父の名をさらに高めるような活躍を期待したい
文/浅田知広、写真/川井博
日本ダービー当日の最終レースといえば
目黒記念。「残念ダービー」ならぬ「残念天皇賞(春)」といった印象のレースだ。まあ、
天皇賞組が勝つがどうかはさておき(2000年以降で6勝、②着5回は前走別で最多)、オープンの
メトロポリタンSともども、出走馬の中心を担っていたのは確かだった。
ところがここ4年の
天皇賞組は、14年のアスカクリチャン(
天皇賞シンガリ負け→
目黒記念⑩着)と、昨年のワンアンドオンリー(同⑪着→⑩着)の2頭だけ。どうも様相が違ってきた感もあった。
しかし今年は、久々に
天皇賞上位(⑤着)の
チェスナットコートが出走。さらに
トウシンモンステラ(同⑪着)、そして
ソールインパクト(同⑬着)と3頭が顔を揃えた。
また、同時に今年目立ったのが、
天皇賞に出ておかしくないのに出走しなかった(できなかった)馬たちだ。その筆頭格は1600万と
日経新春杯を連勝し、ここは放牧明けの
パフォーマプロミスでこれが1番人気。そして昨年の覇者
フェイムゲームや、
有馬記念以来となる
サウンズオブアースなどがこれにあたる。
さらに、長距離2度目の
ゼーヴィントや、オープン入り初戦の
ポポカテペトル、
ウインテンダネス。そして巻き返しを期す
ホウオウドリームなど、どこからでも入れそうな上に、ハンデ差もあるメンバー構成。結果はさておき、ダノンプレミアムという予想(取捨)の軸になる存在がいた
ダービーとは一転、かなり
難解な印象のレースだった。
さて、レースは大方の予想とは少々異なる、
ヴォージュ、
リッジマン、
ノーブルマーズという順で1コーナーへ。これは前々の馬が上位の多くを占めた
ダービーの結果も受けて、ということか。人気どころでは、
ポポカテペトルや
パフォーマプロミスが好位の一角というのはまずまず予想通りだろうか。
画面に表示された前半1000mの通過タイムは1分1秒2と、
ダービーの1分0秒8よりもさらに遅い流れ。向正面では、最後方をポツンと1頭追走した
ホウオウドリーム以外、馬群はまったく一団となった。そのまま向正面で動く馬もなく、そのまま3コーナーに突入。こうなるとまず間違いなく爆発力比べ、そしてハンデ戦らしい僅差の勝負が予想された。
直線に向くと、逃げる
ヴォージュを目標に、内めから
ノーブルマーズ、外から
ポポカテペトルに
パフォーマプロミス、その後ろに
ウインテンダネスや
ゼーヴィント、
ソールインパクト。
ダービーでもブラストワンピースが内でやや厳しいところに入ったが、こちら
目黒記念も少々ごちゃつき気味に。しかし、スローで上がりの速い競馬だけに、そこで立て直す
ロスが影響しかねないという、似たような展開だ。
そんな混戦から、ゴール前で間をぐいっと割って出たのは9番人気の伏兵
ウインテンダネスだった。その内から伸びた10番人気
ノーブルマーズが②着に入り、③着にようやく人気の
パフォーマプロミス。
ダービー・ワグネリアンの半馬身差より、
ウインテンダネスは少し大きい4分の3馬身差での勝利となったが、スタンドに詰めかけた
ファンにとっては、目の前で演じられた再びの大熱戦。馬券の当たりハズレは別にして、もう一度手に汗握るレースが展開され、満足のいく日になったに違いない。
そんな熱戦を制した
ウインテンダネスは、前走、東京芝2400mの準オープン・
緑風Sをなんと2分22秒9で逃げ切り勝ち。東京にかぎれば
ジャパンC以外では初、そしてウオッカが勝った09年から8年半ぶりの2分22秒台が、1600万条件で記録されたのは衝撃的だった。
そのわりに単勝9番人気・1770円というのはよくついた印象だが、これは同日の
夏木立賞が3歳500万で芝2000m1分58秒8、後の
京王杯スプリングCはムーンクエイクが芝1400m1分19秒5のコースレコードと、時計が出やすい日に記録された影響が大きい。あまり細かいことを考えず
「22秒台すげー」が(今回にかぎっては)正解だったということだ。
ともあれこれで、1600万、そして
目黒記念と、ともにハンデ54キロとはいえ2連勝となった
ウインテンダネス。
父カンパニーはご存じの通り、8歳になって秋の
天皇賞でG1初制覇、そして
マイルCSと連勝を飾っている。そんな視点で見れば、5歳でもこれからまだまだ
伸びしろがありそうな馬である。もちろん、今後は斤量増や相手強化などいくつもの
ハードルを超えなければならないが、父同様にベテランの域に入ってから、父の名をさらに高めるような活躍を期待したいところだ。