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今後もレース後はほぼ平身低頭が待っている!?
文/編集部

ブエナビスタ阪神JFを圧勝した時に、妻に「ブエナビスタというすごい馬が現れた。母はビワハイジだよ」と教えてあげた。昔、妻がブエナビスタの半姉であるファインセラをPOGで指名していたからだ。指名した理由を尋ねると、「角田騎手が好きで、その角田騎手がビワハイジに騎乗していたから」とのこと。「そんな理由で!?」と思ったが、その言葉は飲み込んだ。

ファインセラはPOG期間(2歳デビューからダービーまで)では未勝利だったが、引退するまでに中央で4勝を挙げる活躍を見せた。その後はご存知の通り、アドマイヤジャパン(2勝、重賞1勝)、アドマイヤオーラ(現役、4勝、重賞3勝)、そして阪神JFチューリップ賞と連勝したブエナビスタがデビューしている。

ファインセラの後に出てくる馬が走ること走ること。とりわけ、前述したPOG期間内に。いずれにしても、長男であるビワワールドも3勝していたのだから、つくづく、ビワハイジはすごい母ちゃんだなと感心させられる。

そのビワハイジ阪神JF(95年)を制し、チューリップ賞(96年)に直行していたが、エアグルーヴから5馬身差の2着に敗れていた。「ひょっとしたら、ブエナビスタも単勝1.1倍という断然人気に推されてはいるが、前哨戦で取りこぼす可能性もあるんじゃないか!?」と心の中で少し疑ってみた。

阪神10Rの武庫川S(同じ阪神芝外1600m)では、大外を回ったスピリタス(安藤勝己騎手騎乗)が、メンバー中最速の上がり(34秒3)を使いながら、追い込み届かず5着に負けていた。いかに能力が高いとはいえ、果たして、ブエナビスタは外から追い込んで届くのかどうか。

ところが、レースぶりは単勝1.1倍というオッズに相応しい内容だった。前半は最後方で追走し、3~4コーナーで外からジワリジワリとポジションを上げ、直線では逃げ込みを図るサクラミモザをきっちりと捕えて差し切り。

スローペースの中、外を回ったことで距離を大きくロスし、3~4コーナーで動いて脚を使っているのにも関わらず、メンバー中最速の上がり(34秒7)を使って1馬身1/4差突き抜けた。もう次元が違うとしか言いようがない。レース直後は、平身低頭して「疑ってスミマセンでした」と謝りたい心境だった(笑)。

この状況、ちょっと前にも経験したことがあるような気が……そう、ディープインパクトだ。いつも、「後ろから行って届くのか」と疑い続け、気づけばディープインパクト国内で13戦12勝2着1回。上がりは13戦すべてでメンバー中最速をマークし、13戦中12回はきっちりと届いていた。

ブエナビスタはデビューからチューリップ賞まで、すべてメンバー中最速の上がりを使って3、1、1、1着。ディープインパクトの時と同じく、疑ってみたところで、レース後はほぼ平身低頭が待っている。そんなレースが今後も続くのかと思うと、実は楽しくもあったりして。

ブエナビスタとは、スペイン語で「素晴らしい景色、絶景」という意味らしい。安藤勝己騎手はレース後のインタビューを、「本番に向けて、無事に行ってくれれば大丈夫だと思います」と締め括った。その言葉通り無事に行けば、ブエナビスタの未来は、さぞかし素晴らしい景色であろう。

ちなみに、妻はPOGでディープインパクトを指名していた。POGで無敗の三冠馬を指名するなんて、どんだけで引きが強いんだよと。で、のちのち、指名した理由を尋ねると、「ライターの村本さんに勧められたから」とのこと。「自分で選んだんじゃないんかい!?」と思ったが、その言葉は飲み込んだ。

ディープインパクトがデビュー2戦目の若駒Sで5馬身差の圧勝を飾った日、大はしゃぎする妻にちょっとイラッとし、ケンカしたこともあったが、引きの弱い男の単なるひがみが事の発端であることは言うまでもない。

武豊騎手弥生賞[6.5.0.2]という成績で、2頭とも、POG期間内に重賞を勝ってくれたので、何も文句はないのだが、連外となった2頭が自分のPOG馬(03年6着ザッツザプレンティ、04年7着グレイトジャーニー)だったので、ある意味、引きが強い男でもあるのだが(笑)。

妻とケンカをした時は概ね謝らない。平身低頭して謝ったことはもちろんない。頑固で素直ではない男だから。そんな男でも、ブエナビスタの強さには平身低頭しきり。でもおそらく、疑うことはやめないと思う。それもまた、頑固で素直ではない男の生きる道だから。

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