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さまざまな条件が好転し、G1馬が実力発揮
文/浅田知広、写真/川井博


3歳馬が早い段階から古馬に通用しやすいのは、まず短距離戦。サマースプリントシリーズの初っ端、この函館スプリントSではソルヴェイグ、ジューヌエコールと3歳馬が2連勝中。過去10年では[3.2.2.17]勝率12.5%は4歳と並んでトップ、複勝率29.2%は2位という好成績をマークしていた。

そして今年。3歳スプリント重賞・葵Sが創設された影響がどう出るかと思えば、なんとまさかの登録馬ゼロ。間隔が詰まっているとはいえ、皆無になるとまでは思わなかった。

さらに。[2.3.2.9]複勝率43.8%を記録している4歳馬も、昨年の覇者ジューヌエコール1頭だけ。しかも、このレースをレコードで制した後は4戦連続ふた桁着順とさっぱりで、ここは6番人気にとどまった。

その一方で6枠2頭、ユキノアイオロスエポワスはなんと10歳馬。まあ、この2頭は極端にしても、全体的にこの路線ではお馴染みの、ベテランが多く出てきた印象だった。そんな中で実績面の筆頭格は、昨年の高松宮記念の覇者セイウンコウセイだが、このところ安定感を欠いた上、昨年のこのレースで④着ということもあって3番人気である。

そして人気の上位を占めたのは5歳の牝馬勢、ナックビーナスワンスインナムーンダイアナヘイロー。牝馬は過去10年で[5.2.5.31](複勝率27.9%)と好成績だが、これが5歳牝馬にかぎると[0.1.1.11]で、しかも3頭揃って函館未経験馬。なんとも全体的に怪しげな馬が揃った感があり、単勝オッズも1番人気のナックビーナスで4.3倍と、そんなファン心理が現れたものになった。

その人気の一角、そしてハナに行くかとも思われたダイアナヘイローが出遅れるという波乱のスタート。そしてその隣、セイウンコウセイも決してダッシュは良くなかったが、同型ダイアナヘイローの出遅れを見ているだけに行く一手。昨年はシュウジにハナを譲ったが、今年はもう1頭の逃げ候補ワンスインナムーンを200mほどの地点で交わして先頭を引っ張った。

その直後にナックビーナス、出遅れたダイアナヘイローは盛り返して中団。これを見てジューヌエコールエポワスキングハートと、昨年の①③②着馬は後方を追走した。

その昨年は、前半3ハロン32秒2のハイペースで、先行勢で残ったのは④着セイウンコウセイだけという展開。そのセイウンコウセイが先導する今年は、これより0秒9も遅い33秒1だった。もっとも、昨年の函館は好タイムが続出した馬場だけにあまり参考にはならないが、少なくとも昨年より楽なペースを自ら作り出したのは確かだった。

そんな展開もあって、4コーナーでもセイウンコウセイの手応えは楽。外から並びかけたワンスインナムーンのほうが押っつけ気味で、ここにコーナーワークも加わって、直線に向いたときには再びセイウンコウセイが1馬身のリードをとっていた。

後退したワンスインナムーンにかわってセイウンコウセイを追撃したのは、同じ5歳牝馬勢からナックビーナス。もう1頭のダイアナヘイローも手応えに余裕を残して前に迫ったが、こちらはワンスインナムーンの後ろで詰まって万事休す。かわって外から迫ったのが、ベテラン7歳馬ヒルノデイバローだった。

残り100mを切ると、ナックビーナスセイウンコウセイに迫るほどの脚色ではなくなり、最後は間にナックビーナスを挟んで、セイウンコウセイヒルノデイバローの際どい勝負。しかし結局「実績ナンバーワン」セイウンコウセイが、ヒルノデイバローの追撃をハナ差抑え、昨年④着の雪辱を果たしたのだった。

勝ちタイムは1分7秒6で、昨年のジューヌエコールより0秒8遅いもの。しかしセイウンコウセイ自身は昨年1分7秒3、0秒3遅いだけだった。昨年は時計が速すぎ、本来の函館の馬場なら悪いはずもなかろう、というアドマイヤムーン産駒である。それに加え、今年は自らが刻んだラップ。スタートで隣のダイアナヘイローが遅れたところからはじまり、さまざまな条件が好転して、G1馬の実力発揮となったのだ。

こうなると、当然狙うはスプリンターズS。昨年は3番人気で⑪着と結果を出せなかった一戦だ。ただこれは、スタートがあまり良くなく、中団の内で揉まれる形になっての結果である。今回の函館スプリントS同様、昨年とは違う競馬になれば、ふたつ目のG1タイトルを獲得するチャンスは十分にありそうだ。