2番人気できっちりと勝利を挙げたことは賞賛すべき
文/編集部

青鹿毛で500kgを超える雄大な馬体。パドックで見た
アントニオバローズの印象は父
マンハッタンカフェを彷彿とさせたが、
メンコ&パシュファイヤーを着用していて、町ですれ違ったら目を背けてしまいそうなくらい(笑)、
なんとも物々しい雰囲気を醸し出していた。
出走馬14頭中8頭がOPクラスの芝で3着以内に入った実績があった中、
アントニオバローズは
未勝利を卒業したばかり。その状況からいえば、同じ臨戦過程だった
キングストリート(
8番人気)、
ハマノエルマー(
11番人気)あたりの人気に落ち着くのが普通だろう。
ところが、
アントニオバローズは最終的に
3.3倍の2番人気。1番人気は
2.7倍で
ミッキーパンプキンだったが、こちらは
萩Sを勝ち、G1の
朝日杯FSでも
3番人気に推されていた実績馬である。その馬と僅差の2番人気、
札幌2歳Sで
3着となった
モエレエキスパート(8.4倍の3番人気)以下を大きく引き離して2番人気だ。
確かに、
デビュー戦(小倉芝1800m)で
メイショウドンタク(
中京2歳S勝ち)と接戦を演じていた。前走(阪神芝1400m)の勝ち時計
1分22秒1は、翌日の
阪神Cのそれとわずか
0秒5しか差がなかった。素質の高さはそのキャリアからもにじみ出ていたが、それでも
2番人気とは驚いた。
同じ
マンハッタンカフェ産駒では、
オリエンタルロックが未勝利を勝った直後に
札幌2歳S(07年)を制していたが、果たして、
スピードと
斬れ味を要求される
京都芝1600mの
シンザン記念を、
2番人気で勝ち切れるものかどうか。個人的には半信半疑だったが、完全に思い過ごしだったという(笑)。
同じ
マンハッタンカフェ産駒の
ツルマルジャパンが後続を離して引っ張り、
アントニオバローズは
ミッキーパンプキンの直後、
好位の3番手に控える形。道中で外目に持ち出すと、直線では
ミッキーパンプキンを交わし、内で粘る
ダブルウェッジを競り落とし、先頭でゴールを駆け抜けた。
ツルマルジャパンがマークした1000m通過タイムは
59秒4。離して逃げていたわりに、ペース自体はそれほど速くなく、2番手以下のグループは、実質は
スローペースだったはず。結果、先行馬が止まらない展開となり、中団より後方にいたグループはなすすべがなかった。
アントニオバローズには展開面で追い風が吹いていたのも確かだろうが、
クビ差であっても、
2番人気に推された中で、きっちりと勝利を挙げたことを賞賛すべきだろう。過去20年を遡っても、未勝利を勝った直後に4番人気以内に推されたのも、勝利を挙げたのも、
02年の
タニノギムレットしかいないのだから。
アントニオバローズは今後、
皐月賞、ダービー路線に進むのか、それとも気性的なことを考慮し、
NHKマイルCを目標とするのか、それはまだ分からない。
マンハッタンカフェ×キングマンボという血統からは
クラシック路線を目指してほしいと思うが、いずれにしても、実績馬たちを退けたわけだから、楽しみが膨らんだのは間違いない。
ちなみに、
アントニオバローズの3代母は
ナタルマ。血統に明るい方はご存知かもしれないが、
ナタルマは
世界の血統地図を塗り替えたノーザンダンサーの母である。また、同じ牝系には、これまた世界中で活躍馬を送り出した
デインヒルなどがいる。
現3歳馬の中に、こんな良血が潜んでいようとは思いも寄らず。恥ずかしながら、
アントニオバローズが
シンザン記念を勝ったことで、素性を調べてみて初めて知った。
元気があれば、
マイル路線だって
クラシック路線だって走れる。順調に成長していってほしいと願うばかりだ。血統好きとしては、今後、
アントニオバローズから目を背けず、全面的に応援していこうかと思います(笑)。