もっとも威力を発揮したのは、鞍上の腕だった
文/編集部
バラク・フセイン・オバマ・ジュニア氏が、1月20日、アメリカ合衆国の
第44代大統領に就任。ということで、当週の
アメリカJCCは、
『オバマ大統領関連馬券』が出るんじゃないかと踏んだのだが……まったく関係ありませんでした(笑)。
今年のAJCC出走馬の名前を見た時は、
『オバマ大統領関連』と言えそうな馬が見あたらないと感じていた。強いて挙げるとすれば、
「マンハッタンカフェ産駒のメイショウレガーロぐらいかなあ」という程度。あとは、
第44代大統領なので、
4枠とか
馬番4番とか。
木曜日の時点では少しテンションが下がり気味だったのだが、土曜日に枠順が発表されると、なんと
4枠4番が
メイショウレガーロじゃないですか!
「こりゃあ、たいへんだ」と思ってひとりではしゃいだら、何もたいへんなことはなかったという(笑)。
結局、
『オバマ関連』も、
中山芝2200m適性も、
G1実績も、み~んな関係なし。もっとも威力を発揮したのは、
AJCCを得意にしている鞍上=
横山典騎手の腕だった。
今回は、
中山芝2200mでの好走実績馬が多く揃っていた。
AJCCで[1.1.0.0]と実績を残していた
エアシェイディを筆頭に、
キングストレイルも
重賞で2戦して1着&2着。
トウショウシロッコも
重賞で2戦して2着&3着で、
グラスボンバーと
ドットコムも
中山芝2200mで連対歴があった。
結果的に、
エアシェイディと
トウショウシロッコが
2&3着に入ったのだから、
中山芝2200m適性がまったく関係なかった、とまでは言わない。ただ、それらの馬の2馬身半も前にいた
ネヴァブションは、
中山芝2200mが[0.0.0.4]だった。
福永騎手で
6着(
06年水仙賞)、
北村宏騎手で
4着(
06年山吹賞)&
6着(
07年オールカマー)、そして
石橋脩騎手が騎乗した時の
06年セントライト記念では、他馬の落馬のアオリを受けて
競走中止。
この実績のなさをひっくり返したのは横山典騎手の腕、と言っても過言ではないだろう。
横山典騎手は、今回で
AJCCは
5勝目となった。91年に
メジロモントレーで追い込み勝ちを決め、97年には
ローゼンカバリーで先行押し切り。05年には
クラフトワークで中団から差し切り、07年には
マツリダゴッホでマクリ差しを決めた。
振り返ってみると、
出走頭数や
ペース、
馬場状態によって、本当に変幻自在の動きを見せている。今回もその
“妙”は見られた。
内目の枠で好スタートを決めた
ネヴァブションは、
キングストレイルと
サンツェッペリンを前に行かせて、
少し離れた3番手の内ラチ沿いに控えた。
2走前の
ジャパンCでは
逃げの手に出ていたのだから、
3番手にいても不思議ないと思われるかもしれないが、これまでの勝ち鞍は、中団くらいに控えて差す形が多かった。
07年日経賞で
マツリダゴッホを破った時も、後方から直線で追い込んだものだった。
それでも、レース後のインタビューで話していたように、今回のメンバーを見渡すと、
切れ味勝負になると分が悪い印象を持っていたのだろう。早めに動く形を取って、そのまま後続の追い込みを封じ込んだ。
レースを見ていてさすがだと感じさせられたのは、
4コーナーで2番手に上がる時だった。2番手で追走していた
サンツェッペリンの手応えが悪くなり、それを交わす時に内ラチ沿いを抜けていった。
昨年のステイヤーズSを
エアジパングで優勝した時もそうだったが、逃げ馬がいいペースで行っている時、がむしゃらに前を追いかけ過ぎず、きっちりとコースロスなく周回しながら差を詰め、力を温存して最後の直線を迎えることが多く見られる。
横山典騎手が
中山芝2200m重賞、特に
AJCCで好成績なのも、そういった鞍上の腕が引き立ちやすいコースセッティングだからではないだろうか。
ネヴァブションはこれで
通算7勝目。キャリア27戦での戦績は、
14頭立て以下が[7.1.3.7]で、
15頭立て以上が[0.0.0.9]となった。言わずもがな、比較的落ち着いた頭数で好成績を残している。
15頭立て以上では、
横山典騎手が騎乗した
ジャパンC(
7着)と
中山金杯(
5着)でも、馬券圏内には入れていない。今後は、多頭数競馬でどんな走りを見せられるかがポイントになってきそうだ。
今回の
AJCCでは、
ネヴァブションや
エアシェイディといった馬たちが上位に入り、掲示板内はすべて6歳以上の馬たちが占めた。
1&3番人気には
5歳馬(
ドリームジャーニー&
アルナスライン)が推され、若い力に期待した向きも多かったようだが、結果は伴わず。
ドリームジャーニーは流れが向かなかったこともあるのだろうが、中山競馬の開催最終週での近2走(
有馬記念&
AJCC)は、上がり3Fが
35秒8&
35秒9。安定して34秒の上がりを使う馬にしては、いつもより1秒以上時計を要している。
急坂の中山での荒れ馬場では、身上の切れ味が殺がれてしまうのかもしれない。
アルナスラインは馬格もあって
荒れ馬場はこなせそうに感じられたが、伸び切れなかった。
有馬記念が
14kg増(554kg)で、今回は
6kg減と絞れたものの
548kg。もうひと絞りあった方がいいのかもしれない。
いずれにしても、
現5歳世代(04年産)の牡馬は、またしても
中山の芝重賞を勝てなかった。
この世代の
牝馬は、
スプリンターズSを
アストンマーチャンと
スリープレスナイトが勝ち、
昨年の有馬記念を
ダイワスカーレットが制しているが、
牡&セン馬は、古馬混合の中山芝重賞が[0.0.3.30]と連対圏に入れていない。
今年の
第2回中山開催が始まるのは、およそ1ヶ月後(2月28日~)。
5歳世代の牡馬が
中山芝重賞を勝つのは、果たしていつやってくるのだろうか。