ブレイクランアウトには、この先も、軽く飛ぶレースを期待できそう
文/編集部
1986年のスラムダンク・コンテストで優勝した
スパッド・ウェッブをご存知だろうか。身長が2メートルを超える選手がゴロゴロいるNBAにおいて、
スパッド・ウェッブは
168センチという超小柄な選手だった。試合では大人の中に小さい子供が混じってプレーしているかのよう。
それが、とんでもないジャンプ力でガツンとダンクをかます。高校時代、バスケ部だった自分(ちなみに、身長は180センチ)がどんなに頑張っても、リングを掴むまでが精一杯だった。その比較から考えても(NBA選手といち高校生では比較になるレベルではありませんが)、
アンビリーバブルだった。
驚愕のジャンプ力を生み出すのは黒人選手特有の
筋力のバネ。そういってしまえばそれまでだが、
筋力のバネというのは天性の才能、凡人の自分がとても真似をできる代物ではないと、
スパッド・ウェッブのダンクを見ていてそう思った。若き日の甘酸っぱい思い出です(笑)。
スパッド・ウェッブのことを思い出したのは、
共同通信杯の
ブレイクランアウトを観たからだった。道中は後方のインでじっくりと脚を溜め、直線では内のスペースから並ぶ間もなく一気に突き抜けた。計時した上がりはメンバー中最速となる
33秒6。33秒台を計時したのは
新馬戦(
33秒4)、
東京スポーツ杯2歳S(
33秒4)に続いて3回目である。
あんな脚を使って、内をスムーズに抜け出してくれば、他の馬が敵わないわけだ。先行した
トーセンジョーダンが
上がり34秒4で
2着に粘り、内から
トップカミングが
33秒8の上がりで差を詰めて
3着に入ったが、外を回った差し馬が見せ場を作れなかったのは仕方がないだろう。
ブレイクランアウトの父が
スマートストライク、母父が
フレンチデピュティ(その父
デピュティミニスター)。2年連続でアメリカの年度代表馬に輝いた
カーリン(ダートG1・7勝)が
スマートストライク×デピュティミニスターだから、2頭の血統構成はよく似ている。
ブレイクランアウトは母系に
ボールドルーラーの5×5も入っており、血統的な字面からいえば、
カーリンのように
ダートでブイブイ言わせていてもおかしくない印象だ。それなのに、
ブレイクランアウトは
芝で一級品の斬れ味を発揮する。あの瞬発力を生み出している源はどこにあるのか、血統からは想像ができない。
また、
ブレイクランアウトの体は
440キロ前後で、牡馬にしては小柄な部類に入るもの。見た目にも逞しい体つきとは言えないし、体つきも筋骨隆々とした
カーリンの馬体とは似ても似つかない感じ。だが、パドックで見る限り、筋肉はすごく柔らかそう。それが、あの瞬発力を生む要因なのかもしれない。
スパッド・ウェッブは日本のCMにも起用され、
「小さければ高く飛べ」という名言を残した。それを
ブレイクランアウトに当てはめると、
「小さければ、ディープインパクトのように軽く飛べ」となるのかな(笑)。この先も、軽く飛ぶレースを期待できそうだ。
一方、2着に負けたとはいえ、
トーセンジョーダンも好位から自己最速となる、
上がり34秒4をマークしていたのだから、それは成長の証だろう。現時点では、瞬発力という点では
ブレイクランアウトにヒケを取っても、もっと厳しい流れになって、底力を問われる展開になれば、
トーセンジョーダンの粘り強さがモノを言うレースもあるはず。
トーセンジョーダンという馬名からは、元NBA選手の
マイケル・ジョーダンを連想させるが、
ジョーダンもスラムダンク・コンテストで優勝していた。しかも、
フリースローラインからダンクを決めるという、真似をする気も起きないくらいの超人技で。
ジャンプした時の滞空時間の長さから、
“エア・ジョーダン”とも言われていたが、
エアジョーダンは
92年の共同通信杯を勝っていましたね。ちなみに、
トーセンジョーダンと
エアジョーダンは何の関係もありません、ただ、自分が思い出しただけです(笑)。
だが、
トーセンジョーダンが、
マイケル・ジョーダンを連想させるような、
ブレイクランアウトにも負けないバネの利いた走りを見せた時は、きっと、G1でも勝ち負けできるレベルに到達しているでしょうね。
クラシックの登竜門と言われながら、
01年のダービーを制した
ジャングルポケットを最後に、クラシックホースが出ていない
共同通信杯だが、今年の
ブレイクランアウト、
トーセンジョーダンには、個人的には期待してみたいと思う。