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過去の大型の名ステイヤーと似た感じの上昇パターン
文/編集部

馬単の1番人気が18.6倍、3連単の1番人気が87.9倍リーチザクラウンで断然というムードだった西のきさらぎ賞とは対照的に、戦前から波乱ムードがプンプンと漂っていたダイヤモンドS。競馬場では、「何を買ったらいいのか、さっぱりわかんねぇよ」などと言いながら、実はとても楽しそうに予想しているおじさんたちの姿が、そこかしこで見受けられた。

しかし、終わってみればモンテクリスエスが、従来のレコードを0秒9更新する3分29秒4で快勝。この時計は、1000m通過タイムが60秒5という、この距離にしてはかなり速い流れ(芝3400mとなった以降で過去最速は07年の61秒3)になった影響も大きいのだろうが、それにしてもモンテクリスエスの強さは、これまでの同馬にはないものを感じさせた。

モンテクリスエスは、馬体重がプラス6kgで、これまでの最高体重となる536kg。素人目ながら、パドックでリズム良くのっしのっしと歩く姿は好気配を感じたが、「ステイヤーというのは比較的すらっとして、小柄なタイプが多い」という先入観のある自分には、正直言って「この大きな体で、3400mの長丁場は大丈夫なのかな?」と思ったのも事実だ。

馬券を外した自分にとって、あくまで結果論となってしまうが、「530kgを超す大型馬」ということを踏まえた上で、モンテクリスエスの成績を改めて見てみると、4走前に鳴滝特別(京都芝2200mの1000万下)で3着に来た時が、今回の勝利へとつながる分岐点だったような気がしてならない。

鳴滝特別は、着順としては3着止まりだったが、33秒6というメンバー中最速の上がり3Fを計時鳴滝特別の前走の神戸新聞杯までは、自身最速の上がり3Fが34秒5に過ぎなかったから、鳴滝特別の時点で何か大きな変化が起きていることは、十分に見て取れる。

モンテクリスエスと同様、500kgを超す馬体重で芝3000m以上の重賞を勝った馬には、重賞制覇の近走時点で同様のパターンが見られることが、実は少なくない。

例えば、04年の菊花賞526kgで制したデルタブルースは、菊花賞の3走前に500万下を勝った時の上がり3Fが34秒4。それ以前の最速の上がり3Fが35秒1だったから、それを0秒7短縮させ、その3走後にはG1を制する馬にまで成長していた。

それから、08年の阪神大賞典502kgで制したアドマイヤジュピタは、阪神大賞典の3走前に鳴滝特別(京都芝2200mの1000万下)を勝った時の上がり3Fが33秒6。それ以前の最速の上がり3Fが34秒0だったから、それを0秒4短縮させ、その次走にアルゼンチン共和国杯、3走後に阪神大賞典を勝ち、さらに4走後には、G1の天皇賞・春を制するまでの馬になっていた。

他にも、ダイタクバートラムなどが同様のパターンだが、とにかく「500kgを超すような大型のステイヤー」には、こういった上昇のサインを示しているタイプがけっこういる。道中はスロー→直線の末脚勝負というのが、現在の芝長距離戦で主流の流れというのも、それにはもちろん関係しているのだろう。

そして、もう少し踏み込んだ言い方をするなら、「こういう上昇サインを見せた馬は、長距離路線でその後、出世する」といったことも、言えるかもしれない。その意味で、モンテクリスエス天皇賞・春に向け、目の離せない存在になってきたと言えそうだ。

ちなみに、シンボリクリスエス産駒は、モンテクリスエスが2頭目の芝重賞勝ち馬。同産駒は、先週までに芝重賞[1.1.4.34]と、期待が大きいだけになおさら、なんとも歯がゆい感じの成績が続いてきた。

しかし、今回の勝利を目にすると、スタミナがある長距離タイプなどは特に、古馬になってから、あるタイミングでガラッと変化を見せる可能性を、十分に感じさせる。中でも、モンテクリスエスと同様の大型馬が見せてくれる「変身のサイン」には、今後はできるだけ、敏感に反応していきたいところだ。

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