SS×ノーザンテーストらしい3回目の挑戦での有終の美
文/編集部
後方で脚を溜め、外からまとめて差し切った昨秋の
京成杯AHとは一転。
直線で最内を抜け出して勝つという、驚きの勝ち方を見せてくれた
キストゥヘヴン。
その鮮やかさに、
「これがラストランということらしいけど、もっとこの馬の走りを見てみたいな」という寂しい思いも湧いてきた一方で、血統好きの自分が感じたのは、昨年暮れの
有馬記念における
ダイワスカーレットの時と似たような、爽快さだったり、驚きだった。
キストゥヘヴン(
父アドマイヤベガ×母父ノーザンテースト)と
ダイワスカーレット(
父アグネスタキオン×母父ノーザンテースト)は、ともに
桜花賞馬であり、血統的に言えば
「父がサンデー系で、母父がノーザンテースト」という共通点もある。
実はこの2頭のように、
「父がサンデー系で、母父がノーザンテースト」という血統で、
2~3歳の時点で芝1600m以上の重賞を勝った馬は、
古馬になってからも芝重賞で息の長い活躍をするケースが多い。
3歳春に
皐月賞を制した
ダイワメジャー(
父サンデーサイレンス×母父ノーザンテースト)は、
4歳以降にG1を4勝の大活躍。3歳秋に
秋華賞を制した
エアメサイア(
父サンデーサイレンス×母父ノーザンテースト)は、
4歳春にヴィクトリアマイルで2着。
他にも、
アドマイヤマックス(
父サンデーサイレンス×母父ノーザンテースト)は2歳秋に重賞(
東京スポーツ杯2歳S)を勝った後、6歳の春に初めてG1(
高松宮記念)を制している。
09年3月15日までに、この配合で、
2~3歳の時点で芝1600m以上の重賞を勝った馬は
12頭いるが、その馬たちが4歳以降に芝重賞(JRAのみ)でどういった成績を残しているかを見ると、
[19.13.17.60]で勝率17.4%、連対率29.4%、複勝率45.0%。
これは一部の優秀な馬だけの成績でも決してなく、
4歳以降に芝重賞に出走した馬が
10頭いて、そのうち
7頭は勝利を収め、
9頭は連対を果たしている。それを踏まえて、先述の成績を改めて見ると、
複勝率45.0%というのはある意味で驚異的と言ってもいいような好成績だろう。
キストゥヘヴンが、
3歳の3~4月に重賞を連勝した後、5歳9月に復活の重賞3勝目を挙げ、さらに6歳3月に重賞4勝目を挙げたという過程は、いかにも
「父がサンデー系、母父がノーザンテーストという配合の馬らしい成績」とも言えるのだ。
キストゥヘヴンの
中山牝馬Sにおける勝利は、細かいことを言えば、
「父がサンデー系、母父がノーザンテーストという血統で、2~3歳の時点で芝1600m以上の重賞を勝った馬」において、初めて達成された記録も含まれている。
それは、このタイプの
「3歳以上&4歳以上の中山芝1800m重賞」における初勝利だったということ。これまでは
[0.2.3.3]と、単に未勝利だっただけでなく、
1~3番人気で[0.2.2.2]というように、上位人気での惜敗が繰り返されていた。
例えば、
ダイワメジャーは
06年の中山記念で
単勝2.1倍の1番人気に推されながら、
バランスオブゲームから5馬身差の2着。
ローゼンカバリーは、
97年の中山記念で2番人気3着、
98年の中山記念でも3番人気に推されながら0秒2差の3着。
キストゥヘヴンも前2年の
中山牝馬Sで、
07年・2番人気5着→
08年・3番人気3着と、上位人気に推されながら連対できない結果が続いていた。
今年の場合、
横山典騎手がインを捌いた絶妙な騎乗も光ったが、
前2年がこういった成績でありながら、3回目の挑戦で勝ち切るというのは、血統のなせるワザという面も大きかったように思われる。
こういう息の長い活躍をする
「父がサンデー系、母父がノーザンテーストという血統で、2~3歳の時点で芝1600m以上の重賞を勝利」という馬は、今後もどれぐらい現れてくれるのだろうか。
現3歳で、
「父がサンデー系、母父がノーザンテースト」という血統の馬のうち、これまでにOPクラスの芝で馬券圏内があるのは、
エルフィンSで
②&③着の
ワイドサファイア(
父アグネスタキオン×母父ノーザンテースト)&
チャームポット(
父フジキセキ×母父ノーザンテースト)の2頭だけ。
キストゥヘヴンの前途を祝福するとともに、今後もどんどん後継者が現れることを心待ちにしたいところだ。