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また1頭、ダイナアクトレスの牝系に父ロベルト系の馬が、G1戦線に名乗りを上げた
文/編集部

アブソリュートが先頭でゴールを駆け抜けた瞬間、頭をよぎったのは、「そうか、このレース、東京新聞杯だった!」だった。

「何をいまさら」、とお思いでしょうが、まあ、お聞きください。これには事情があるのです。

実は、以前、アブソリュートの馬主である薗部博之さんに話を伺った時、「いろんな新聞社杯を勝てるように頑張りますよ」と話されていたのだ。

どうしてそんな話になったかと言うと、それは、薗部さんの持ち馬であるバランスオブゲームの話をしていた時だった。同馬は新潟2歳Sをはじめ7つの重賞を制したが、その中に、報知杯弥生賞毎日王冠産経賞オールカマーと、新聞社杯が3つもあり、それで、前述のような話が出てきたのだ。バランスオブゲームが現役競走馬の頃なので、今から3~4年前の話になる。

薗部さんの持ち馬が重賞に挑戦するのは、バランスオブゲームが優勝した06年の産経賞オールカマー以来、2年4ヶ月ぶりのことだった。そのレースがまたも新聞社杯で、しかも、そこを差し切って優勝するのだから、『言霊』っていうのは本当に存在するのでしょう。そうとしか思えません。

惜しむらくは、薗部さんから「新聞社杯うんぬん」の話を聞いた私が、ゴールの瞬間までそのことをすっかり忘れてしまっていたこと(笑)。薗部さん、せっかくのヒントをいただきながら活かせず、すみませんでした。

アブソリュート5番人気での差し切り勝ちだったが、戦前、この単勝人気を見た時はちょっと人気になりすぎなのではないかと思った。芝1600mで負け知らずとはいえ、他に重賞勝ち馬や重賞実績馬がたくさんいたこと、そして、道悪適性には未知な部分があると感じていたからだ。

東京&新潟4勝を挙げていて、前走の中山から東京コースに替わることはプラスだったのだろうが、過去5勝はすべて良馬場で、特に東京&新潟では切れる脚を使って差し切っている。不良馬場になってしまっては、持ち味が殺されてしまうのではないかと感じていたのだ。

道悪適性が未知数だったアブソリュートに対して、上位人気馬は、が追い風になるのではないかと思われた。

ローレルゲレイロは、あのドロドロのNHKマイルC2着になった実績があったし、タマモサポートも、ラジオNIKKEI賞を制した時が重馬場サイレントプライド稍重以上の道悪芝が[3.0.1.0]だった。

しかし、結果的には上位人気に推された馬たちが、道悪巧者の印象も携えて先行し、それほどペースが緩まなかったことが、波乱の結末につながったように見えた。今回のような不良馬場で、上位4着までが4コーナーで10番手以下に控えていた馬たちに占められようとは、なかなか予想できないだろう。

ただ、それでも、アブソリュート田中勝騎手は、このペースにもまったく惑わされていないようだった。レース後、「リズムを守れば、最後に切れる脚を使ってくれるから」と話していたように、とにかくアブソリュートとの『人馬一体』を心がけていたのだろう。3歳1月のデビューから12戦。一度も手綱を離さなかった思い入れの強さに、最後は競馬の神様も微笑んだようだった。

血統的な見地に立てば、また1頭、ダイナアクトレスの牝系に父ロベルト系という馬が、G1戦線に名乗りを上げたと言える。

リアルシャダイ×ダイナアクトレスというステージチャンプに始まり、近年の障害界では、グラスワンダー×トニービン×ダイナアクトレスマルカラスカルが活躍しているし、昨秋には、グラスワンダー×サンデーサイレンス×ダイナアクトレススクリーンヒーロージャパンCを優勝した。

アブソリュートは、タニノギムレット×サンデーサイレンス×ダイナアクトレス。血統的にはスクリーンヒーローに近く、となれば、自ずとG1での期待も高くなるだろう。

マイル戦はこれで4戦4勝となったアブソリュート。狙うはもちろん安田記念だろう。

東京芝1600mのG1戦で、父ロベルト系は突き抜けられないケースが多かったが、昨年の安田記念で、ウオッカがその呪縛を解く快勝を見せた。

そのウオッカは、今年も安田記念に出走する意向を見せている。果たして、タニノギムレット産駒の激闘になるか? 安田記念はもちろん新聞社杯ではないですが(笑)、アブソリュートがどんな走りを見せるか、今から楽しみだ。

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