アサカディフィートが昨年の走破時計を1秒6も縮めながら最下位に敗れたレース
文/編集部
アサカディフィートが負けた。一昨年に
9歳でこのレースを制し、
10歳で連覇を達成。
11歳にして
同一平地重賞3連覇に挑んだ
アサカディフィートが、今年は
最下位(16着)に敗れた。
今回の着順だけを見れば、
11歳でさすがに衰えが隠せないのだろう、と多くの人が思うはず。しかし、本当に衰えなのだろうか。
アサカディフィートは今回の小倉大賞典が
5度目の出走だったが、それぞれの走破時計と着順は次のようになっている。
04年(
6歳)
1分50秒1(④着)
06年(
8歳)
1分47秒8(④着)
07年(
9歳)
1分46秒8(①着)
08年(
10歳)
1分47秒7(①着)
09年(
11歳)
1分46秒1(⑯着)
アサカディフィート自身は、
連覇を成し遂げた昨年&一昨年よりも速い時計で走破しているのである。加えて言えば、
芝1800m戦は今回で
18回目で、
1分46秒1という時計は
2位タイの速さ。
時計という観点で見れば、
11歳でも全然衰えてないじゃん、とも言える。
アサカディフィートが衰えたか否かということはひとまず置いておくとして、今年の
小倉大賞典を一言で表すなら、
「昨年①着だったアサカディフィートが、走破時計を1秒6も縮めながら⑯着に敗れたレース」となるだろう。
小倉芝1800mのレコードタイムは
1分44秒1で、
04年北九州記念で
ダイタクバートラムが記録している。他に1分44秒台で走破して優勝したのは
メイショウカイドウ(
05年北九州記念)がいるだけで、今回が3度目。
洋芝が含まれて時計が掛かりやすいと言われる冬開催では、ダントツ1位の走破時計となった。
これだけ時計が速くなった要因は、
開幕週で絶好の馬場コンディションだったことに加えて、
大外枠からハナを奪ったフサイチアウステルがハイペースで飛ばしたことが挙げられる。
これだけ淀みなく流れれば普通は差し馬が台頭するものだが、勝利騎手インタビューで
横山典騎手が語っていたように、馬場状態が良いだけに、ある程度の位置にいなければ上位争いに加われなかった。
そういう意味で今回は、
ハイペースに対応する力量と、
コースロスなく走ることが求められ、そのことが、
1~4枠に入って重賞勝ちのある馬が上位3着までを占める結果につながったように思えた。
1&2着となった
サンライズマックスと
ヤマニンキングリーは、トップハンデではないものの
57kgという楽ではない斤量を背負っていて、改めてこのメンバーでは力が上であることを証明した。
両馬とも道中では内ラチ沿いを走り、より内の枠だった
サンライズマックスが前、
ヤマニンキングリーが後ろという隊列。それが、3~4コーナーにかけて
ヤマニンキングリーが先に仕掛けて前に出て、ワンテンポ仕掛けを遅らせた
サンライズマックスが直線で差し切る形になった。
横山典騎手と
武豊騎手によるこの攻防は、どちらもさすがと思わせるものだった。
仕掛けをワンテンポ遅らせた方が差し切ったことで、賞賛は
サンライズマックスの
横山典騎手の方に多く集まるのだろうが、
サンライズマックスは
「道中で力んで走っていた」(
横山典騎手)とのことで、おそらくそのことは
武豊騎手も察知していただろう。それを見越し、さらには自分の馬の手応えと斤量も(もしかしたら人気も)加味して先に動いたのだろうから、端から見ている分には、完璧なレース運びに見えた。
もちろん想像の域を出ないことだが、両馬の鞍上がたとえ入れ替わっていたとしても、このような馬場コンディション、このような展開なら、同じような競馬をしていたのではないだろうか。
優勝した
サンライズマックスは、
重賞2勝を挙げていた馬にしては低評価とも言える
7番人気だった。これは
休み明けが嫌われたのだろう。過去の小倉大賞典において、休み明けの馬は成績が悪かった。そんなことも影響したのかもしれない。
サンライズマックスの過去の鉄砲実績は、
①着、
⑩着、
⑭着で、重賞での2戦は大敗を喫していた。しかし、その2戦は
大阪杯(
阪神芝2000m)と
毎日王冠(
東京芝1800m)で、
平坦コースなら休み明けでも問題なかったということか。
いや、もしかしたら、今回は追い切り後の木曜日に現地(小倉)入りし、
『ミニ滞在』とも呼べるような臨戦過程を採ったことが奏功したのかもしれない。このあたりは
陣営の勝利とも言えそうだ。
今回のレースを終えて、
G3(Jpn3)での戦績は、
ヤマニンキングリーが
⑨③④①②②着で、
サンライズマックスが
①⑧①①着となった。
明らかにG3では力量上位という感じだが、それぞれ、
G2や
G1ではまだ掲示板内(⑤着以内)に入ったことがない。
伸びしろを感じさせる2頭が、今回、速い時計の決着にも対応できる力を証明した。果たしてこれが、
G2、そして
G1とステップアップしていくきっかけとなるだろうか。2頭の次走以降が非常に楽しみだ。