「戦ってきた相手が違った」という結果に
文/出川塁、写真/川井博
昨年から
大阪杯が加わり、牝馬限定戦を除く芝2000m以上の古馬G1は年間6レースとなった。その昨年、6戦を皆勤したのはキタサンブラックだけで、同馬がすでに現役を退いているのは皆さんご存知の通りだ。
キタサンブラックに次ぐ5戦に出走したのが
サトノクラウン、
レインボーライン、
シャケトラで、この3頭は今年も現役を続行する。ただし、
シャケトラは今月2日に骨折が判明して休養に入った。また、
サトノクラウンはドバイ遠征のため、国内のG1には出走するとしても
宝塚記念からとなりそうだ。
もう1頭の
レインボーラインは、今年は
阪神大賞典から始動。昨年は
日経賞を叩き台に
天皇賞・春へと向かったが、過去3戦2勝という阪神との相性のよさも考慮したのだろう。その2勝はいずれもマイル戦だが、
16年菊花賞②着の実績が示す通り、3000mの距離も十分に対応できる。ここでは単勝5.6倍の3番人気に推された。
この馬を上回る支持を集めたのが、こちらは17年の
菊花賞で②着に入った
クリンチャーと、昨年の
ステイヤーズSで史上初の3連覇を飾った
アルバート。前走の
京都記念でアルアイン、レイデオロという同世代のクラシック馬2頭を撃破して波に乗る
クリンチャーが単勝1.9倍の1番人気となり、
アルバートは3.7倍の2番人気に。もう1頭、昨年の
有馬記念にも出走した4歳馬の
サトノクロニクルが6.3倍の4番人気で続き、5番人気の
ムイトオブリガードになると19.3倍まで離れており、実質的に4頭の争いという見立てとなった。
ゲートが開いてハナに行ったのは、予想通り
ヤマカツライデン。人気どころは揃って中団につけた……かと思いきや、外から
クリンチャーが掛かり気味にポジションを上げていく。これまでレース中に行きたがるようなシーンを見せることはなかったし、むしろ
ディープスカイ産駒らしくテンはズブく、これまでは押して押してようやく先行していただけに、実に意外な光景だった。
この影響もあったのだろう、2ハロン目から4ハロン目まではいずれも11秒台のラップが刻まれ、前半1000m通過は60秒1と長距離戦にしては速い流れとなった。さすがに1周目の直線に差し掛かる頃には馬群も落ち着き、中間の1000mは63秒3とひと息入った。
再びレースが動き始めるのは残り1000mの手前あたりから。10番人気の
シホウが外を通って4番手まで押し上げると、それにつられるようにして馬群は徐々に凝縮。ここで、ひとつ内の
サトノクロニクルとともに一気にマクって進出してきたのが、道中は後方のラチ沿いで息を潜めていた
レインボーライン。最終コーナーを回るときの勢いは明らかに他馬を上回っており、直線に入ってすぐに突き抜けた。最後の坂を上っても脚色はまったく衰えず、
約2年ぶりとなる勝利を飾った。
昨年は、古馬のG1路線を真っ直ぐに歩んだのは先述した通り。いや、3歳時もクラシックが終わるとするに
JCに挑むなど、常に強い相手を求めてきた。メンバーにG1馬がいないレースに出走したのは、3歳春
のニュージーランドT以来のこと。常套句ではあるが、
「戦ってきた相手が違った」とはまさにこの馬のことだろう。近年の
天皇賞・春は
「内枠有利「先行馬有利」の傾向が顕著なだけに、今回とは違う戦い方が求められそうだが、10度目のG1挑戦でビッグタイトルを手に入れたいところだ。
レインボーラインには突き放されたものの、
サトノクロニクルは1、2番人気馬を余裕をもって制して②着を確保した。昨年の
菊花賞こそ⑩着に敗れたものの、稀に見る不良馬場なら度外視できる。
菊花賞は振るわないが、春天では何度も穴をあけている
ハーツクライ産駒で、血統派としては侮れない1頭となる。
ジリジリと伸びた
クリンチャーは③着を確保したものの、前走の走りを思えば
物足りなさは残る。序盤に行きたがったぶん、最後に堪えた面はあるのだろう。このあたりは、手替わりの影響もあったのではないか。もっとも、ここはあくまで叩き台。淀の長丁場を知り尽くす
武豊騎手がこれで癖を把握して出てくるようなら、かえって不気味な存在になりそうだ。