |
ジャスタウェイ |
[1.0.0.3] |
[0.0.1.0] |
2013年 |
ナカヤマナイト |
[0.0.0.5] |
[3.2.0.1] |
2012年 |
フェデラリスト |
[0.0.0.0] |
[3.0.0.0] |
2011年 |
ヴィクトワールピサ |
[2.0.2.1] |
[3.0.0.0] |
2010年 |
トーセンクラウン |
[0.0.0.0] |
[3.4.1.5] |
2009年 |
カンパニー |
[0.0.1.9] |
[2.1.0.1] |
2008年 |
カンパニー |
[0.0.1.6] |
[1.1.0.1] |
08~13年は
中山で勝ち鞍があった馬が優勝していて、その6頭中5頭は
G1での連対歴がなかった。しかし、14年以降は、前述した通り、優勝馬の4頭中3頭が
G1馬で、中山で勝利実績があったのは16年の
ドゥラメンテだけ。
このG1実績と中山実績で今年の出走馬を見ると、10頭立てという少頭数だったものの、なかなか
面白い組み合わせと言えた。
【2018年中山記念】
枠 |
馬名 |
G1実績 |
中山実績 |
1枠1番 |
マイネルサージュ |
[0.0.0.0] |
[1.1.1.6] |
2枠2番 |
サクラアンプルール |
[0.0.0.3] |
[3.1.1.3] |
3枠3番 |
ヴィブロス |
[2.0.0.1] |
[0.1.0.2] |
4枠4番 |
ペルシアンナイト |
[1.1.0.1] |
[0.1.0.0] |
5枠5番 |
ウインブライト |
[0.0.0.2] |
[2.2.0.1] |
6枠6番 |
マイネルハニー |
[0.0.0.1] |
[1.1.0.1] |
7枠7番 |
ディサイファ |
[0.0.0.9] |
[1.2.2.6] |
7枠8番 |
マルターズアポジー |
[0.0.0.3] |
[2.0.1.4] |
8枠9番 |
ショウナンバッハ |
[0.0.0.1] |
[0.0.1.7] |
8枠10番 |
アエロリット |
[1.0.0.2] |
[0.2.0.0] |
G1で③着以内に入ったことがあった馬が3頭(
アエロリット、
ヴィブロス、
ペルシアンナイト)いたものの、いずれも中山で勝ったことがなく、逆に、中山で勝ち鞍があった6頭(
ウインブライト、
サクラアンプルール、
ディサイファ、
マイネルサージュ、
マイネルハニー、
マルターズアポジー)は、G1での好走歴がなかった。
中山実績を取るか、
G1実績を取るか。そこが予想のキモだったと言え、脚質の安定感を重視して本命(◎)は
ウインブライトにしたが、G1馬で中山でも皐月賞②着の実績があった
ペルシアンナイトも、甲乙付けがたい存在に映った(対抗◯をペルシアンナイトにした)。
近年の傾向としては、今年もG1実績馬が優勝して、
「中山記念は2014年から傾向が変わった」と言えるのが
来年に向けて楽そうだなーと思っていたのだが、そうはならなかったので、冒頭で記した気持ちになったのだ。
今年の
中山記念は、流れとして
共同通信杯に似ていたように思う。共同通信杯は
コスモイグナーツ、今回は
マルターズアポジーという確たる逃げ馬がいて、どちらも
ハイペースで飛ばすイメージのある馬だった。
コスモイグナーツも
マルターズアポジーも、予想通りにハナを切ってレースを作ったが、縦長の隊列になりながら
思ったほどまではペースが上がらず、後続は平均よりもやや遅い流れになった。
マルターズアポジーの1000m通過は
59秒2で、昨年の小倉大賞典を逃げ切った時が
57秒6、昨夏の七夕賞が
58秒0だったから、これらと比べれば緩い。それでも道中でバラけたことで、先行馬を見る位置で流れに乗った馬にハマる展開になった。
余談だが、共同通信杯も中山記念も
芝1800m重賞で、芝1800mはこのようにペースが読みづらい時があるから荒れやすいのだろう。これが芝2000mとかであれば、後続馬も道中で動きようがあるのではないか。
ウインブライトの
松岡騎手は、レース後、「長く良い脚を使える馬で、その長所を活かす競馬をしようと思っていた」と話していた。そのプラン通りにレースを運びやすい流れになったのだろうが、同時にそれだけの
自在性があるから、中山でこれだけの実績を残しているとも言えるのだろう。今年は
中山実績馬のレースになった。
ウインブライトは重賞3勝目で、G2制覇は
スプリングS以来2度目。今後はもちろん、
G1制覇が目標となってくるのだろう。
東京でも勝ち鞍を挙げている馬で、
松岡騎手がコメントしていたように中山一辺倒というタイプではないのだろうが、
ウインブライトはこれまでの好走がすべて
11~3月([5.2.0.0])で(4~10月は[0.0.0.5])、好調をキープし続けることがポイントになってくるのかもしれない。
一方、1番人気だった
ペルシアンナイトは、追い込み届かず⑤着に敗れる結果になってしまった。スタートで遅れて後方追走となり、前述した通りペースがあまり上がらず、流れも向かなかった。
ペルシアンナイトは偶数馬番で4戦4勝、奇数馬番で[0.2.1.2]という成績だったのだが、今後は偶数馬番であっても
スタートが課題になってくるのかも……。