いまこそ、メジロマックイーン産駒に目を向けたい
文/編集部
昨年暮れの阪神JFで2、3着だった
ダノンベルベール、
ミクロコスモスが
2番人気、
1番人気。単勝オッズは順に
3.6倍、
1.7倍と支持を集め、
3番人気だった
パールシャドウが
8.2倍というオッズだったから、
2強対決という様相を呈していた。
G1好走の実績、父サンデー系(サンデーサイレンス産駒を含む)が[7.5.4.48]という成績で、出走馬がいた12年すべてで馬券圏内、96年以外で連対という点を加味すると、
ミクロコスモス(
父ネオユニヴァース)、
ダノンベルベール(
父アグネスタキオン)が優勝争いを演じると見るのは自然だろう。
スローペースを見越したかのように、
ダノンベルベールは初めて先行策を取り、
ミクロコスモスも初戦のように前でレースを進める。実際、
ダノンベルベール、
ミクロコスモスは
ディアジーナ、
エイブルインレースと直線で叩き合い、優勝争いに加わっていた。
だが、勝ったのは
サンデーサイレンスの血を一滴も持たない、
メジロマックイーン産駒の
ディアジーナだった。
シャダイターキンの一族であり、近親には
天皇賞・秋(92年)を制した
レッツゴーターキンなどがいるが、母父が
ビショップボブ、母母父が
ハンターコムという血統構成は、お世辞でも
“今時”とは言えない。
それがどうだ。隆盛を極めるサンデー系のアグネスタキオン産駒
ダノンベルベール、フジキセキ産駒
エイブルインレース、ネオユニヴァース産駒
ミクロコスモスに混じり、父譲りの芦毛の馬体を躍動させながら、立派に奮闘している。直線ではフラついて審議対象になってしまったが、クビ差の接戦ながらも勝利を収めた。
思い起こせば、
メジロマックイーン産駒が重賞初制覇を飾ったのも
クイーンCだった(98年
エイダイクイン)。それは
父サンデー系(サンデーサイレンス産駒を含む)の出走がなかった数少ない年のひとつだったが、その時の2着は、
昨年の有馬記念で3着となったエアシェイディの母にあたる
エアデジャヴー。
今年のAJC杯で2着に好走し、健在ぶりをアピールしている息子
エアシェイディも
8歳となったから、そうして振り返ると、歳月の経過がとても重く感じる。初年度産駒の
エイダイクインが重賞初制覇を飾ってから、もう
11年も経ってしまっていたのかと。
11年も経てば、状況も変わる。
メジロマックイーン産駒の初年度産駒は、
エイダイクインを含めて
84頭が血統登録されていたが、
ディアジーナの世代、
2006年産の
メジロマックイーン産駒は、血統登録された馬がわずか
8頭しかいなかった。2007年は、血統登録された産駒が
2頭となっている。
メジロマックイーンは
G1・4勝を含め重賞9勝、当時、
獲得賞金が10億円を超えた第1号であり、競走成績は輝かしいものだった。だが、産駒の重賞勝利数は
ディアジーナの
クイーンCで
6勝目であり、自身のそれを下回っている。父としては、期待を大きく上回る活躍を見せたとは言いがたい。
メジロマックイーンは、2006年の4月3日に心不全のため、
19歳でこの世を去った。産駒の重賞6勝中4勝は、
2006年4月3日以降である。父の死を受けて、産駒が奮起した。それは人間側の勝手な想像に過ぎないが、
メジロマックイーンの血統背景を考えると、それもあながち夢物語とは言えない気もしてしまう。
受胎率が悪かった祖父
メジロアサマは、13年間種付けし、血統登録された馬はわずか
19頭だったが、その中から
メジロティターンを出し、
メジロティターンが
メジロマックイーンを出し、
父子三代の天皇賞制覇に繋がったわけである。
逆境に強い血筋。父がこの世を去ったおよそ2ヵ月後、
2006年6月2日に
ディアジーナは生まれた。父の姿はこの世になくとも、その血が
ディアジーナを押してくれる。同世代の牝馬には2歳女王
ブエナビスタをはじめ、強敵が待ち構えているが、G1タイトルを目指して前進してほしいと思う。
今春、再び
父子四代の天皇賞制覇に挑む
ホクトスルタン、
7歳を迎えた
ヤマニンメルベイユ、そして
ディアジーナ。G1奪取のチャンスは、正直、それほど多くないと思うが、逆境に強い血筋だからこそ、血統がロマンに介在することが少なくなった時代だからこそ、いま、
メジロマックイーン産駒に目を向けたい。