アーリーロブストが3歳牡馬クラシック路線の基準ホースになるかもしれない
文/編集部
東京競馬場の
メモリアル60のスタンド。毎週毎週、競馬場へ通い、いつも同じような場所に陣取ると、
「話はしないが、毎回のように見かける」という人が出てくるものだが、このスタンドの場合、
年齢層が高め(推定50歳以上)の常連が、非常に多く見られる。
京成杯は
中山競馬場ではなく、
メモリアル60で観戦していたのだが、締め切り時間の10分ほど前に、よく見かける推定60~70歳の男性3人組(いずれも白髪で、なぜか3人とも野球帽を着用)が、ボヤキ口調で馬券談義をしていた。
A「京成杯は、おじいちゃんには難しすぎるな」B「蛯名はここんところ、あんまりよくねぇだろ?」C「今日は2勝してるぞ」A「北村も今日は2勝してるんだよな」C「ふたりとも今日はもう、打ち止めじゃねぇか」B「先週みたいにまた、福永の関西馬が勝つかもなあ」A「松岡だって、京成杯を去年も一昨年も勝ってるんだろ」とまあ、おじいちゃんの3人組はいつもの通り、ああだこうだと、馬券談義(騎手談義?)をしていたわけですが。あまりに話が尽きず、3人とも結局、馬券は買いそびれてしまったようでした(笑)。
その人たちに限らず、周囲を見ても、
京成杯の馬券を見送っている人が、少なからず見受けられた。おそらくこれは、
メモリアル60の一角に限った話でもなく、今年の
京成杯は
「確たる主役が不在で、予想が難しい」と感じていた人が、多かったんじゃないだろうか。
そしてさらに、レース前の
「馬券購入に気乗りがせず、なんとなくどんよりした雰囲気」は、レース中、ゴールした後も続いていた。
「そのまま!」とか、
「差せ!」といった声も特になし(いつもは平場だろうが騒がしい)。終始、なんとなく冷めた雰囲気。周囲で声が聞こえたのは、4コーナーの前で
サンライズキールが
競走中止した場面ぐらいだった。
勝手な想像だが、おそらく自分の周囲にいた人たちは、勝った
アーリーロブスト、あるいはクビ差で2着の
ナカヤマフェスタを、少なくとも現時点では、
3歳の牡馬クラシック路線において
「主役級ではないだろう」と考えているのだろう。レース前も、そしてレース後も。
確かに、過去の
京成杯の勝ち馬を見ても、距離が
2000mとなった99年以降、後にG1で連対したのは
オースミブライトと
サンツェッペリン(ともに
皐月賞2着)だけ。
「ここを勝てば将来の展望が大きく開けるレースか?」と問われれば、反論は難しい。
しかし、過去の歴史はともかく、
アーリーロブストの3連勝のレース・ラップを見ると、
「確かな力の裏付けがないとできない芸当」だという面が見えてくる。
京都芝1600mの
未勝利戦は、2F目に
10秒8の後、3F目からゴールまで
11秒6~12秒2。2歳馬としては苦しい、平均的に速い流れを先行して、直線の入り口で早くも先頭に立ち、3馬身差で後続をねじ伏せた。
阪神芝2000mの
エリカ賞は、6F目までは
スローの逃げだったが、ここでもまた、7~9F目に
11秒8~12秒0と速めのスピードを持続させて、再び3馬身差の楽勝。今回の
京成杯も、
スローの2番手追走だったが、最後の3Fに
11秒7→11秒6→12秒0と速いラップが続く中、押し切っている。
要するに、ここ3戦の数字を細かく見ていくと、
京成杯に限らず、
「少なくともG3ぐらいは勝っても何ら不思議ないスピード能力」を示していたと言えるだろう。
別の視点で言うなら、
先行脚質で、自分でレースを作れることも加味すると、
「現3歳の牡馬クラシック路線で、アーリーロブストに先着できれば、G1やG2で主役級」といった物差しになる面も、あるかもしれない。もちろんこれは、
アーリーロブストが主役になれないという意味ではなく、
他馬の実力を測る上でという意味だが。
アーリーロブストは次に、どのレースに出走してくるのだろうか。そしてその時には、どういった評価を受け、どういった人気となるのだろうか。
次になるか、またその後になるかはわからないが、いつか
メモリアル60のおじいちゃん3人組にも、あるいはもっともっと他の人にも、
「アーリーロブストが出てくるんじゃ、軸はコイツで仕方ないな」と言われる存在になってほしいものだ。