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日本産馬の強さ、ディープインパクトの凄さを改めて示した
文/後藤正俊(ターフライター)、写真/川井博


MLBではエンゼルス・大谷の連日の大活躍、マリナーズ・イチローのGM補佐就任など日本人プレーヤーの話題が世界的に大きく報じられているが、競馬に関しても日本産馬が大きな話題になっている。

英国では3冠第1弾のG1・2000ギニーで、日本産のディープインパクト産駒サクソンウォリアー(牡3歳)が優勝。無傷の4連勝となり、6月2日の英国ダービーでも主役を務めることになる。米国ではG1・ターフクラシックで、日本産のハーツクライ産駒ヨシダ(牡4歳)がG1初制覇を果たした。日本産馬のレベルが着実に世界最高峰に近づいてきていることを裏付ける快挙が続いた。

NHKマイルCは、かつては「外国産馬のダービー」とも言われ、クラシック出走権利がなかった時代は、能力の高い外国産馬が出走表の大半を占めていたこともあった。だが、日本馬のレベルアップによって、5大クラシックが外国産馬に開放されても勝ち馬は07年オークスのローブデコルテ1頭だけ。NHKマイルCも01年クロフネ以来、外国産馬は勝っておらず、今年は18頭の出走馬の中でマル外は3頭しかいなかった。

そんな日本産馬の強さ、ディープインパクトの凄さを改めて示したのが、今年のNHKマイルCだった。連日の好天で東京競馬場の芝コースは上々のコンディションで、ディープインパクト産駒がその切れ味を発揮する最高の舞台が整っていた。

レースはテトラドラクマのマイペースの逃げで前半1000mが58秒0。馬場状態と頭数を考えれば比較的ゆったりとした流れとなった。馬場の内側もそれほど荒れておらず、先行馬に有利な展開に見えた。その流れを読み切って2番人気ギベオンデムーロ騎手は5~6番手を追走。残り300m地点では早くも先頭に立ち、そのまま抜け出しを図るという人気馬にとっては理想的なレース運びを見せた。

だが、その勝利の寸前、後方2番手を進んでいたケイアイノーテックが直線大外から一気の瞬発力を見せて、ゴール前で差し切って見せた。ギベオンは、ケイアイノーテックと一緒に追い込んできたレッドヴェイロンは何とか抑えて②着を確保。①②着はともにディープインパクト産駒だった。

勝ちタイムの1分32秒8は一昨年のメジャーエンブレムと同じで、過去10年では6番目だったが、9R湘南S(古馬1600万)のレッドオルガが1分33秒9だったことを考えればかなり優秀なタイム。レースの上がり3ハロンは34秒8だったが、ケイアイノーテックはただ1頭33秒台の33秒7を記録した。まさにディープインパクト産駒らしい切れ味だった。

騎乗した藤岡佑介騎手(32歳)にとっては04年のデビュー以来、初のJRA・G1制覇となった。前半は流れについていけなかったケイアイノーテックだったが、藤岡佑騎手は慌てることなく後方でじっと待機し、直線は大外に持ち出したレースぶりはじつに落ち着いていた。6番人気という気楽さもあったかもしれないが、終始内で包まれて直線も前が開かずに不利を受けて⑫着に惨敗したルメール騎乗の1番人気タワーオブロンドンとは、対照的なレースとなった。前日はステイフーリッシュで京都新聞杯を制しており、悲願のクラシック制覇にも一歩一歩近づいてきている。

開業12年目の平田修調教師(57歳)は、12年カレンブラックヒルに続いてこのレース2勝目。昨年はゴールドドリームでチャンピオンズCフェブラリーSを制している。ケイアイノーテックはデビューからここまでの7戦がすべて1600m戦だった。カレンブラックヒルも4戦目でこのレースを制するまですべて1600m戦で連勝を続けた。ゴールドドリームはデビューからすべてダートで、距離も1600~2000mの範囲だった。早くからその馬の適性を見極めて、徹底したローテーションを組んでいることが、G1制覇の根源となっている。

生産した新冠・隆栄牧場は、グレード制導入後はG1初制覇で、JRA重賞勝ち馬はケイアイノーテック母ケイアイガーベラに続いて2頭目だが、かつては桜花賞馬タカエノカオリ、朝日杯3歳S馬ニシノスキーなどを生産した老舗の名門牧場。ケイアイガーベラという名牝が牧場に戻ってきたことで、その初産駒FierceImpact(牡、父ディープインパクト)はセレクトセールで外国人馬主に購買されて英国でデビューし、重賞に出走している。2番子のケイアイノーテックもこの活躍で、基礎牝馬として今後の牧場の繁栄に繋がっていきそうだ。

若く勢いのある騎手、理論派の新進調教師、復活を期す老舗牧場。ディープインパクトだけでなく、日本競馬の奥深さと今後の可能性をさらに広げてくれる結果となった、今年のNHKマイルCだった。