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「壁」に跳ね返されても地道に成長を続け、ついにG1馬へ
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博


春の短距離王決定戦・高松宮記念には昨年の①~③着が揃って出走してきた。セイウンコウセイレッツゴードンキレッドファルクスは4、5、6歳からそれぞれ順調に1歳ずつ年齢を重ね、よりレベルアップを果たしている。この3頭にレーヌミノルスノードラゴンを加え、G1馬も5頭が顔を揃えた。

スプリンターズSを連覇しているレッドファルクスが頭ひとつリードしていて単勝も2.3倍の1番人気に推されたが、ゴドルフィンの馬主名義で初のG1挑戦となるファインニードル、短距離重賞で安定したレースを続けるダンスディレクター、香港からはスプリンターズS⑤着のブリザードが2度目の来日をするなど伏兵陣も揃って、大混戦の印象となった。

その前評判に違わぬ激しいレースとなった。1番枠を引いた昨年の覇者セイウンコウセイが思い切ってハナを奪いに行くが、前走で阪急杯を逃げ切ったダイアナヘイローも負けずに競り掛けていき、前半3ハロンは33秒3のハイペース。地力に勝るセイウンコウセイが先頭で直線に入ったが、4角をコースロスなく回ったレッツゴードンキが最内を突いて並び掛け、昨年の雪辱とばかりに早めに競り落とす。

前走はフェブラリーS⑤着などダートでも一流の成績を残しているレッツゴードンキにとって、やや芝丈が長く、時計の掛かる馬場になった中京のインコースは、国内の短距離G1連続②着に終止符を打つ絶好の馬場状態だった。同馬での2015年桜花賞以来、G1勝利から遠ざかっている岩田康誠騎手にしても、想定していた通りの最高のレースができたはずだった。

だがゴール前、外からロイヤルブルーの鮮やかな勝負服が飛んできた。好位から直線は馬場の良い外に持ち出す正攻法の競馬をした2番人気ファインニードル川田将雅騎手だった。18キロ増の馬体だった前走のシルクロードSで、②着セイウンコウセイに2馬身差をつける快勝。体重が8キロ絞れた今回はさらに調子を上げており、川田騎手も自信を持っての騎乗だったのだろう。

先週から馬主名義が「シェイク・モハメド」から「ゴドルフィン」となり、世界を席巻するロイヤルブルーの勝負服に代わったことが、馬の自信をも深めたようにすら見えた。一完歩ごとにレッツゴードンキに迫り、ゴール板できっちりハナ差だけ差し切っていた。

ファインニードルは5歳ながら今回が24戦目と、オープン馬としては出走レース数が多い。連勝は今回が初めてで、一歩一歩地道に成長を続けてきた。勝ち上がると上のクラスのにぶつかり、そのクラスに慣れてくると成績を上げていくパターン。500万条件馬として臨んだ初重賞のシンザン記念着、オープン入りして最初の重賞挑戦となった北九州記念着、初G1のスプリンターズS着と、ことごとくに跳ね返されてきた。だが、今回は2度目のG1挑戦で見事な結果を出した。もう国内には「壁」はないように思える。

鳴り物入りで日本の生産・育成界に参入したダーレージャパンファームも、地方競馬ではフリオーソ(生産はハシモトファーム)という名馬を輩出したが、JRAでは2010年NHKマイルCを勝ったダノンシャンティ以来、生産馬でG1馬を出していなかった。

これまで様々な問題もあったが、ファインニードルの父でシルクロードSで①~③着を独占したエース種牡馬アドマイヤムーンを筆頭に、パイロも着実に成績を上げてきているし、昨年はディスクリートキャット、今年はアメリカンペイトリオットと期待の新種牡馬も続々と導入しており、馬主名義変更がさらに勢いに繋がるはずだ。

1番人気レッドファルクスは後方2番手からの競馬になってしまった。スタート直後に不利があったようには見えなかったが、いくら直線の長い中京コース、ハイペースの流れとはいえ、圧倒的1番人気馬がこの位置取りでは厳しい。コーナーのきつい4角で前方が大きく広がったために仕方がなく内に入れたが、馬群のポケットに入ってしまいまったく追えない。

ようやく外目に持ち出してゴール前で詰めたが、⑧着が精一杯だった。名手デムーロ騎手にしては珍しいちぐはぐなレースだったが、ただ1頭上がり33秒台(33秒7)を記録したように、馬自身にはまだまだ衰えは見られない。

ファインニードルレッツゴードンキレッドファルクスの3強と、堅実なナックビーナスダンスディレクターらによる短距離界の混戦は、2018年も続いていくことになりそうだ。