チェレブリタが父のような直線大外一気で好戦できれば……
文/編集部
京都牝馬Sをイメージした時に、パッと思い浮かぶのは
サンデーサイレンスというキーワードだった。それもそのはずで、
サンデーサイレンス産駒は京都牝馬Sで[7.3.3.25]と好成績で、過去10年を振り返ると、毎年1頭は必ず出走してきて、そのうち7勝、01年以外の9年では連対も果たしている。
ところが今年は、
サンデーサイレンス産駒の出走は1頭もなし。逆に、
父サンデー系は
8頭も出走し、1~3番人気も
ザレマ(
父ダンスインザダーク)、
ニシノマナムスメ(
父アグネスタキオン)、
スペルバインド(
父ゴールドアリュール)が占めた。これはさすがに、
新たな歴史の1ページが開かれるかと思った。
京都牝馬Sで
[0.2.1.20]だった
父サンデー系がいよいよ初勝利を挙げる。
サンデーサイレンス産駒もいないし、
8頭もいれば、
父サンデー系が勝つ確率は相当高いんじゃないか。これもまた時代の流れのひとつかと、レース前から父サンデー系が勝つと思い込んでしみじみしてしまった。
しかし、
ダンスインザダーク産駒の
レインダンス、
ザレマが
2、3着に入ったものの、
父サンデー系の新たな歴史の1ページは
チェレブリタによって閉じられることとなった。
チェレブリタは3頭しかいなかった
父ノーザンダンサー系の
ブラックホーク産駒である。
道中は
後方2番手につけていた
チェレブリタ。前走の
愛知杯のように直線勝負に徹し、その直線では外に回さず、内に進路を取って一気に突き抜けた。2着
レインダンスとは
1.1/4馬身差だったが、4コーナーでの2頭の位置取りはほぼ同じだったから、
コース取りの差がそのまま結果として表れた感じだろう。
チェレブリタは前走の
愛知杯から斤量が3kg増えて
53kgを背負っていた。それで今回突き抜けたということは、
力をつけていること、
前走の2着がフロックではないことを実証してみせたことになる。だが、その力を存分に引き出したのは言うまでもなく、
武豊騎手の手腕に間違いない。
武豊騎手は
スペルバインドの前走(
新春S、
京都芝外1600m、
1着)でも同じような競馬をしていた。
道中は後方でジッと脚を溜め、直線でインを突いて爆発させるという。その時のレースぶりにも感服させられたが、今回も思わず
「上手いなあ」と声が出てしまった。どちらもテン乗りというのがまたにくい。
そんな
天才・武豊騎手も、京都で行われた
京都牝馬Sに関しては
[0.0.2.10]という成績だった。勝利はおろか2着もなし。
京都牝馬Sをイメージした時に、
武豊騎手が浮かばないはずだ。しかも、騎乗していた12頭は4番人気以内だったから(
1番人気では[0.0.2.5])、
父サンデー系だけでなく、
武豊騎手にとってもまた、
京都牝馬Sは
鬼門だった。
ちなみに、出馬表のコメントでも書いた通り、
ダンスインザダーク牝馬は芝1600重賞で[0.4.4.35]だったが、
レインダンス、
ザレマが
2、3着に入り、
[0.5.5.35]となった。
ダンスインザダーク牝馬の芝1600重賞における新たな1ページも、来週以降に持ち越しということに。
というわけで、
京都牝馬Sの
裏テーマは、
「いったい誰が鬼門を覆すのか」だったのかもしれない。じゃあ、
表テーマは何だったのと聞かれても、
「う~ん」と首を傾げる感じで回答に困りますけど(笑)。
今年の
京都牝馬Sは、先々に向けて焦点を見出しづらかった。その印象は否定できないが、勝利を収めたのが
上昇中の4歳馬の
チェレブリタだったのは、伸びシロが期待できる存在だけに良かったかもしれない。
父である
ブラックホークは直線大外一気で
安田記念(01年)を制した。近3走ではいずれも最速上がりをマークしている
チェレブリタが末脚にさらに磨きをかけ、重賞でも大外一気で好戦できる時が訪れれば……
ヴィクトリアマイルに向けて展望が開けそうだ。